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湘南の貴婦人
※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2023年7月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。
1964年と2021年、2回の東京オリンピックでヨット・セーリング競技の舞台となった江の島。1964年大会の際、国内外の来賓用に神奈川県が建造した木造の大型帆走クルーザーが「やまゆり」です。
全長13.3m。1962年製造、今年で61歳。静かでやわらかい乗り心地のやまゆり。美しい姿と自然と一体になるような乗り心地からか、「湘南の貴婦人」とも呼ばれています。
この貴重なやまゆりを、動く状態のまま維持管理・保存しているのが「NPO法人帆船やまゆり保存会」です。保存活動やヨット・セーリングの魅力について、保存会の中村理事長と河村副理事長にお話を伺いました。
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維持管理の難しさ
現在、国内で現役の木造大型クルーザーは大変少なく、やまゆりは日本ヨット史における文化財といえます。そんな貴重な帆船やまゆりですが、木造(主にヒノキ)で高齢のため、維持管理費用も高額になるそうです。
何度も廃船の話が上がりましたが、何とかやまゆりを残そうと1993年に「やまゆり倶楽部」が設立。会員からの年会費などで維持管理し、2013年には「帆船やまゆり保存会」としてNPO法人が立ち上がりました。
動態保存のための「体験セーリング」という方法
「動いてこそ船。空き家と一緒、使わないとダメになる。博物館に展示された船を見ても感動しない。」中村理事長はやまゆりやセーリング、海についての貴重さ・文化・楽しさを伝えるため、動態保存にこだわります。
「やまゆりにもエンジンは付いていますが、そのエンジンを切って風だけで航行していると、本当に静かで、風の音、波の音だけが聞こえます。木造なので、進み方も手触りもやわらかい。自然と一体になるような感じです。」
その魅力的な乗り心地を、一般向け体験セーリングで多くの方が体験しています。1時間程度の体験セーリングでは、海から見た藤沢に「私たちの街はこんな風になっていたんだ」と自分たちの住む街の再発見をして帰られる方が多いそうです。
保存活動は、オリンピック2020東京大会やテレビでの紹介もあり、会員数も増え、順風満帆な「航海」を続けてきました。
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体験セーリングの再開
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、保存活動は縮小を余儀なくされました。出航できず、会員は減り、船の維持管理もさらに難しくなりました。
そして今年、新型コロナが5類感染症に移行したこともあり、体験セーリングが再開へ。子どもから大人まで、西浜や稲村ヶ崎などへの相模湾1時間クルーズで、「“海ってこんなに楽しいんだ” と体験して欲しい」と中村理事長は話します。
昔は木造の船も多くありましたが、今はFRP( 繊維強化プラスチック) に置き換わり、良いヒノキは神社仏閣用に使われるため入手が困難です。
木造船を作る職人も現代では少なくなり、新しい木造帆船「やまゆりⅡ世」を作るのは相当難しいそうです。
木造のヨットに乗れる数少ない機会です。ぜひ乗船体験してみてはいかがでしょうか?
団体紹介
NPO法人 帆船やまゆり保存会
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【設立】 2013年6月
【代表】 中村 滿夫(なかむら みつお) さん
1964年10月の東京オリンピックヨット競技のために神奈川県が建造した大型帆船やまゆりの保存と、それを活用した体験セーリングや観光振興に取組んでいます。海とヨット・セーリングの素晴らしさとともに、健康促進、福祉増進、及び、帆船やまゆりの魅力を広めています。帆船やまゆりの体験セーリングは10月までの土日を中心に開催中です。日程やお申込み・お問合せは、やまゆりクラブHP(上記参照)をご確認ください。
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