藤野恵美

ふじのめぐみ。小説家。児童文学の分野でデビューして、一般文芸のミステリや恋愛小説なども…

藤野恵美

ふじのめぐみ。小説家。児童文学の分野でデビューして、一般文芸のミステリや恋愛小説なども書いています。著作に『ねこまた妖怪伝』(岩崎書店)、「お嬢様探偵ありす」シリーズ(講談社青い鳥文庫)、『ハルさん』(東京創元社)など。大阪芸術大学の文芸学科で教えています。

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大阪芸術大学の文芸学科で教員をすることになった作家の話

こんにちは、藤野恵美です。 私は児童文学の分野でデビューして、一般文芸のミステリや恋愛小説なども書いている作家なのですが、あたらしい「お仕事」をはじめました。 2020年の春から、大阪芸術大学の文芸学科で「小説創作演習」と「児童文学論」を教えることになったのです。 大学教員1年目としての「気づき」をエッセイに書くことで、情報を共有したいと思い、noteに登録してみました。 大阪芸術大学(以下、芸大)は、私の母校になります。 1996年~2000年のあいだ、芸大に通ってい

    • 大阪芸大の文芸学科卒業生のリアルな就職事情

      今回は、卒業後の進路について書こうと思います。 文芸学科だからといって、必ずしも「作家」になるひとばかりではないのです。 大阪芸大の文芸学科を卒業した友人たちが、20年ほど経ったいま、どうしているのか、リアルな就職事情をお伝えしましょう。 私(藤野恵美) 大学在学中からライターをしており、卒業後もそのままライターをつづけ、グルメ本の出版企画が出ていたタイミングで、ジュニア冒険小説大賞を受賞して、自分が本当に書きたいのは「物語」だと意を固め、ライターの仕事は断って、小説家

      • きわめて洗練された味覚を持つ読者

        小説は自由です。 べつに、一文がどれだけ長かろうが、敬体と常体が混在していようが、主語と述語の関係がねじれていようが、!や?のあとに空白がなかろうが、句読点の打ち方に規則性がなかろうが、好きに書いたらいいのですよ。 ただ、一般的に「読みやすい文章」「読みにくい文章」というものがあり、その基準を授業では教えるようにしています。 ちょうど、ウンベルト・エーコの『文学について』(岩波書店)を読んでいたら、こんな一文がありました。 一方には容易に満足を得られるストーリーにしか興

        • 過去に投げたブーメランは未来の自分に返ってくるという話

          大学時代の恩師である眉村卓先生に対して、私はとても敬愛の念を抱いています。 当時、わりと「生意気な学生」だったのですが、眉村先生の授業は「受ける価値がある」と思って、まじめに出席していました。 まず、作家としての圧倒的な実績。 本がたくさん売れて、何度も映像化されて、紛うことなきベストセラー作家です。 そして、実際、作品が面白い。 『なぞの転校生』や『ねらわれた学園』はジュブナイルSFの傑作だし、私が学生時代に入院中の奥様のために書いていたショートショート作品も、さすがの

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        大阪芸術大学の文芸学科で教員をすることになった作家の話

          作家に敬称をつけるか問題

          呼称といえば、エッセイを書くときなどに、作家に対して、呼び捨てにするか、さんをつけるかも、悩ましいところなのです。 芥川龍之介は「芥川さん」と書くと、違和感あります。 でも、開高健は、私のなかで「開高さん」なんですよね……。 あと、カート・ヴォネガットも、いつも「ヴォネガットさん」と言うので、呼び捨てにしたくない感じがあります。 それから、面識のある作家も、呼び捨てにしづらいのです。 大学の授業でも「新見南吉の『ごんぎつね』が……で、令丈さんの『若おかみ』シリーズが……」

          作家に敬称をつけるか問題

          呼称をどうするかという問題

          教員をするにあたって、学生に対する「名前の呼び方」について、少し悩みました。 かつての学校現場では、男子は「くんづけ」で、女子は「さんづけ」が一般的だったように思うのですが、いま、息子が通っている小学校では、男子も「さんづけ」で呼ぶ先生が多いのです。 たしかに、こちらが「相手の見た目」で「男子」だと判断しても、実はそのひとが自分を「女子」だと認識している可能性があったり、そもそも呼称を性別で分ける必要があるのかという疑問が浮かんだりします。 そこで、私も学生に対しては、

          呼称をどうするかという問題

          作品を批判されて命を絶った作家の話

          合評の難しさ、で思い出したのですが。 学生のころ、友人が田之頭ゼミだったのですが、合評がヒートアップして喧嘩みたいになり、ゼミに行きづらくなって、所属ゼミを変更せざるを得ず、阪井ゼミに引き受けてもらった……という出来事があったそうです。 ちなみに、当時、私は木村ゼミにいて、木村先生のおっとりとした口調とお人柄もあり、合評はなごやかで、平和に過ごしていました。 それで、友人の話を聞いて「ええなー、文学っぽいやん、もっとやれー」と思っていたのは、私が明治・大正・昭和初期に活

          作品を批判されて命を絶った作家の話

          合評で傷つかないために

          作品の合評をするというのは、なかなか難しいものです。 私の「小説創作演習」は、前期の授業では自分のオリジナル作品ではなく、『しあわせなハリネズミ』の世界観を使ったオマージュ作品を書いてもらっています。 これには、まず「自分から少し離れた作品」で「合評に慣れる」という狙いがあります。 作品と作者の人格は、べつのものです。 そのことを頭ではわかっていても、やはり、作品の悪いところを指摘するのは「相手の気持ち」を考えるとためらってしまうし、自分も批評されるとへこむのでしょう。

          合評で傷つかないために

          「児童文学論」の授業について

          今回は「児童文学論」について紹介したいと思います。 授業をするにあたって、当時の学科長から言われたのが、「うちの学科は、司書や国語の先生になるための勉強をしている学生もいるわけだから、将来、子供たちに読書教育ができるように、児童文学の知識を身につけさせてほしい」ということでした。 私自身は「作家になる」と決めて、文芸学科に進んだのですが、文芸学科生のみんながみんな作家志望というわけではありません。 編集者志望やルポライター志望のひともいれば、司書や教員免許や学芸員などの資

          「児童文学論」の授業について

          「小説創作演習」の授業について

          私が大阪芸術大学(以下、芸大)の文芸学科で担当しているのは「小説創作演習」と「児童文学論」になります。 今日はそのうち「小説創作演習」を紹介したいと思います。 芸大の文芸学科では、数名の教員が「小説創作演習」を教えており、それぞれの専門性を活かした授業をしているので、学生はシラバスなどを参考に選ぶことができます。 私の「小説創作演習」は、授業計画であるシラバスにおいて、以下のようなことを目標に掲げています。  童話やショートショートなどの短い作品を完成させることで、物語

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          エッセイ発売のお知らせ

          「子育て」と「食」についてのエッセイ集が発売になります。 『子どもをキッチンに入れよう!』(ポプラ社) https://www.amazon.co.jp/dp/4591168484 日経DUALでもエッセイを連載していました。 「作家が育児書を1000冊読んで、わかったこと」 https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/071000209/

          エッセイ発売のお知らせ