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寄り道

朝一にバス停でバスを待っていた。山は霧がかり、神秘的な姿をしている。漁港ではせりが行われているのかたくさんの人が集まり、何やら掛け声が聞こえてくる。その上には鳥たちが群がり、魚を狙っている様子。そんな風景を見ながら楽しんでいるが、一向にバスが来ない。ちゃんと調べてきたのに。バス停に貼られている時刻表を見ると、乗る予定の時刻のバスはなかった。どうやら時間が変わったらしい。ただでさえ少ないバスの本数がさらに減っていた。この現象はさらに各地で加速していくのだろう。ないもんはないから、歩いて行くことにした。幸いにも雨はほぼ降っておらず、晴れていたら歩いて行くつもりだったから当初の予定に戻っただけだ。以前までならちゃんと調べきれなかった自分に対していちいち腹を立てていたけれど、こうした急な予定変更になんとも思わなくなった。今を生きるようになると、過去に何をしたのかはどうでもよくなるらしい。そんなことよりも時間を30分遅らせたことで街を歩く時間ができ、風景画に描く景色を探しに行けるようになってよかったと思った。おかげで新しい時刻表の写真を撮るのを忘れてしまった。

雨に濡れるこの街が好きだ。一番最初に見た時が雨の日だったのもあるけれど、雨に濡れると風情ある景観に哀愁が漂い、日本の静かな美を感じる。伊東へ観光に来て雨が降ってしまったら、中心街から離れた古い街並みを見るのもいいかもしれない。私の好みはニッチだからそんなの面白くないと思う人も多いと思うけど…(笑)

いいなあと思う景色をパシャパシャと写真に収めていく。朝一に普通の路地や建物を撮影しているなんて、完全に変な人である。観光客にも地元の人にも見向きもされていない景色を見つけると、私はスポットライトを当ててあげたくなる。なんで皆んな気づかないんだ?と不思議なくらい。どうやら私にしか見えていないものがあって、それを風景画に描くと気づいてもらえるから嬉しい。今自分がやりたいことであり、現時点で自分にしかできないことのような気もしている。

夢中になると電車の時間に間に合わなくなってしまうからほどほどに楽しみ、駅へと向かった。最近は隙あればすぐに通ったことのない道を行ってみたくなり、時間があっという間に過ぎてしまう。寄り道をすると発見があるから楽しい。予定通りには行かなくなってしまうけれど、新しい道があるのを知れて、その先にもさらに道が続いていると、また次に行く時の楽しみになったりもする。あまり予定ばかり気にしていると別の道があることにも気づけず、視野がどんどん狭くなり、上手くいかなくなるともう生きていけないとすら思ってしまうことがある。たくさんの寄り道を作っておけば、ピンチな時はそこへ避難できる。避難場所は多ければ多い方がいい。だから私は寄り道をすることが増えた。避難先が居場所になったり、新しい出会いに繋がったりするからだ。私の避難所は今ではたくさんある。寄り道とは心の居場所を増やして、世界を広げて行くようなことなのかもしれない。

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