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漫才論| ⁹⁸「夢路いとし・喜味こいし」って何がすごいの❓

私が一番好きな漫才師は,いまだに「夢路いとし・喜味こいし」のお二人です。昭和を代表する兄弟漫才師で,お兄さんのいとしさんが2003年に78歳で亡くなり,コンビは解散。こいしさんは2011年に83歳で亡くなっています

漫才にあまり興味のない方の中には,「夢路いとし・喜味こいし」という名前を聞いたことがないという人も増えてきているようですが,その一方で,私と同じように,「一番好きな漫才師はいまだに『夢路いとし・喜味こいし』」という方もまだまだたくさんいます。亡くなってからもここまで愛される漫才師はそうそういないのではないかと思います。「夢路いとし・喜味こいし」という漫才師は,何がすごいのでしょうか?(この記事では,「いとこいさん」と呼ばせていただきます)

「普通の会話」のように聴こえる

いとこいさんの最大のすごさは,漫才が「普通の会話」のように聴こえるところではないかと思います。実際には全然「普通の会話」ではなく,かなり速いテンポで掛け合いをしています。片方が話し終わるか終わらないかくらいでもう片方が話し始めたり相槌を入れたりするというやり取りを,(をとるところ以外)絶え間なく続けます

このようなものすごいテンポの掛け合いをしているにもかかわらず,「機械的な漫才」というかんじはまったくありません。台本があるはずなのに,何度も同じネタをやっているはずなのに,表情豊かで本当に楽しそうに漫才をします。漫才の最中に結構笑ったりもして,どれが決まったセリフで,どれがアドリブなのかがなかなか読み取れません。これは,「ものすごく漫才がうまい」ということの証だと思います

それでいて,話し方は速くないので,「速い」という印象がいっさいありません。それどころか,「ゆっくり」という印象さえ与えます。普段の会話と比べてテンポはものすごく速いのに「ゆっくり」という印象与える,これこそ「話芸」です

品のよさ

昭和の漫才師には,「話芸」の点でいとこいさんに匹敵するコンビならたくさんいます。それでも特にいとこいさんが愛されている理由は,「品のよさ」ではないかと思います

お二人とも「本当に人柄がよかった」という話をよく聞きます。「品」というのは人柄から滲み出てくるものではないかと思います。加えて,言葉遣いもきれいですし,ネタも上品です。そしてもちろんおもしろい。勢いとか,下品なことを言って笑わせるのではなく,「品があっておもしろい」ということは,「本当におもしろい」ということだと思います

本ネタで勝負するかっこよさ

いとこいさんは,マイクの前に立つと,余計なことはほとんど言わず即ネタに入ります。コンビ名も言いません。「紹介されて出てきているのだからコンビ名は言う必要ない。時間がもったいない」という考え方のようです。この本ネタで勝負する姿勢が本当にかっこいいです

そして,これは昭和の漫才の特徴でもあるのですが,オチがものすごく綺麗です。本ネタで勝負し,最後ストンっと落ちて終わります。落語のようでもあり,これはもう「作品」です

いとこいさんの漫才をまだ一度もみたことがない方はぜひ一度ご覧ください。たぶん,何回もみたくなると思います!

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フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた

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