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『sugar』それは東大王のパフェ

こんにちわ。フジノシンです。
突然ですがみなさんは「sugar」をご存知でしょうか?

sugarとは次世代を担う若手パティシエの集いでございます。

そのsugarが主催するパフェイベントが8月の9日、10日にございまして、私も10日に伺わせていただきました。


一人でいくのはいささか寂しいな〜誰かと感想を言い合いながら食べたいな〜と考えたうさぎメンタルの僕は、コシさんとしゅうまつさんを誘いました。

コシさんとは以前一緒に食べ歩きをさせてもらったすげーパティシエ。クマをオレオでサンドして食べるという奇食家の一面を持ち合わせています。

しゅうまつさんはご存知の方も多いと思いますが、Twitterのフォロワー数7万人を超える正真正銘のインフルエンサー。インフルエンサーの中のインフルエンサー。
その影響力は凄まじく、彼女が白だと言えばカラスすらも白くなると言われています。
名前の由来は終末からきているという説や、裏では「人類マカロン化計画」という謎のプロジェクトを進めているとの噂もあります。
いずれにしろ裏で世界を操っている人物の一人であるということは間違いないです。


そんな奇食家と影響力の妖怪とパフェを食べに行く。
死を覚悟せねばなりません。

待ち合わせの時間は10時。
遅刻などしようものならオレオにサンドされた亡骸をSNSで晒されることになるでしょう。
朝の目覚ましを爆音でセットし、恐怖の中眠りにつきました。 





寝坊しました。

それはそれは優雅かつ華麗な3回転トゥーループのような寝坊をしました。


今から全速力で向かっても30分は遅刻です。





その一文字が俺の頭の中をゆっくりと埋め尽くしていきます。
絶望とはこのことなのでしょう。


「ほっほっほ」

突然どこからか懐かしい男性の声がしました。
誰だ?誰の声だ?

その声は徐々に輪郭を持ち、俺の前にハッキリとした実像として現れました。
白髪に白ひげ、カーネル・サンダースのような体型…あなたは…!!


「最後まで希望を捨てちゃいかん。諦めたらそこで試合終了だよ?」


あ、安西せんせぇぇぇぇ!!!!!
パフェが…パフェが食べたいです!!!まだ死にたくない!!!!


そうだ!誠心誠意謝ればあのお二人も許してくれるかもしれない!!!
諦めるのはまだ早い!!!


LINEでさっそく謝罪の文章を送る


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俺も20分くらい遅れそうです。
遅れるのは俺しかいないのに、なぞの「俺も」

更に本当は30分くらい遅れるくせに、「20分くらい遅れます」

姑息、卑怯、卑猥。
これが俺の3大要素なのです。

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え??ごちそうさまです????





俺を食べる気満々やん…


本当に食べられてしまうやん…



いやだ…オレオに挟まれて死にたくない…


そんな死に方嫌だ…



死を回避する方法は一つ。
遅刻をしないことだ。

しかしこのまま普通に会場に向かったんじゃ遅刻は確実。
これは常識を覆すウルトラCが必要だ。


これは…

時空を超えるしかない…!!


聞いたことがある。
相対性理論によれば、光の速度に近付けば近付くほど時間の進みが遅くなると。

つまりコシさんとしゅうまつさんが光速で動けば、二人の時間の進みは遅くなり、俺の30分も二人にとっては一瞬の出来事として認識されるだろう。


動け。

コシさん、しゅうまつさん、

光速で動け。

六本木ヒルズで光速で動くのです。

反復横飛びを、

光速で反復横飛びをするのです。

あんたたちならできる。
俺は信じてる。


そんなことを思いながら六本木ヒルズまで走った。

死にたくない…死にたくない…

とつぶやきながら走る成人男性を見て、全港区女子と港区おじさんが恐怖のドン底に突き落とされたでしょう。



開場待ちの列に二人を発見した。

遅いですよ〜としゅうまつさんが言う。

どうやら光速で反復横飛びはしていなかったようだ。

ともかく俺はこの二人を待たせてしまった。俺の死は確定事項だろう。
でもまだだ、まだ諦めない。

とにかく謝るのだ。惨めったらしく生にしがみつくのだ。精一杯の言い訳を吐き出すのだ。


「ほんとすいません!いや、聞いてください!違うんですよ!これは違うんです!寝坊なんですよ!!!」


コレハチガウンデス、ネボウナンデスヨ。


なにも違うことはない。
事情があった風でまるでない。

謝罪にも言い訳にもならない供述をする俺を見る二人の目は冷たい。パフェくらい冷たい。

このアホは殺す価値もない。そう思ってくれたのか、俺は今生かされている。

これを読んでいるそこのあなた。今後の人生で1回や2回、殺されると思うこともあるでしょう。
そんな時は是非アホになってほしい。


ていうか俺はなんの話をしてるんですか?
パフェを食べに行った話をしようと思ったのに、寝坊した話をグダグダ語りすぎでしょう。そうは思いませんか?


