漫才論| ²⁹「相方を笑わせたい」という気持ちは必要❓
漫才師は当然,「お客さんを笑わせたい」と思って漫才をやっていますが,「相方を笑わせたい」と思っている漫才師も結構います。行き過ぎると「二人だけでおもしろがっている漫才」になってしまいますが,基本的には「相方を笑わせたい」という気持ちは持ち続けたほうがいいと思います
アンタッチャブルは二人とも
ある番組でやっていた「プロポーズの仕方」というアンタッチャブルの漫才の中で,山崎さんがアドリブで変な顔をし,それを見た柴田さんが笑い転げるという場面がありました。山崎さんは変な顔を何度も繰り返し,しまいには横を向いて柴田さんにしか見えない状態で変な顔をしていました。「もうみんなに見えてねぇじゃねーかおまえよ~」と柴田さんにツッコミを入れられ,山崎さんはとてもうれしそうにしていました
お客さんに見えないようにギャグをするというボケともとれますが,山崎さんには「相方を笑わせたい」という気持ちがあるのだと思います。柴田さんが笑ってくれて,アドリブに全部反応してツッコミを入れてくれるのが,本当にうれしいんだと思います。柴田さんは柴田さんで,ことごとくツッコんで山崎さんを笑わせようとしているような印象を受けます
真剣に本気で
「漫才をしているときに漫才師は笑うべきではない」という考え方もあります。確かに,あまりにも笑いすぎたり,お客さんは笑っていないのに二人だけでおもしろがっているような状態はよくありません。また,わざと笑う「誘い笑い」はあざといかんじがします
しかし,真剣に本気で「相方を笑わせたい」と思って漫才をしているコンビが漫才中に思わず笑ってしまう姿は,通常プラスに働きます。二人が本当に漫才を楽しんでいるのが伝わるからです。ライブ感が生まれ,活き活きとした漫才になるからです
お客さんにとっても楽しみ
「相方を笑わせたい」と思っていないコンビには,これが欠けています。どこか無機質で機械的な漫才になってしまいます
そういう漫才ではなく,本当に楽しそうに,本当に心から楽しんで漫才をしている姿をみたいと思っているお客さんは多いと思います。「あっ!今アドリブ入れたな」というのも分かって楽しいですし。これこそ漫才の醍醐味です
M-1でも,こういう意味での「熱のある漫才」がみたいです
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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた