[短編小説]ラジカルシンキング
女の部屋で机を挟んで二人の女が話している。
「ここに5個のリンゴがあります」
「うん」
「これをふたりで均等に分けるにはどうしたらいいでしょうか?」
「まあ、まずは2個ずつ配って…」
「うん」
「そうすると一つ余るから、それを半分に切って分ける」
「そうね。それが普通ね。でもリンゴには個体差があって大きさや重さが違うかもよ?」
「なるほど…それなら重さを測った上で、均等になるように最後の一つを切るかなぁ」
「そうすると確かに量に関しては平等ね」
「うん。半分に切るのは難しいけどね」
「でも、リンゴの甘さに個体差があったらどうする?齧ってみないと甘いかすっぱいか分からないの」
「うーん…」
「これは難しいでしょう」
「わかった!全部ミキサーにかけてジュースにするの。その上で重さを測って半分に分ける」
「いいね。それならリンゴの形は無くなっちゃうけど確かに平等ね。」
「でしょう?これで平等…」
「ドカン!」と部屋の奥から物音がした。
「…」
「…」
「答えとしては他にはこんなのもあるよ。まず二つずつリンゴを分けるの。その後で最後の一つは土に埋めてリンゴの木を生やす。そうすれば枯れない限りずっとリンゴが食べられるでしょ?」
「なるほど!でもそれだと結構時間がかかっちゃうし管理が大変ね」
「…私改めて考えたけど、リンゴなんて初めから無かったらよかったと思うの」
「え?」
「リンゴなんて初めから無ければ私たちも争いにならなかったし、ずっと仲良くいられた」
「…確かに」
「リンゴだって昔は大好きだったけど、今ではリンゴなんかよりあなたの方が私にとっては大切だもの」
「わたしもそう。リンゴが憎らしいくらい」
「そうでしょう?じゃあ、どうする?」
「…ジュースにして海に捨てましょう。そうすればリンゴは無くなっちゃうけど、リンゴへの憎しみは解消される」
「ドカンドカン!」クローゼットの物音が激しくなる
「まぁ!素敵ね、それにその作業できっと私たちの絆も深まるような気がするわ」
「決まりね。じゃあ始めましょうか」
女がクローゼットを開けるとそこには縛られた男が入っていた。
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