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【モノなし生活24日〜32日目】スタートから1ヶ月が経ちました


こちらはシンプルライフチャレンジの記事5本目です。いきなりここから読んでも問題ない気もします。

いちおう1本目はこちら→「所持品0から100日間暮らしてみることにした


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【24日目】スマホ

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ついにスマホ。スマホがある生活とない生活では時間の流れ方があきらかに違うということ、そしてこれから大事にしていきたいのはどちらの時間なのかということを十分に考えられたと思ったのでスマホを解禁した。つまり意識的に距離を置きながら付き合っていこうという決心なのだけれど、たぶんそれってかなり難しいだろうな。いまはスマホなしの時間がどれだけ尊いかわかるけれど、すぐになし崩し的にスマホ依存症に戻りそう。とりあえずTwitterのアプリなどなどを消した。これはいい考えかと思ったが、そのあとPCブラウザ版Twitterの調子が悪くて恒例の19時のアイテム報告ができずに仕方なくアプリを再ダウンロードした。よくない。また消しとこ。

夜はイヤホンでKan Sanoを小さい音で聴きながら『読書の日記』の続きを読んだ。スマホを制限することに集中するより、スマホ以外のchillな時間を全身全霊で大切にしていく、というのが脱スマホ依存への道なのかもしれない、と思い始めているけれどもどうなのか。まだ課題。


【25日目】机

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机があると一気に「人間の生活」という感じがする。机で食事をする、仕事をする。机のないとき、床で字を書いたりしたあと自己肯定感がしずかに削られていく感じがしていた。尊厳に関わる道具、というのがある。机、コップ、箸、皿、服、歯ブラシ、タオルなどが特にそう。

今日はあったかい。急に寒くなった日に「秋なんてほとんどない」と毒づいたけれど秋はやっぱりあった。もうどこにも行かないでと抱きしめた。

大きい公園に行って帰りにケンタッキーをテイクアウトして食べた。「最高だ」と思った。家にものがないと、公園のエンタメ性が再発見される。遊具の有無とかは関係ない。いい芝生、広い敷地、野生のヒガンバナなどにグっとくる。すべての瞬間を味わえた感じがあった。生活と瞬間に集中したい。


【26日目】サラダ油

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最近人生で一番ケンタッキーを食べている気がする。「香るゆず七味チキン」を毎回食べる。そして2本目にオリジナルチキンを食べる。おいしいけどそろそろ台所を充実させたい。調味料がないなりに試行錯誤していたけれど、油がないと料理に「うるおい」とか「色気」が足りない気がする。油がない料理はスン……とか、カラ……としている。続くとそう思う。

9日目に取り出した『読書の日記』を今日も ちびちび読んでいる。読みたかったのはもちろんだけど、アイテム数を増やさないために1100ページの本を選んだし、毎日少しでも本を読めるということが重要だった。でも、結果的にこの本を選んで大正解だった、この本しかありえなかったとまで思っている。著者の阿久津さんの日記には、その時読んでいる本の引用がたくさん登場する。あれ? 阿久津さんこんな文体だっけな? と思うとさりげなく引用が始まっている。日常に物語を乱入させるのが読書という行為かもしれなくて、わたしもそれをしていたいんだなと思った。


【27日目】スマホ充電ケーブル

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「鍋とフタ」とか、セットでカウントしたものもあったのにスマホとPCのケーブルは別で数えることにこだわった。たぶんスマホとPCはかなり大きい存在だからそうしたかった。毎日1つのアイテムを取り出すとき、その道具ともういちど「出会う」感じになる。ケーブルとも「出会う」をしたかった。


【28日目】塩

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渇望していた塩。うまみだけでは感じられないうまみというものがあって、塩気とセットになることではじめてうまみが立ちのぼる、という話をきいた。

この調子で砂糖、醤油、料理酒、胡椒、鶏がらスープの素、コンソメ、豆板醤、ラー油、クミン、七味、チリパウダーなどを手に入れたいと思った……が、いい機会なので少ない調味料でできる料理を学んでみたい。「シンプル調味料チャレンジ」は、なにかこの生活自体と相似形であるようにも思える。すると友人が「有賀薫さんのレシピは基本の味付けが塩だけのものとかが多くていいよ」と教えてくれた。調べてみよう。


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この日は塩と油だけでできる最高のおかず、「ピーマンの油蒸し」をつくった( 料理家の渡辺康啓さんのレシピ )。これが、いままで食べたどんなピーマンよりおいしい。この生活をはじめる前に、渡辺康啓さんのレシピをいくつかためしているときにピコーン!という感じで「滋味!」と思ったのだった。まだまだ知らないうまみがあるぞと。それもあって、調味料以前に素材のうまみのあらわれ方を学びたいと思っていた。


【29日目】スープの本

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いま必要なのは道具より知識だ、と思った。なるほど、友人の言うとおり塩がメインの味付けのレシピが多い。

たまねぎ、にんじん、トマト、キャベツなど、うまみの強い野菜を油で炒めてから煮て、塩で味付けをしただけのミネストローネを出すと、みんな食べて驚く。肉、魚、野菜、乾物、乳製品、油、調味料、どんな食材からも「うまみ」や「香り」が出るということに気がつけば、コンソメキューブはそれほど重要ではなくなる。(有賀薫『スープ・レッスン』プレジデント社 p.33)

これこれ、これこそが求めていたものだ、と思った。「知りたい!」が高まっているときにぴったりくるものを手に入れるよろこび。多分いまが、吸収率のピーク。なにか学びたいときにそれをまず本に求める、というのは好きな行為だ。とにかくせっかちで目の前のことだけが気になる性格だから、あらゆる生活必需品をすっとばしてスープの本が欲しかった。

わたし、うまみを知るぞ。うまく言おうとしすぎているかもしれないけれど、この生活も「うまみを知る」というのがテーマなのかもしれない。人生の滋味はどこか? 日常の味わい方はなにか?


