悪癖

人には誰しも”癖”というものがある。
生活していく中で生まれた行動や思考の偏り。

癖という言葉にはどちらかといえばマイナスなイメージがあるが、もちろんそれがプラスに働くことも十分にあると思う。

私フジノシンにも当然ながら癖がある。
緊張すると手がよく動くこと。話に熱が入ると目が大きくなること。困ったら笑って誤魔化そうとすること。その他にも自分で気付いていない癖がいっぱいあると思う。

そんな数ある癖の中で、もっともフジノシンらしい癖を自覚している。

それは、すぐに冗談を言ってしまうことだ。

冗談を”言う”のではなく、”言ってしまう”
癖というよりもはや病気に近いかもしれない。

昔から冗談を言うのが大好きで、初めは意識して冗談を言っていたのかもしれないが、いつしかそれが癖になり、息をするように冗談を言ってしまうようになっていた。

これが人間関係にプラスに働くことも多くあるのだが、マイナスに働くことも多いにある。

例えば以前仕事に寝坊をした時、上司から遅刻した理由を聞かれて

「いや〜昨日なんだか昨日眠れなくて、恋ですかね?」

と答えたら、普通に怒られた。
TPOをわきまえない冗談は怒られる。人生で何度も経験したことだ。

厄介なのが自分の中でテンプレ化している冗談があることだ。

こういう状況になったらこういう冗談を言うというのが体に染み付いているものがある。

例えば、相手と肩がぶつかった時。後ろの人からかかとを踏まれた時。

そういう小さいことで「ごめん」と謝られることが皆さんにも多くあると思う。

そんな時普通なら
「大丈夫だよ〜」
とでも返せば良いのだろうが、俺は

「大丈夫です!絶対許さないんで!」
と笑顔で伝えた後に

「俺がこの世で1番許せないことってなんだか知ってますか?
右足のかかとを踏まれることです。左足のかかとならいくら踏まれても構いませんが、右足のかかとだけは絶対に許せないです!」

と言ってしまう。

こんな時の相手の反応は

「なんで右足だけダメなんだよw」
と笑ってくれるか

関わってはいけない人間に出会ってしまったという顔をしてそそくさと立ち去るか

「抱いてください」
と求愛してくるかの3パターンだ。

いや、私も流石に大人なので誰かれ構わずは言ったりしない。ちゃんと人を選んで言えるように最近なってきました。僕って偉い。

しかし咄嗟に出てしまうことがあるんですよこれが。

この間も仕事中にパソコンをカチャカチャいじっていたら、僕の椅子に後ろから誰かがぶつかりました。

「あっ!ごめん!」
とぶつかった人が言うので、俺も咄嗟に

「あっ!絶対に許さないでスゥ!」

って言っちゃったんですよね。



相手はあまり話したことのない上司でした。

ヤッベェ、おらまたやっちまっただ。
お叱りか?お叱りなのか?でも先にぶつかってきたのはそっちだからな?
そっちが怒るんならこっちだってキレ返してやるからな?
お?お?やんのか?やっぱごめんなさい許してくださいお願いしますなんでもしますから。

そんなことを考えながら恐る恐る上司の顔を伺うと

「え?ごめん、なんて言った?」

と上司が聞き返してきた。

ラッキー!上司には俺の冗談が聞こえてなかったみたいだ!

ここは
「いや、なんでもないですよ!大丈夫ですって言っただけです!」
といえば万事解決!上司との人間関係も丸くおさまるってもんだ!


「いえ、なんでも、」


_ただほんとにそれで良いのだろうか。

一度吐いた冗談を飲み込むようなマネをして、俺はこれからの人生胸を張って生きていけるのだろうか。

親、兄弟、友人、未来の奥さんや子供に顔向けできるのか?

いつから俺は上司の顔色を必要以上に伺うような大人になった?
昔はそんなツマラねぇ大人にはなりたくないと、盗んだバイクで夜の校舎を壊して回ったギザギザハートのウルトラソウルだったはずだ。

大人になるってことは小さくまとまることなのか?
いや、そうじゃないはずだ。

もう一度あの頃の情熱を、青さを、不器用な信念を取り戻すチャンスじゃないのか。

そうだ。俺は今ここで生まれ変わるんだ___





「____って言っ_よ」


「え?ごめん、フジノシンくんなんて?」


「許さねぇって言ったんだよ」


「ゆるさねぇ?、、え?」



「絶対に許さねぇって言ったんだよ!いいか!?俺の1番許せねぇことは上司に椅子に後ろからぶつかられることだ!!!!ぶつかってきたのが後輩や同僚なら笑って許すが、俺より立場が上の人間がぶつかってくることだけは許せねぇ!!!!
詫びろ詫びろ詫びろぉぉぉぉ!!!!!土下座しろぉぉ!!!!大和田ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!




すいましぇぇぇぇぇぇぇんんんん!!!!!!!俺が土下座しまスゥ!!!!!靴舐めさせていただきます!!!!ペロペロペロペろ!!!おいちぃ!

う〜ん、これは立派な牛革の靴ですなぁ〜。丈夫さの中にも柔らかさがあり、その上品な味わいと上司様の汗が絶妙なハーモニーを奏でて、吾輩のお口の中が、題名のない音楽会でございます〜〜〜♫」


こうして俺は会社をクビになった。
癖が自らの首を絞める形になったのだ。

まさに悪癖。


皆さんも癖には十分注意しましょうね。
おやすみなさい。

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