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写真家 大西みつぐ先生のこと

実は僕、スナップが好きなのだ。弟子時代なんかもう、カメラ持ってフィルム持って毎日毎日街をぶらぶらしてスナップしていたの。だけど、いつしか自分では世間にカメラを向けなくなってしまった。なぜだろう・・・。
単純な事なんだけど、オンナノコでの表現がしたくなったから、という事ね。そしてまた今、スナップ熱が再燃しているのだ。

みんな、大西みつぐさんって知ってる?写真人ならば知らなければ「もぐり」という程の写真家で、かの木村伊兵衛賞も受賞されてるのだよ。その大西みつぐ先生(以下みつぐ先生)の写真展が開催されていたので今日伺ってきた。もうね、あの世界はみつぐ先生だけのもの。みつぐ先生のファインダーでしかあの世界は見えないんだ、きっとそう。そのくらい圧倒的にしなやかで、粋な距離感とウイットさ、そして色香や温度まで写ってるのだから、藤里が憧れる訳なんですよ。

先日発売した写真集「Intangible」には、みつぐ先生に書いていただいた帯がついている。言わずもがな僕の宝物だ。最初、帯のお願いをしたら、速攻断られた。「僕が帯書いちゃうと本が売れないよ」と。「いえ、もし帯を書いてくださった事で本当に売れなくなったとしても、だとしたら売れなくていいです。」きっぱりこう伝えた。するとみつぐ先生は「じゃぁ、書いてみよう〜」と、何パターンも書いてくださった。本にはこれを使わせてもらったが、写真集PVには別のものを使った。光栄の極みとも言える言葉だ。

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この写真集ができあがってすぐに、みつぐ先生を訪ねた。真っ先にお見せしたかったからだ。するとにっこりと微笑み「良い本が出来たね」って言ってくれた。そしてぱらぱらっとめくるみつぐ先生。

「ねぇ、このバー??カフェ??これはどこ?」と聞かれた。
「はい、岐阜の明知町という所だと思います。」
「そうそう、明知町だ!あのね、僕30年位前にこのバーというかカフェというかこの場所で撮影してるんだよ。しかも、6×6フォーマット。でもカラーだけどね。」
なんたる偶然。もはや偶然では無い気がした。するとみつぐ先生は続けた。
「藤里くんの展示の後に僕も展示をするんだけど、実はそこにその作品を飾ることにしてる。これも偶然かなぁ・・・」

全身に鳥肌が立った感覚は今でもしっかり覚えている。
ああ、運命ってこれだ。

そんな想いを胸に今日、ギャラリーを訪れてその作品と対面させてもらった。もう、声、匂い、温度、僕が写したかったものは、すべてそこにあった。これはもう手に入れるしかない。後輩が大先輩の作品を買うなんて生意気かなぁ、と思いずっと言い出せなかったが今日、やっと言えた。これはもはや僕の所に来るべき運命の作品だったと想う。

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憧れの大西みつぐ先生の作品が届いたら、僕と夏目響さんで創ったあの作品と並べて飾ろうじゃないか。30年の時を経て作品と作品が出会う。
写真ってなんて素晴らしいんだろう!

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©Fujisato Ichiro

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