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『職人』を読んで

僕があげたfacebookの投稿で「職人ですね」というコメントをいただいたので、『職人』という言葉が気になりました。自分自身は技術者というふうに言ってますが、どこかで職人気質的なものも否定できないなと思い、永六輔さんが書かれた『職人』という本を読んでみました。

1.職人語録

子供は親のいうとおりに育つものじゃない
親のするとおりに育つんだ

何かに感動するってことは、知らないことを初めて知って感動するってもんじゃございませんねぇ。
どこかで自分も知ってたり考えていたことと、思わぬところで出くわすと、ドキンとするんでさぁね。

食べて美味しいものは簡単につくれます。
喰って旨いものとなると年季がかかります。

残らない仕事ってものもあるんですよ。
えぇ、私の仕事は一つも残ってません。
着物の染み抜きをやっています。着物の染み抜きをきれいに抜いて、仕事の跡がのこらないようにしなきゃ、私の仕事になりません。

他人と比較してはいけません
その人が持っている能力と、その人がやったことを比較しなきゃいけません。
そうすれば褒めることが出来ます。

褒められたい、認められたい、
そう思い始めたら、仕事がどこか嘘になります

職人が愛されるっていうんならいいんですよ。
職人が尊敬されるようになっちゃぁ、おしまいですね。

樹齢二百年の木をつかったら、二百年は使える仕事をしなきゃ。
木に失礼ですから。

職人さんの言葉でいいな~と思ったことを書き連ねてみました。
特に染み抜き職人の話なんかは本当にカラダに染みるな~と思います。
『残らない仕事にプライドを持つ』
そんな職人さんに尊敬ではない愛を持って接するような世の中になってほしいし、自分もそんな人間になりたいと思います。

2.職人技

銀閣寺の植木屋さんのお話が書いてありました。
植木屋さんが、「この景色は足利義政が見た景色と同じ」というと、永六輔さんが「本当にそうなんですか?木は大きくなるので違うのでは?」と言ったそう。そうすると、植木屋さんは盆栽は三百年、四百年を小さなままで育てる技術だから、代々銀閣寺の植木を手掛けている自分達だからそうなんだというふうにおっしゃったそうです。

なるほど、大きくしないのも技術だなと思いましたし、それを代々やり続けることが職人なんだなと思いました。しかも、その職人さんは年月が経つと風格は出るとおっしゃったそうです。大きくはならないが風格は出る。大きく出しゃばることはないが、風格は出てくるのは職人自身のことを表しているようにも聞こえました。

3.職人を育てる

最後に永六輔さんと河井寛次郎さんのお話がありました。河井さんは柳宗悦と共に民藝運動に取り組んだ方です。

ある時、永さんが蕎麦猪口をみていいなと思ったそうです。一緒にいた河井さんもいいと思ったそうです。そして「いくらなら買う?」と言われたので、すこし見栄を張って「一万円ですかね」と言ったそうです。そうしたら、河井さんがお店の人に聞いてごらんと言ったので、永さんが聞いてみると五百円と言われたそうです。
永さんは五百円でその蕎麦猪口を買ってくると、河井さんに「いくらだった?」と聞かれたので、「五百円でした」と答えたそうです。
河井さんはしばらくしてから、「まさか、君は五百円で買ったわけじゃないだろうね」と言ってきたので、「いえ、五百円で買いましたよ」と答えるとものすごく怒られたそうです。

「何で自分の言った言葉に責任持てないの。一万円で買わなきゃ買いもにならない」
「自分で一万円で買うって言った以上、一万円で買わなきゃいけない。買い物ってそういうもんなんだ」

職人 P181

河井さんに怒られ、永さんは職人さんを何とか説き伏せ一万円を払ったそうです。そのあと永さんが河井さんに「向こうが十万円だったらどうするんですか?」と尋ねると

「十万円と言われたら、君、毎日通って、一万円になるまで値切りなさい。君がつけた値段なんだから」(笑)

職人 P183

「買物ってそういうものだよ。いいなと思ったら、それはそのモノに負けたってことなんだ。負けた以上は、負けた人間として勝った相手に礼を尽くさなきゃいけない」

職人 T182

なんだか今の僕たちにはない感性だなと思いました。
いいものものには礼を尽くす。
職人はいいものを作る。
その関係性がとても大事だなと思いました。

僕たち土木職もいいものを作る努力を惜しまないことが大事だと思いますし、いいものを作っている人をちゃんと応援してければなと思います。


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