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夏前に

暑くジメジメした夜、恋人と別れた

その日は給料日でワクワクして会いに行った時、彼女は暗い顔をして下を俯いて静かだった。

「どうしたの?」
「また今度話そうと思う。私今しんどいから」
「今話そうよ。今話した方がいいよきっと。」

そう伝えた後、煙を燻らせながら2人でしゃがみこんだ


「この前別れたいと思うことはあるの?って聞いたよね」
「うん」
「別れたいという気持ちと付き合っていたいという気持ち半分半分なんだよね」
「そっか半分半分か〜」


付き合って10ヶ月ぐらい経ち
喧嘩も特になく、毎日仲良く話していた。
突然のことで頭が回らなくなった。

「そろそろ行こうか」

そう言うと、話し合う時に使う公園のベンチに腰掛けた。

価値観の違い。

価値観が違う時、ある程度人は擦り合わせていけると思う。

例えばトイレの蓋は閉めてね、飲みかけのペットボトル作らないでね。とか

自分たちの別れは根本的な生きてきた証。
根っこのズレ。

彼女はキラキラした人だった。
夏はサンドウィッチを作ってピクニック
夜はbarに行きワインを飲んで散歩
夏は外に出て過ごしたい海外女性のような性格とブロンドヘアが煌めいていた。

私は家でゆっくり映画を観て本を読み静かに生きている。
絵を描き、たまに文字を綴り。
暗い場所が好きで夏は家から出たくなかった

そういうところだった。

治しようがない2人の価値観
どちらかが合わせれば、どちらかが辛くなる恋愛。
きっとそのままでも付き合っていけたとは思う。
でも、きっとそのままでは彼女は光にはなれなかった。

お互い24歳。

「30歳だったら、軽く呑み込んで付き合っていたんだろうな〜」
「そうだね、付き合っていただろうね」
「楽しかったよ10ヶ月間」
「俺も楽しくて幸せだった、キラキラした人になれなくてごめん」
「私もごめんね」

家まで送って、最後は笑顔で手を振った
涙は堪えた、見せられなかった。
帰り道で2人でよく飲んだ自販機のペプシ
何度も何度も通ってきた道
洗面台に残った二つの歯ブラシ
ベットの上に散らばった金色の髪

夏風に靡いたカーテンがふわりと通り過ぎた。




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