【30日目】グラス

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大学生の時、基本がネガティブでものすごい卑屈だった。自分に自信がないからいつも焦っていて、輝いている人を直視できなかった。いつもなにかに悩んでいて、早く確固たるものを手に入れなければ、と思っていた。

いつもとにかく楽しそうで、なにもかもがうまくいっているように見えるポジティブな友人に「何をしているときがいちばん幸せなの?」と聞いたことがある。すると「朝起きてコップ1杯の水を飲むときかなー」と言われ、かなり衝撃を受けたのを覚えている。そのときのわたしの幸せといえば、なにか成果を出した瞬間、だけだった。朝起きて水……? 理解できなかった。水なんて味ないぞ、と思った。

だけど……いまならわかる……! 朝起きて水を一杯飲む瞬間が幸せだ。カーテンを開けるのも閉めるのも幸せだし、白いスニーカーについた泥を落とすのも幸せだし、それが「小さな幸せ」だとは思わない。これが人生のすべてだ、と思う。一瞬に永遠がある。余裕がないと「いまこの瞬間」を逃すのかもしれない。

もちろん32歳なんだから大学生の時よりは気持ちの余裕があるし、10年間迷いながらもやるだけやってきたな、という手応えもある。だけどこのシンプルライフをやるまで水がおいしい、この瞬間がすべて、とまでは思わなかった。なぜだろう。以前は、小さな幸せに満足している場合ではない、と思っていた。とにかくストイックで常に気持ちが休まらなかった。でも最近思うのは、ストイックなのは自分に向いていないなということだ。自分に優しくしたほうが、仕事でもなんでも純粋にはかどる。これはいろんな雑音を取り除いてはじめて心からわかったことだった。


【31日目】まな板

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牛乳パックを開いて代用したりもしたけれど、さすがに包丁の刃が傷みそうなのでまな板を取り出す。木のまな板は昔からあこがれの道具で、野菜の断面が可愛く見えて好き。これ、買うときにめちゃくちゃ悩んでリサーチして選んだんだった。早く買ってしまいたい〜と焦って、悩んでる時間をストレスに感じることもあるけれど、じっくり時間をかければかけるほどそのあと買ったものに愛着が湧く感じがする。

『読書の日記』を読み終わり、つぎはどんな本にしようかとずっと考えている。Kindleを追加してもいいけど私は本屋でもあるので、Kindleでいいのか? という気もする。なぜ電子書籍より本が好きなのか? という問いに長年「手触りがあるものだから」「なんかいい」「アナログ派だから」以外にしっくりくる答えを見つけられなかった。でもミシマ社の三島邦弘さんの『パルプ・ノンフィクション』を読んだとき、「エネルギーの総量が違う」というようなことが書いてあってこれにはかなり納得した。1冊の本にはあらゆる役割の人びとによる想いと覚悟と手間の上に、紙のプロ・印刷のプロのエネルギーものっかっている。その「紙と印刷の熱量」は内容に関係あるなしじゃなく、重みを感じずにいられないものだ。本を読むというのは「情報を得る」だけでなく装丁・紙質・インクの匂いそのすべてから「エネルギーを受け取る」行為なのかもしれない。もちろん、だからといって電子書籍否定派ではない。

『読書の日記』は本当によかった。1100ページも他人の日記を読んだのは人生で初めてだった。日記という形式もそうだし、阿久津さんの書き方もそうなんだけど、「行為する自分を発見している」という感じがあった。NUMBER GIRLでいうところの「気づいたら俺はなんとなく夏だった」というフレーズに近い味わい。わたしがいまやっているこの生活の目的も、自分の日常を観察・発見することだから、日常に自らのまなざしを向けている人の文章を読みながら過ごせたことはかなりよかった。すごく助けられた。


【32日目】防寒インナートップス

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「もちはだ」の防寒インナー。しっかりとした裏起毛。これは本当にすごくて、これを中に着ていれば真冬でもペラペラのコートでいけるくらい。着膨れせずにおしゃれしたい人におすすめ。寒がりなので、もうこの時期から家の中でもずっと着ている。

今日も爪を切った。この生活で3回目。だいたい10日前後で「爪切りたいかも」という気持ちになることがわかった。短く切りそろえると、俄然やる気が湧いてくる、とまではいかないけれど、それまでの自分より、切った爪の数ミリぶんだけ生真面目な人間になった気持ちがする。整いました、という心地。

もう一ヶ月が過ぎて、手に入れることができるアイテムはあと68個。まだまだ足りないものがあると思いつつ、68も手に入るならかなり豊かだとも思う。あれが足りないこれが足りないと言いながら、でも今日まで無事に生きられている。生きられなかった日はない。なんなら以前より充実している。おもしろい。来週はスープを作りまくりたい。寒い。

続く


次の記事【モノなし生活33〜44日目】スープのことばかり考えて暮らした

【毎日19:00に選んだアイテムを投稿します】→ 藤岡みなみTwitter



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