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ういず・ころな          (秩序を守った無政府国「日本」)

(ところで、みんなが防毒マスクすれば、自由に行動できるわけよね。早いとこ手軽で安価な防毒マスクを流行させて、自由に遊びに行けるようにした方が良くないか。。。)


 ウィズコロナという言葉が横行しているけれども、今ひとつぴんとこなかった。なんだか政府が、対策を取らないいいわけに使っているような気がしている。

 感染者が増えても『ウイズコロナだから』

 医療が逼迫しても『ウイズコロナだから』

 ウイズコロナだから我慢してね、病気になっても我慢してね、経済が逼迫しても我慢してね、遊びに行けなくても我慢してね、みんなコロナのせいだから、コロナと一緒に暮らすんだから、国民は政府に文句言ってもしょうがないよ。。。

 だいたい、日本でウイズコロナについて話されるのはこういう話だ。

 だが、ウイズコロナになった最初の頃から、諸外国で言われていたことがある。

『民主主義の危機』

 アメリカは大統領選挙期間だが、既にトランプ大統領は、郵送による選挙を妨害している。

 アメリカは広いので、車がないと投票所に行けないケースは多い。低所得者は車を持っていない人も多く、そもそも投票所に行くのが大変だし、投票が平日なので、仕事を休んでまで投票所に行くのはかなりの負担である。

 実はトランプ大統領が選ばれた大統領選挙では、シングルマザーの多くが対抗馬であったクリントン氏を支持していたと言われる。そこで選挙日の当日、トランプ派のスタッフは、SNS上で、この日に天候が急変するため、選挙に行くことが難しくなるような情報を流したり、投票所のそばでデモが起こる可能性があるとして、シングルマザーが子連れで投票所に行くのを躊躇するような情報をわざと流した。SNSでこうした情報が拡散したことが、シングルマザーが投票に行かなかった大きな要因となり、クリントン氏の票が削られた。

 実際民主党の政策は、労働者は低所得者に指示されやすいことが多いのだが、その低所得者が投票に来てくれないわけだ。

 それが今回郵送による投票を推進しようとすると、これは民主党にとってはかなり有利に働く。本来民主党を支持していても、投票に行けなかった人が郵送による投票をしてくれる可能性が高いからだ。

 そこで、トランプは郵送による投票は不正が起こりやすいと反対し、日本で言う郵政省に当たる機関のトップに、自分の支持者をつけ、その人物は、郵送に使うポストをたくさん処分してしまった。(まじか。。。。)

 今その人物は、郵送による投票の妨害はしていないといって、謝罪したようだが、トランプの暴言は続いている。

 郵送による投票は、そもそもコロナ禍の選挙に対する対策の1つだったが、この制度を止めてしまえば、当然投票率は下がる。民主主義の根幹である選挙の妨害である。

 香港では、コロナを理由に選挙が1年先延ばしになる。その1年の間に、民主運動家を摘発して、投獄し、民主運動を押さえ込めば、来年の選挙は中国の思い通りになるだろう。そもそも中国に民主主義はないのだが、コロナは彼らの政治姿勢に味方している。

 では日本は

 安倍首相が辞任の意向を表明し、自民との総裁選挙が行われる。

 日本はそもそも民主主義国家と言うには少しばかり問題のある国で、中国と同様一党独裁の国である。中国よりはましだが、民主主義が結構ないがしろにされているところがある。

 日本では自民党総裁が総理大臣になる可能性が高いのだが、これは自民党員でないと選ぶことが出来ない。しかも今回、急に総理が辞任したとか、政治的空白がどうとかいろいろ理由をつけて、(へりくつだろう)両院議員総会のみを開き、ほぼ議員の投票だけで総裁を選ぶことになった。自民党員の投票はかなりないがしろにされてる構図だ。

 自民党はそもそも民主主義を大事にする政党ではないので、今更という感じはあるが、今回も両院議員総会にした理由はコロナだったらしい。

 アジアでは、タイもベトナムも、民主主義が崩れている。この2つの国はそもそも民主主義が完全に確立はしていなかった。それでも、少しずつ形式を整え、民主主義を育てる方向にあり、なんとか保っていた。しかしコロナ対策は、独裁者にはとても都合のいいもので、一気に独裁的な政治が力を増している。

