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久々の復活と「恋のはじまり」

 久々の復活の理由は、12日ほど入院していたから。

 突然救急車で運び込まれるという、予期せぬ事に遭遇し、12日の入院になってしまった。

 で、「恋のはじまり」とは、私の恋ではなく、

 ドラマの話。


「お金の切れ目が恋のはじまり」

 三浦春馬くんが最後に撮影していたドラマだ。

 ご存じのように、主要キャストであった春馬くんがあのようなことになり、撮影分だけで4話完結のドラマに仕上げたという事で、4週にわたり放送された。

 入院中、動けないベッドの上で、消灯後、看護婦の目を盗んで、それでも見たドラマだ。

 ドラマを見ると、春馬くんの新境地というほどでもないかもしれないが、彼の演技は非常に新鮮で、面白かった。彼が演じる猿渡役の、ちゃらんぽらんながら、どこか憎めないキャラクターはとても魅力的だった。

 登場人物はどれも良い演技で、いい感じの恋愛コメディーに仕上がっていて、是非とも全話作ってほしかったと思う。

 ただ1つだけ、これは言わずもがなかもしれないが、もしこの4話完結の物語を作るなら、ほかの方法があったのではないかと思う。

 当然、1ー3話に関しては、すでに仕上がっていた、もしくは仕上がるように準備されていたわけで、最後に4話目を撮影した、そしてなんとか1つの物語にした、ということだろうが、残念ながらやはりかなり無理を感じる。

 制作者側の意図を言えば、視聴者とともに、春馬君を偲ぶ、(それもほのぼのと)という目的によって作られた最後の物語であろうし、すべてがわかってから、改めてキャストを集めて撮影された最終話だとすれば、あの朗らかな演技の裏には、現実を受け止めたそれぞれの俳優の心情があるわけで、そう思うと、台詞の一つ一つに、揺さぶられるものを感じる。

 ただそれは、春馬という俳優の現実ありきの物語だ。

 この物語はそもそも、こんな事態は想定されてなかったわけで、それとは関係ない物語としての世界観があったはずだ。そう考えてしまうと、物語の世界が現実に飲み込まれてしまったように見え、物語が完結されない感が返って強く感じられたのは私だけだろうか。

 そもそも4話目も、生き生きとした春馬くんを期待した視聴者としては、いかにも回想だけの猿渡役では、やはりどうしても納得がいかない。現実を突きつけられるだけで、一時の夢を感じることが出来ない。このドラマを見ている間だけは、悲しい現実を忘れることが出来る。そういう思いが全く満たされない。むしろ現実を突きつけられるようだ。

 ではどうしたらよかったかというと、やり方としてはそれほど難しくない。

 今日最終話の物語を、第1話からやればいいだけだ。

 このドラマは、春馬くん急逝の事実がわかった後に、最終編集を来ない(追加の撮影を行い)作られたのであろうから、ならば時間はあったはずだ。

 つまりこの物語は、主人公の玲子が、父を探す旅に出るところから始まる。猿彦を伴う彼女は、猿彦を見ながら、自分が父を探そうとしたきっかけを思う。もちろんそれは、母が隠していた父の仕送りを、父に返す事なのだが、本当にそれが正しいのかどうか、彼女は様々に考える。

 この物語をベースに、彼女がどうしてそう考えるのかというところから、今回のドラマで1回目から放送された物語が、玲子の回想としてフィードバックする。

 猿渡の存在が、玲子の気持ちを変えていく、1ー3話までの物語を描きながら、彼女が父を目指す旅が続く。

 後は、彼女が父に出会う時と、猿渡が彼女にキスしてしまう瞬間。彼曰く「この人」と思える人に出会った、雷に打たれた瞬間がオーバラップする。

 彼女は過去の彼女では考えられなかった反応を父に向かって話す。

 今、私は幸せです。

 毎日結構楽しいです。

 それは自分の生活を彩ってくれた人を思った台詞だ。

 かたくなだった彼女が、本当に父に言いたかったことを話せる。そこまで導いてくれたのは、猿彦に表される猿渡である。

 彼女は旅を終えて戻り、猿彦相手に、猿渡に会いたいという。

 この構成の良さは、物語を回していた要だった猿渡が、最終話は一度も現れないという構成をしなくて済むことだ。

 猿渡がどんな人間か、猿渡がどんな行動をするか。1ー3話でどきどきしたり驚いたりした感動を、ちゃんと1話から4話までちりばめることが出来る。最後の最後まで、猿渡は生きている。

 出来れば、一番最後は、玲子と猿渡が鎌倉を散策する後ろ姿ぐらいになると理想的だ。

 最後に家に帰ってきた猿渡に誘われ、玲子が猿渡を追いかけ、2人で歩く後ろ姿。

 ドラマの中のどこかで使われていた、いいシーンをラストに持ってくればいい。

 今回のドラマはできが良かっただけに、最終話があまりにとってつけたように見えてしまう。(実際とってつけたんだろうが)

 いっそ1ー3話も含めて、すべてを作り直すぐらいの編集がほしいと思った。1ー3話と4話とのギャップが大きいからだ。

 実際、すでに放送が始まっていて、この事態なら、仕方がないと思われる最終話だったが、作り上げてからの放送だったわけで、だったら脚本としてもっとやりようがあったのではないかという思いを感じた。


 それにしても、本当に惜しい。

 NHKの「太陽の子」も見たが、春馬くんは実にいい。

 これから歳を重ねた彼が、どんな演技をしてくれるか、是非見たかった。

 

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