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漫才論| ¹⁵⁷話し方の技術 「スピードとテンポを意識して訓練すれば『早口』は改善できる」

これは,漫才でのしゃべりだけでなく,話し方全般の話です。特に,普段のしゃべりやプレゼンなどで話す際に「早口」になってしまう人に役立ちます

最近は,しゃべりのプロではない人がテレビのコメンテーターやYouTubeなどで話すのを耳にする機会が増えましたが,その多くが「早口」です。人前で早口でしゃべっている人の多くは,「自分が早口である」という意識がありません。私も元々は早口だったので分かりますが,自分にとってはそれがごく普通のスピードで,「速い」という感覚が一切ないという人が多いと思います

一方,しゃべりのプロであるアナウンサーはみな,早口ではありません。訓練を受けているので当然のことですが,アナウンサーと早口なコメンテーターが一緒に話しているのを聴くと,どちらが聴きやすいかは一目(聴)瞭然です。人前で話すのであれば,自分のためにも,みんなのためにも,「早口」は治したほうがいいです


「早口」であることを認識する

自分が「早口だ」ということや,「速くて聴きづらい」(場合によっては「不快だ」)と思われていることに気づいていなければ,当然早口でしゃべり続けることになります。誰も「早口だ」と教えてくれない(もしくは「言いづらい」)場合も結構あるので,録音して自分のしゃべりを聴くべきです。人前で話す人は絶対に,これをやったほうがいいです

「自分は早口だ」と思っていない人の場合,録音して聴いてみると大抵は,自分がしゃべっているときの"感覚"よりも相当速くしゃべっていることに気づきます。中にはそれを聴いても,「これくらいの速さが弁が立つかんじがしていい」と思う方もいるかもしれませんが,アナウンサーより速くしゃべっている場合は基本,「聴きやすいしゃべり方はしていない」と思ったほうがいいと思います

「早口のタイプ」を認識する

「早口」にはタイプがあります。❶話すスピードが速い場合 ❷テンポが速い場合 ❸スピードもテンポも速い場合です。「スピードが速い」というのはそのままですが,話す速さが速いということです。「テンポが速い」というのは,一つの文を話し終えて次の文を話しはじめる速さが速いということです

❶「スピードが速い」場合はゆっくり話すことを意識し ❷「テンポが速い」場合は,一つの文を話し終えて次の文を話しはじめる前に休止を入れることを意識し ❸「スピードもテンポも速い」場合は,その両方を意識する必要があります。「早口のタイプ」によって,何を意識すべきかが変わってきます

「早口」を改善法する方法

「何を意識すべきか」が分かったら,それを意識しながらしゃべって録音し,聴きます。最初は,慣れたスピードよりもゆっくり話すことにかなりの違和感を感じたり,ゆっくりしゃべっているつもりなのに聴いてみると「そこまでゆっくりになっていない」という状態が続いたりしますが,その都度,「調整しては録音し,聴いては調整し」を繰り返します。すると徐々にですが,しゃべっているときの自分の感覚と,実際のしゃべりのスピードやテンポが一致してきます。つまりこれは,しゃべりながら,「実際のしゃべりのスピードやテンポが感覚的に認識できるようになる」ということです

これができれば,大多数の人にとって聴きやすいスピードやテンポで話してみり,話す内容に応じて必要な箇所でテンポだけ上げてみたり,相手に合わせて速さを変えてみり,必要が生じたら気持ち速めに話してみたりと,自分の話し方を自由自在にコントロールできるようになります

人前で話す人はまず,自分が知らず知らずのうちに「早口」になっていないか,それによって誰かに嫌な思いをさせていないか,確認してみましょう

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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

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あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】