 アジアは全般的に民主主義が脆弱な地域で、完全に民主主義を否定している国もある。せいぜい日本と韓国ぐらいが、民主主義国として確立しかかっていたわけだが、それも欧米の先進国に比べるとかなり脆弱だ。

 日本の場合は、そもそも大昔から独裁という時代がなくて、民主主義とはいえないまでも、封建制度の時代ですら合議で政策を決めていたという歴史があるので、完全な独裁とか、完全な封建制度にはなったことがないのだが、それでも現代的民主主義には至っていない。

 表現の自由とか、報道の自由とか、結構あるように見えるが、実際には、「自粛警察」に見るような抑制が働いてしまうことがあり、『空気を読む国民』としては、勝手に自粛してしまう。おかげで自由な表現も、自由な報道も控えられることが、ままある。

 実は、政府はこの働きをうまくコントロールしている。

 小泉内閣の当時、イラクで人質になった日本人がいた。当時、イラクは政治的に不安定で、反政府勢力による金銭目的の誘拐が横行しており、外務省は渡航の自粛を呼びかけていた。

 人質になった日本人は、現地の低所得者に対するボランティア活動をしていた人たちで、自粛の要請は承知で、現地にボランティアに入っていたが、そこで誘拐されてしまい、犯人による身代金要求がネットにながされた。結果として、日本の外務省と、現地の有力者の協力で人質は解放され、無事に帰還したが、この事件が起こった当時、小泉首相は、『勝手に渡航して人質になり、国に迷惑をかけている』と公然と非難した。

 このことで、人質であった3人に非難の声が上がり、無事に帰還した後大変なバッシングを受けることになる。

 本来、海外に渡航した日本人が被害に遭ったとき、それを助けるのが国の役目だ。人質になったなら、救出に全力を尽くすのが国の役目だ。それをまるで国の役目ではないかのように宣伝し、自らの力不足を棚に上げた形だった。

 日本政府にとって、日本の同調圧力の傾向は、扱いやすい政治手法だ。

 同調圧力を刺激するような情報を流せば、後は国民が勝手につぶし合って、思うような方向に強制される。自粛を求めることは法的な責任を負わない。自粛することは個人の自由だから、自粛による損失に政府は保証をつける必要はない。ということがわかっているなら、何も自粛しなくてもいいわけだが、自粛しないと自粛警察が来る。同調圧力によって、自粛はしないわけに行かなくなる。

 政府にとってこんなに都合の良い政策はない。

 安部首相が現在の日本が、コロナ感染を低く抑えている現状をして『日本スタイル』と言った。それは国民同士を闘わせるように誘発して、互いに監視させあい、政府の方策に抵抗する力を失わせるスタイルということだ。

 日本人はこんな目にずっと遭っているので、あまり気にしていないようだが、日本政府のやり口は、中国政府とあまり変わりない。

 中国で文化大革命が起こったとき、中国政府は、密告を奨励し、国民を互いに監視させた。当時(現在もだが)中国人は政府批判を人前でしない。いつ誰が密告するかわからないからだ。

 日本では、政府批判はいくらでも出来る。だがSNSが出来てから、政府批判をしたブログが炎上するときがある。これは中国とは少し形が違うが、その結果は同じである。

 コロナは本質をあぶり出す。

 コロナでも災害でも、非常時になると本質があぶり出される。

 コロナは全国的(全世界的)な現象だから、それだけはっきり本質があぶり出される。災害の多い日本でも、一部の地域の災害なら、政府の無策はごまかせるときもある。被災者とそうでない人の間に被害に対する温度差があり、この温度差をうまく利用することで、政府は自らの無策をごまかす。

 しかしコロナは、全国民が等しく被害に遭っているので、無策をごまかしにくい。ただそれでも、政策を実行するために、また同調圧力を利用している。

 『同調圧力による差別が起こるのは、日本人の気質であり、欧米ではコロナの患者を暖かく受け入れるのに、日本では差別が起こり、恥ずべき事だ。』は嘘ともいえないが、言葉は足りない。

