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「ねじの豆知識」 リベット 第三回  中空リベット(チューブラリベット)

第三回は工業的に広く使用されている中空リベット(チューブラリベット)を見てみましょう


ねじの豆知識 リベット 
第一回 リベットとは
第二回 ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベット)
第三回 中空リベット(チューブラリベット)
第四回 ブラインドリベット(Blind Rivet)(近日公開)


中空リベットって何?



チューブラリベット


中空リベット・チューブラリベット(Tubular Rivets)は、一方の端は加工された頭部で、もう一方の端、足の先端は一部が空洞になっています。

チューブラリベット


JIS B 1215には中空部が軸径の0.9倍となる“セミチューブラリベット(Semi−Tubular Rivets)”が規格として載せられています。

セミチューブラリベット トラス


また、中空部の長さが軸径の1.12倍を超えるチューブラリベットは、JIS B 0101 ねじ用語では “フルチューブラリベット” と呼ばれて区別されています。

フルチューブラリベット


中空リベットは、軽量でありながら締結後の緩みが非常に少なく、安定した締結状態を維持できます。また、締結作業に「リベットセッター(中空リベット打ち込み用の機械)」を使用するなら、短時間で効率的に締結できます。ですから、従来ねじやボルト・ナットで締結していた部分を中空リベットに置き換えることで、強度を保ったまま組立工程を簡略化し、時間と費用を大幅に削減することが可能となります。そのため、さまざまな産業や製品で広く使用されています。

中空リベットは身近な所で見かけることができます。例えば、ランドセルやベビーカー、文具のリングバインダーの金具に使われています。電子機器や家電製品のケースやフレーム、自動車や椅子などの家具や脚立にも利用されます。

脚立・バインダー・椅子に使用されているチューブラリベット


中空リベットの締結

ハンド工具によるかしめ

中空リベットは、「手打ち棒」と呼ばれる専用のハンド工具を使用して手作業でかしめるとこができます。しっかりした重くて硬い水平な金属板(かしめ用下受けプレートがgood)の上に、リベットの頭側を下にセットします。下穴を開けた部材をリベットの軸に通し、中空リベット用の手打ち棒を先端に当てて、ハンマーで叩いてかしめます。

チューブラリベットの締結状態


また、小径の中空リベットをハンドプレス機でかしめるための専用の打駒を、インターネット上で見つけることができます。

専用かしめ機「リベットセッター」によるかしめ
中空リベットのかしめ作業は、リベット締め用かしめ機「リベットセッター」を用いる方が一般的です。簡単に素早く行え、製品の量産に適しています。

かしめ作業の流れは次のようです。最初に、リベットセッターのパイロットピンへ、あらかじめ下穴を開けられたワークをはめます。

リベットセッターによるソリッドリベットの締結①


次いで機械上部の柄が下降し、上部にセットされていたリベットの頭を押し下げます。

リベットセッターによるソリッドリベットの締結②


受け側のパイロットピンにガイドされながらリベットがワークを通過し、ダイの内部で塑性変形を起こしてカールし締結が完了します。

リベットセッターによるソリッドリベットの締結③


JIS規格品や一般品では、用途や要求強度、 ワークとの干渉性等の理由のためにリベットの仕様変更をしたいとき、規格外の中空リベットの製造してくれるリベットメーカーさんもあります。

例えば、樹脂を素材とした樹脂中空リベットは、樹脂製品に用いるなら廃棄の際に分別の必要がなく、リサイクル性を高めるために多くの製品に採用されています。

完全に空洞なタイプや、二つに分割されて中空リベットを組み合わせるタイプもあります。

様々なタイプの中空リベット

中空リベットよく似た形をした、下穴なしで直接打ち込み締結できる打込リベットも開発されています。

打ち込みリベットの締結


打ち込みリベットは、下穴の必要がない利便性と、溶接との相性が悪い異種金属材同士や、木材と金属ワークの組合せも確実に締結することが可能なため、例えば自動車のボディやフレーム、エンジン部品の締結や建築など、長期的な耐久性と強度が求められるさまざまな部品の接合に用いられています。

中空リベットのJIS規格

チューブラリベットの基本的を、恒例になりつつあるJIS規格で確認しておきましょう。

JISではB 1215-1976 に、一般に用いる5種類の頭部形状(薄丸、トラス、平、さら、丸)をした、鋼製(黄銅製、銅製及びアルミニウム製)のセミチューブラリベット(Semi−Tubular Rivets 中空リベット)について規定があります。

リベットの頭部の形状とサイズである呼び径(軸部分の外径d(㎜)と同じ数字で、1.2、1.6、2、2.5、 3、4、5、6、8 の9つ)、呼び径ごとに組み合わされるリベットの長さL、その頭部径Dや頭部高さH、が定められています。また、呼び径ごとの中空部分の径Aとその深さBも定められています。

そして、呼び径ごとに、対応する下穴径や “かしめ代(かしめるために必要な、締結する部材の厚みに加える長さ。【締結する部材の厚みの合計】+【かしめ代】=【必要なリベット長さ】となります)” の参考値が示されています。

薄丸


トラス





材料は原則として軟鋼線材、黄銅線、タフピッチ銅線、りん脱酸銅線、アルミニウム及びアルミニウム合金リベット材と定められています。

さらに JIS D 4312には、「自動車用ブレーキライニング及び クラッチフェーシングのリベット(Rivets of Brake Linings and Clutch Facings for Automobiles)」という、自動車用に使用する専用セミチューブリベットが規定されています。頭部形状は皿と平の2種類、呼び径(4、5、6)とともに適用される長さ、中空部の穴の径や深さなどが複数規定されています。

また、ブレーキライニング及びクラッチフェーシングのリベット頭部のザグリ径は、頭部径D+1mm。リベットの穴径は、軸径d1+0.3mm。 また、リベットのかしめ代は、0.5d1〜1.0d1の範囲内から選定することが定められています。

ブレーキライニング・クラッチフェーシングリベット


材料は銅及び銅合金線のC2600W又はC2700W、軟鋼線材のSWRM12、冷間圧造用炭素鋼線材のSWRCH6A、リベット用丸鋼のSVと定められています。

第四回は最近DIYでも頻繁に活用されている “ブラインドリベット” を詳しく取り上げます。


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