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大学の「社会貢献活動支援室」とは?

※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2023年8月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。

辻堂にある湘南工科大学には、「社会貢献活動支援室」(以下、同室)があります。

今でこそ多くの学校が社会貢献やボランティアの部署を持つようになりましたが、同室は昨年で20周年と、長い歴史を持っています。室内には関連する展示物が並べられ、多様な活動に参加されていることが見てとれます。

同室内の展示物の一部

今号では、近隣の教育機関における市民活動に関わる取組をお伝えすべく、担当している電気電子工学科教授の水谷光氏と、同室特任講師の森田恵氏、同室の実習プログラム(以下、プログラム)に参加する学生たちにお話をうかがいました。

湘南工科大学は「社会に貢献する技術者の育成」をミッションに掲げており、実現につながる仕組みとして同室が設置されました。

水谷氏によると、「設置当初、大学としては専門科目のフィールドワーク分野という位置づけで、工学と関連する実習先に加えて、福祉や環境保全などを工学に結び付ける方向性でスタートしました」とのことです。

現在はプログラムにおける学生の成長を重要視しており、社会人基礎科目というカリキュラムの一部となっています。

実習先における50時間以上の活動のほか、事前・中間期研修会、報告会で学生同士が目標や成果を共有していきます。年間50名程度の学生がプログラムを履修しています。

大学の「社会貢献活動支援室」とは?

取材当日は大学祭である松稜祭のミーティングを行っており、同室内には企画を担当する学生の姿もありました。

プログラム参加の理由は様々で、張り紙やガイダンスがきっかけであったり、中でも人間環境学科の酒井さんは、「高校時代に障がい者の式典に参加した際、知り合った人が社会貢献活動支援室を紹介してくれました」とのことで、大学を選ぶ理由にも関わっていました。

実習先は自然や生き物に興味があれば里山保全、機械に興味があればロボットの体験スペースなど、学生の希望に応じて選ぶことができます。学外のプログラムということで、人とのつながりや見識が広がるきっかけにもなっています。

総合デザイン学科の宮間さんは、実習先であった茅ヶ崎里山公園倶楽部に会員として入会しました。卒業研究のテーマでも実習先と深くかかわり、地域の発展や活性化に関する地域デザイン研究の中で、同団体の方の協力を得ながら進めています。

また、現在同じ茅ヶ崎里山公園倶楽部で実習をしている電気電子工学科の長谷川さんも、「里山の知恵や生き物に実際の土地で触れることで、身に付くことも多いです」と語り、活動の現場から多くのことを吸収している様子でした。

実習テーマ「辻堂防災活動サポート」での様子

学外で地域の人々と接しながら進めるプログラムの意義について、森田氏曰く、「学内であれば授業の出来で評価されますが、実習先ではまた違った視点で人となりも含め評価され、本人たちも自分に自信を持つきっかけにできているようです」とのことです。

電気電子工学科の有賀さんも、「卒業していきなり社会人になる前に社会に触れられる、貴重な機会だと感じています」と語り、実習で念頭に置かれている学生の成長について、教員も学生自身も意識しながら進めていることが感じ取れました。

教員のお二方に実習を進める上での喜びを伺うと、水谷氏からは「学生が楽しそうであればこちらも楽しくなります。そういう意味では普通の授業とは違いますね」とのこと。

森田氏からはそれに加え、「彼らの活動により地域の人が喜び、新たな気付きを得てくださることで、大学も市民社会の一部となっていることを実感できます」とお話しいただきました。

松稜祭は、今年は10月28日・29日の実施です。今年は久々に入場制限もないとのことで、学生たちはより盛り上げるべく、熱意を持って企画に取り組んでいました。

「地域にこんな活動がある、大学でこういう活動をしている、学生も市民活動に参加していることを知ってほしい。実習先で得た知識や経験を来場者が体験できるような内容にするので、ぜひ多くの人に来てもらいたい」とのことです。


~団体紹介~

湘南工科大学 社会貢献活動支援室

【設   立】 2002年
【連絡先】〒251-8511 神奈川県藤沢市辻堂西海岸1-1-25 湘南工科大学4号館1階(4110室)
【メール】shakou@center.shonan-it.ac.jp

「社会に貢献する技術者の育成」という湘南工科大学のミッションの実現に向けて、「社会貢献活動」は2002年度より始まりました。これまでに約170の実習テーマで1700名以上の学生が参加しています。学生は活動を通じて社会人基礎力や自身の主体性、市民性の育みを行い、50時間以上の実習を行う中で「社会の中で貢献できる力」を醸成します。地域においても、学生参加による市民活動の維持・促進の場となっています。
※現在、新規実習先は募集していません


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