俺は全くそうは思いません。


人生はいかに無駄を楽しめるかが大切です。
全然本題とは関係ない話も楽しめる。これこそが本質的な心の豊かさではないでしょうか?そうは思いませんか?


俺は全くそうは思いません。


俺は自分の発言を2秒でひっくり返せる男。
リバーシブルパーフェクトヒューマンなのだ。


いや、ほんとすいません。
マジでいい加減パフェの話しますね。


席に通されてメニューを眺める。
そこには3種類のパフェがある。

簡単に言うと
『マスカットのパフェ』
『ネクタリンとベリーのパフェ』
『桃とカカオのパフェ』

あくまで簡単な説明で実際のパフェは想像の10倍緻密な構成になっている。

インスタで見た時点で決めていたが、俺はマスカットのパフェを頼むことにする。
ワニノコ、ヒノアラシ、チコリータのなかでチコリータを選んだ感じだ。

見た目が1番好きなのでマスカットを選んだが、詳しい味の構成が気になる。席に置いてあったメニューを見て俺は恐怖を覚えた。

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①の説明が全く分からない…

パフェの1番上は普通、アイスとか生クリームとかアメ飾りくらいのもんでしょ。
それを嘲笑うかのようか「オパリンヌ、マスカサーティーン、ディル、小菊」
1行目からロケットダッシュで俺の理解を置いてけぼりにしてくる。

え?おぱ、オパリンヌってなんすか?新種のポケモンですか?
サン&ムーンで出てくるやつですか?俺はチコリータで止まってるんですけど?


そんでマスカサーティーン、こいつはゴルゴ13の親戚でしょ。ゴルゴ13のお父さんの弟の息子。つまり従兄弟。殺し屋の従兄弟の登場に焦りを隠せない。


ディル。

いやお前は誰やねん。急に謎の外国人出てくんな。たかが3文字で謎の存在感を出すな。


小菊。これはさすがに分かる。小さい菊やろ。これは読んで字の如しやもん。これで菊じゃなかったら流石にキレるもん。


まとめると、ポケモンとゴルゴ13の従兄弟と謎の外国人と小さい菊が乗ったパフェ。

恐ろしい。なんて恐ろしいパフェなんだ。
衛生面や人道的観点から見ても完全にアウト。
いくらなんでも発想が前衛的過ぎるだろ。前のめり過ぎてわけがわからなくなっている。


①から「わけがわからない四天王」が鎮座したパフェにどう挑めばいいのか皆目検討もつかない。


ディル 
「まさか小菊がやられるとはな」

マスカサーティーン 
「しかし小菊は我らわけがわからない四天王の中でも最弱」

オパリンヌ
「わけがわからない四天王のツラ汚しめ」

そんな妄想に浸るくらい俺の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされていた。

しかしだ、オパリンヌたちがなにかはサッパリ分からんが、なんかめちゃくちゃレベルの高いパフェだということは分かる。

まるで東大王を見ている気分だ。
問題文が何を問うているのか、正解の回答の意味もよく分からんが、なにかもの凄く頭のいい人たちがクイズをやっているということは分かる。あの感覚。

そう。これはパフェの東大王なのだ。
伊沢拓司のパフェ化。
いや、伊沢拓司がパフェの擬人化だと言ってもいい。

自分が何を言っているかもよく分からなくなってきたが、とにかく凄いパフェを食べに来てしまったのだ。


スタッフの方がパフェとペアリングドリンクを運んできた。

当然そこにはポケモンも外国人も乗っていない。
オパリンヌは薄い飴のことだし、マスカサーティーンはマスカットの品種、ディルはハーブだ。

ポケモンが〜とか言ってるやつは2度とsugarのイベントに参加しないでほしい。


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パフェに食いつこうとした俺にスタッフの方が告げる。

「こちら、まずはパフェを召し上がっていただいて、それからペアリングのドリンクをお飲みください。
ドリンクを飲むタイミングはパフェを食べていけば分かると思います。ここだなってタイミングがあるので。」

