一緒に知恵を絞る仲間づくり
※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2024年8月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。
<人と人のつながりを大切に考え行動する>
今号では、国際協力の活動を行っている「特定非営利活動法人APLA」の活動をご紹介します。今回の取材は理事の廣瀬康代さんと事務局長の野川未央さんに伺いました。
Alternative( もう一つの)People’ s(人々と)Linkage(つながり・連携)in Asia(アジア)の頭文字をとってAPLA と名付けられたそうです。
1980年代、砂糖の国際価格の暴落により、フィリピン・ネグロス島で深刻な餓死が発生。その当時、フィリピンにおける人権問題に取り組んでいた市民が「緊急支援」を行うため「日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)」が発足。このJCNCがAPLAの前身団体です。
緊急救援が落ち着いた頃、サトウキビ農園労働者のリーダーから「自分たちには、魚ではなく、魚を捕る網が必要だ」と言われたそうです。
飢餓に苦しむことになったのは、土地も持てず、農地を耕す鍬や鋤、そして
技術を持たない労働者であるがゆえ、そこから農民としての自立を支援する活動が始まっていきます。
また、島で伝統的に作られていたマスコバド糖(黒砂糖)と、山に自生していたバランゴンという種類のバナナを日本に輸入するために事業会社オルタ・トレード・ジャパン(ATJ)が設立され、食べることでネグロスの人々の暮らしを支える民衆交易をスタートしました。
JCNCが22年の活動を終え、2008年にAPLAとして再スタートを切った後も、モノを通じて作る人と食べる人をつなぎ、支えあう関係を作り、農と環境保全を軸にした地域づくりに取り組んでいます。
APLAは、JCNCのネグロスでの経験をいかし、日本を含む広くアジアで農業を軸にした地域自立をめざす人々どうしが出会い、経験を分かち合い、協働
する場をつくり出すことを目的にしています。
<国内での活動>
APLAの国内活動はグローバルな社会構造の課題に向き合い、学校や生協などに出向き、活動地であるフィリピンや東ティモールなどの現状を知ってもらい、目指す方向について語り合うことを進めています。
また、国内協力団体が開催するイベントに参加してフィリピンのバランゴンバナナやマスコバド糖、パレスチナのオリーブオイルを販売し、商品化に向けた背景や産地の様子を広めているそうです。
<バランゴンバナナの話>
3年前から規格外未利用バナナにスポットを当て「ぽこぽこバナナプロジェクト」をスタートさせました。
日本の法律上、輸入時にはバナナは未熟な状態の緑色でなくてはならないそうで、日本に着いてから追熟がなされます。それが終わりいよいよ出荷される際、今一度チェックが入ります。
輸出時に傷がなくても何らかの原因で傷みが出たりして出荷できないものが10%近くになることがあります。しかし皮をむくと実には影響がなく、おいしく食べられるものがたくさんあるのが事実です。
フードロスを少なくする視点から「規格外未利用バナナ」としての活用を呼びかけ、全国各地の多くの方々から活用方法が寄せられています。
中には大学のゼミでバナナビールを作ったり、皮でアクセサリーを作る子どもたちの取り組み、皮の繊維で紙漉など、本当に多岐に渡る提案がされ、実際に店頭やバザーで購入することができるものもあります。一人一人の知恵を集める事で「すご~いこと!」が起きています。
2024年に入り、「ぽこぽこバナナプロジェクト」のメンバーでフィリピン・ネグロス島に行き、バナナ生産者の方々との交流や輸出会社の皆さんと学習・交流を行ってきたと伺いました。
現地での体験をもとに帰国後、子どもたちにも知ってもらえる様に「バランゴンバナナすごろく」を作成し、ワークショップを行ったそうです。
国際協力は、国内での理解を広げることが大事な基本になっていく。相次ぐ大雨や地震などの自然災害が続くと、まずは国内からという気持ちが大きくなってきてしまいそうで、そんな時にも声を上げて共感の輪を広げる事です。
* * *
どんな時に、どう動くのかで団体の価値が見えてくるとのことでした。お話を伺って、私たちは同じアジアに、同じ地球上に暮らす仲間だということを今一度考えませんか。と問い直された思いがしました。
団体紹介
(N)APLA
【設立】2008年
【代表】市橋 秀夫・疋田 美津子
【 HP 】 https://www.apla.jp/
APLA(あぷら)は、日本を含むアジア各地で「農を軸にした地域自立」をめざす人びとどうしが出会い、経験を分かち合い、協働する場をつくり出すことを目的に、2008年に特定非営利活動法人として発足しました。アジアの地域自立を求める人びとと協働することは、世界中のありとあらゆる食料を流通している日本の私たちの暮らしのあり方を同時に問われることにつながります。APLAは従来のような日本がアジアを「支援する」という一方的な関係を超えて、ともにオルタナティブを考え、行動するネットワークをめざしています。
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