『同調圧力は、日本の政府にとって有効な政治手法である。政府は国民性としての同調圧力を操作することによって、国民を支配する。』

 第二次世界大戦における政治の国民操作

 何も他国に類を見なくても、日本の国民は、当時政府に操作され、国民総動員で戦争していたわけだが、同調圧力を利用した操作は、他国でも行われている。

 当時、日本の同盟国であったドイツとイタリアで行われた政策だが、国民を監視し合うような方向に持って行くことによってファシズムを実現した。

 例えば、当時のドイツは、第一次世界大戦後、かなりひどいインフレ状態にあった。パン1つが荷車いっぱいの札を積んでも買えない、という写真は、教科書にも載っている。

 ナチスは、こうした情勢で政策がうまくいかないことを、ユダヤ人のせいにした。ユダヤ人に対する迫害、隔離政策は、考えてみれば何の根拠もなく、理不尽なものだったわけだが、政府による情報操作によって、ドイツ国民はユダヤ人の差別に対し何の違和感も感じなくなってしまう。当時のナチスは、ドイツ人に選民思想を植え付け、生粋のドイツ人以外は、すべて劣った人間であるとして、その先にユダヤ人迫害と虐殺のレールを敷いた。

 ユダヤ人が隠れているのを見つけ出し、密告をすれば報奨金がもらえるという制度があったとしても、それだけでユダヤ人を告発するかと言われれば、たぶんしない場合が多いだろう。日本の戦争中の話を聞いていると、お金がもらえるからと、人を密告する人間は少数しかいない。戦時中で、ものが少なく、生活が苦しかったとしても、皆が等しく苦しいから、むしろ、互いに助け合っているケースがほとんどだ。戦時中は、規制の目が厳しいので、逆に治安は良かったという。空襲があると家に鍵をかけずに逃げなければならない。そもそも当時は今より戸締まりが厳重ではないし、鍵をかけない人も多かった。その割に空き巣や泥棒が少なかった。当時の日本の規範意識は高かった。

 人間は困窮すると犯罪に走ると言うが、それは豊かな人と貧しい人がいた場合の話だ。ほとんどが同じように貧しく、困窮していれば、自然と共助の精神が生まれる。

 だからそのときに、密告という事を行うと、逆にコミュニティーからはじかれてしまう可能性がある。

 それでも密告が成立するのは、それが正しいことと言う裏付けがあるからだ。それは政府が要請している事に、合致した行為だからだ。

 現在のコロナ禍における自粛警察と、構図は同じである。

 ドイツにおけるユダヤ人密告「アンネフランクの日記」のような話は、今でこそ狂気の時代に巻き込まれたかわいそうな少女の物語だが、当時アンネの隠れ家を密告したドイツ人は、正しいことをしただけだろう。それを政府が奨励していた。そして政府は、ドイツの困窮はユダヤ人の存在のせいだと宣伝していた。

 この辺のメカニズムは、スタンフォード大学の『スタンフォード監獄実験』の記録を見るとわかる。

 この実験は、被験者を囚人と看守の役に分けて、監獄に見立てた場所で生活をさせるというものだ。看守は絶対の権力があり、囚人はそれに従属するという前提で、疑似刑務所生活を行わせたというものだ。

 約2週間の予定の実験が、実際にはその半分ほどの期間で中止された。

 理由は予期せぬ悲惨な結果が出たからだ。

 私はこの実験のドキュメントを見たことがあるが、絶対的権力を持たされた看守は、やがて囚人に対して理不尽な従属を強要し、やがて平然と虐待をし始める。この傾向は、実は囚人役と看守役を入れ替えても同じように起こる。そしてドキュメントでもっとも恐ろしいのは、この実験を行っていたスタンフォード大学の教授自身が、実験をやめようとしなかったことである。 

 最初の暴行事件が起こったところで、きわめて異常な状況だとわかったはずで、それでも教授は、看守と囚人の入れ替えを行っただけだった。それでも同じ状況が起きたが、教授はまだ実験を続けようとしていた。

 どうやら当時、教授自身がおかしくなっていたようで、彼は恋人から、『あなたがやっていることは異常だ』と指摘されて、ようやくそのことに気づいたという。つまり、この状況下では、実験を指揮していた教授こそが、もっとも大きな権力を持っていたわけで、それを行使する事に歯止めがきかなくなっていたわけだ。

 スタンフォード大学の監獄実験でわかることは、その権力の行使の絶対性を担保されたとき、人間はいくらでも残酷になれるという事だ。

 被験者だった看守に、なぜそんなことをしたのかと尋ねると、『教授がそうしろと言ったから』という答えが返ってきたらしい。おそらく教授自身は『これは有益な実験だから』という理由で行っていたのだろう。その行為が正しいと納得できる何らかの要因があれば、人間はそれがどんなに非人道的なことでも、良心の呵責なく行える。むしろ良心に従って行う。