ほえ〜、そういうものなのか。
このペアリングドリンクというシステムを経験したことはないが、スタッフのかたが言うのならそういうものなのだろう。

ちなみにペアリングは 
「モダンタイムコーヒー、熊本二条麦茶、炭酸」
と書いてある。

コーヒーと麦茶と炭酸を合わせたドリンク。友人に出されたら確実に悪ふざけと思う組み合わせだ。


いよいよ実食。

まずはグラスに貼られたオパリンヌをスプーンで割る。
パリッという気持ちの良い音と共に、オパリンヌやマスカットがグラスの中に落ちる。

そして今まで中に閉じ込められていたマスカットやハーブの香りが顔を出してくる。

全てのパーツをスプーンに乗せ、一気に食べる。
オパリンヌのパリッとした食感、マスカットの自然な甘さ、ハーブの爽やかさ、グラニテやソースが口の中で溶け合い芸術的とも言える味を形作っていく。

俺の全細胞が叫んでいる。
これを待っていたと。

美味い。美味すぎる。
作り手の美学、インテリジェンス、技術の結晶がこのパフェなのだ。

夢中で食べ進めていた俺はあることに気付く。

あれ?ドリンクを飲むタイミングが分からない。

どこだ?いったいどこなんだ?どれだけパフェを食べ進めても、ドリンクを飲むタイミングが掴めないぞ。
このままではドリンクを飲まぬままパフェを完食してしまう。

というかそもそもほんとうにドリンクを飲むタイミングって感覚的に分かるものなのか。 
俺は23年の人生で1度も
「お!ここがドリンクを飲むタイミングでござるな!」
ってなったことはないんだが。

みんな普通わかるものなの?義務教育で習った?

両隣のコシさんとしゅうまつさんを見る。
二人とも自然にパフェを食べ、ドリンクを飲んでいる。

う、嘘だろ…ドリンクを飲むのに欠片も躊躇していねぇ…!!

こ、こいつらはドリンクを飲むタイミングを心得ているというのか…!!

言えねぇ…ドリンクを飲むタイミングが分かりませんなんて言えねぇ。
一応スイーツに詳しいキャラで定着している俺がここで
「すいません、ドリンク飲むタイミングが分からないので教えてちょ☆」
なんて言おうものなら、二人からの評価はガタ落ち。ミジンコ以下の扱いを受けるだろう。

どうする。一か八か今のタイミングで飲むか?
いや、それで間違っていたら俺の人生終わりだ。

失敗の許されない状況。俺はどうするべきなのか。
正解か間違いかすら分からない。まるでどこにあるかも分からないオアシスを求めて砂漠を彷徨い歩く旅人のようだ。

あぁ、誰か教えてくれ。
一体いつ飲めばいいのか教えてくれよ!!!


こうなったらもうヤケだ!!!!

飲む!!!今飲む!!!!
たとえこの身が朽ち果てようとも俺は飲むぞ!!!

父の精!母の血!捨つるべからず!!!!


いっけぇぇぇ!!!!!!!











爽やかな風が吹いた。





コーヒーと麦茶と炭酸水が合わさった独特の苦味が乾いた喉を通り抜ける。
それは乾きを潤すと共に、口に残ったマスカットやハーブの香りと一瞬交わり連れ去っていく。

コシさんとしゅうまつさんが微笑みかけ拍手を贈ってくれる。

周りにいたお客さんやスタッフさんも拍手を始める。

どうやら俺はペアリングドリンクの試練に打ち勝ったらしい。

しゅうまつさん
「おめでとうございます」

コシさん
「おめでとう」

スタッフのかた
「おめでとうございます」

周りのお客さん
「おめでとう!」

鳴り止まない喝采が俺を包んでいく。

そうか。俺はここにいていいんだ。


ありがとう。

父にありがとう。


母にさようなら。


そして全てのケーキ好きに


おめでとう。


sugar、それは素敵なスイーツの会。

sugar、発見と追求の連続。

sugar、それは自分を成長させる場所。


少し長くなりましたが、sugarのパフェめちゃくちゃ美味しかったです。
言いたいことはそれだけです。

またイベントがあれば参加させてもらいます!
ご馳走様でした!

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