 多くの場合、この理由付けは自分ではなく他人から行われる。より権力を持った存在から命じられたことで、自分でその是非を考えることを辞めてしまう。

 この実験の詳しい状況は、「es」というドイツ映画に描かれている。映画は、私が見たスタンフォード大学の監獄実験のドキュメントより、かなり過激になっているが、言わんとすることは同じである。

 そういえば、アメリカ軍はイラクの収容所で、とらえた現地の住民に虐待を繰り返していて、問題になったことがあった。報道によれば、あのときの状況は、この映画とそっくりだった。

 そもそも、日本人は政府を信用しない

 こうして同調圧力によって支配される日本国民は、政府のファシズムに向かわされている。と考えると暗澹たる気持ちになるが、だからといって、どこぞの国のように暴動を起こしても、あまりいい結果は生まれない。

 しかし、歴史的に見て、日本人は、別の方法をとってきた。

 日本人はそもそも、あまり政府を信用していない。

 政府が何を言おうと、お達しを出そうと、確かに従順にそれに従う事が多いのだが、その実、適当に自己防衛を取る人がほとんどだ。

 例えばコロナに関して言えば、当初、37.5分の熱が出たら4日間様子を見て、それでも下がらなかったら保健所に連絡することになっていた。ところが現在の知見からみれば、コロナの場合、多くは、4日以内に一度熱が下がり、その後6日前後(症状が発症してから10日前後)を境に、快方に向かうか、重症化するかが分岐する。この分岐点を過ぎると、重症化する人は数時間で一気に悪化して、人工呼吸器が必要な状態まで進むことがある。

 とすれば、4日間の放置はかなり危険と言うことになる。

 しかし当初から、37.5分の熱を4日放置した人はどのくらいいたのか。

 普通これくら熱が出たら1日たたずに医者に行くだろう。それが子供なら、当然連れて行くし、老人でも連れて行く。元気な大人だと、仕事にかまけて放っておくかもしれないが、普通は医者に行く。インフルエンザだったら、4日もおいていたら、薬が効かなくなる。

 医者の方は院内感染があるから、発熱者の受診拒否をして、おかげで医者を探して大変な思いをした人もいたが、ということは、この人は政府の言うことに従わず、自発的に医者を探したと言うことだ。

 政府の言うことを聞いて、黙って症状を我慢し、保健所に連絡し、たらい回しにあって、病状が悪化して死んでしまった人もいると思う。その人は政府の言うことをまじめに聞いていたまじめな人だ。

 従順な人がひどい目に遭うと言うだけで、政府の政策が間違っていたことは明らかだ。

 だが、思うに、多くの日本人は、実は政府の言うことに従順ではない。

 私は、かなり多数の日本人が、政府の言うことを黙って無視したと思っている。実際私は、コロナが流行り始めて初めにしたことは、発熱したとき診てくれる医者を確保することだった。4日待って、保健所に連絡するなんて、最初から全くやろうと思っていなかった。 

 日本人は、無政府状態を好まない。

 暴動も好まない。

 でも政府に従順である事にも疑問を感じている。

 暴動が起こらない程度に、黙って反抗する。本当に有益でないことはしない。人目が怖いからマスクをするとしても、マスクをしない人を見て、怒鳴りつける人はごく一部だ。『マスクしてないな』と思っても、たいてい何も言わない。見て見ぬふりをする。それが多数派だろう。その人たちは自粛警察にならない。重要なことは、心の中で何を感じていようと、何を行動するか取捨選択することだ。

 他人を攻撃するのは良くない。それがわかっていれば、自粛に応じない店に誹謗中傷の張り紙したりはしない。その店が何をしようと、法的に正しいのであれば、何もする必要はない。

 腹の中で何を思おうと自由だ。

 だがそれを行動に出すかどうかは理性を問われる。

 そうやって行けば、日本人は政府に踊らされることなく、本当に自分に必要なことだけを選択して、感染症対策が出来るはずだ。感染症対策はすべての人に利益をもたらす。

 日本人がほとんどマスクをするのは、それが有益だとわかっているからだ。政府に推奨されただけではない。

 現実に、今日本人のほとんどは政府を信用はしておらず、てんでに自分で情報を集めて、大丈夫そうなことをやっている。その結果が現状なのだから、まさにこれが日本スタイルだ。

 だから日本とは、秩序を維持した、無政府国のように見える。

 

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