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山登りと頭の中

2024年2月17日。
1人登山。月に一度登ろうと決めた。
登った山は、金時山と明神が岳。
神奈川県と静岡県の境にある。

時間行程とすると、
4:50自宅発→5:50電車・バス移動→8:30頃、登山口に着
〜〜登山〜〜
14:30頃に下山→19:30頃に自宅着

登山時間は5時間半。移動時間は6時間。
結構いい時間を使っている。
何を思っているかを記しておきたい気持ちになった。

夜というか早朝。
2時ごろに布団に入るが、寝れない。そもそも寝る時間が遅い。
ワクワクのせいか、子どものような気持ちせいかなのか、よくわからない。1時間ぐらい寝て、4時に布団から抜け出し準備。
1000円ぐらいで買った救急キットを、バックパックに入れたのを確認する。もし使うタイミングが来たら、死ぬ手前までいってるのかな、と考える。
Xか何かで見た、うろ覚えだが「山の事故はわずかな割合として毎年ある。必ずある。死が確定している人が今現在を生きているのが不思議」。というような文章を思い出した。
不穏なことを考えたが、特に危険な登山でもない。

自転車で駅まで向かう。厚着しすぎで暑い。ということは、寒さ対策ができてる。装備の充実さに嬉しくなる。
山登りの楽しさの一つだと思う。
好きな服・道具を揃えて、目的地を目指して行く。ゲームのRPGで武器防具を揃えて冒険すると似ている。中二的でもある。
さらには、全てを完璧に揃えられてないのも良い。やっとちょっとは良いのが増えてきたな、という途上の感覚。
とりあえず、店頭で買ったら7万で、同店のネットを見たら6万で販売されていたマウンテンパーカーは、素晴らしく機能している。道中の冬風を、完全にシャットアウトしてくれる。してくれなきゃ困る。

駅着。山頂で食べるための食料を買う。
おにぎり(スーパー大麦 手ほぐし焼鮭)、フランクフルト的なパン、明太子ポテトサラダ、LOOKチョコレート。寝不足であろうため、なんとなくレッドブルも買って飲む。

土曜の朝。
都心から離れる電車は異空間の気分がある。朝方まで飲んでいたであろう寝入る若者と、登山やらに行く人が混在する。都心から離れる電車のために顕著に現れる。
昨日のままの人間と、今日になった人間が入り混じる。
バッグの中から本を取り出す。一応、クマ鈴を持っている。寝てる人ばかりのこの車内でクマ鈴を落としたら、舌打ちをされるだろうと想像する。本は安全に取り出した。
読んでいるのは、古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」。
筆者が短大生のころ、「声がれ」を治すために通院したこと、それは「自分探し」で、「自分を積極的な行動で改変する」ことだった。という文章に付箋をつけた。

バスに乗り換える。
ここでも服装で登山客かどうかわかる。登山客でも、同じバス停に降りるかどうかが気になる。目的地としていた場所に近づき、降車ボタンを押すが、誰も降りない。1人登山はこの時、不安になる。もしかして、場所が合ってない・・・?

登山口に着。間違っていなかった。
YAMAPアプリを起動し、GPSをオンにする。このアプリがなければ、1人登山をしていない。地図をオフラインでも使用でき、GPSで現在地がわかる。
YAMAPを立ち上げた社長が、カンブリア宮殿に出演していた。
伝統的なアザラシ猟に行くアラスカのイヌイットが、GPSを使っていた、という体験が生きたそう。イヌイットの男性が、「こんな便利な道具、使わない手はないだろう。」と。
原始的なイメージのその猟に、現代技術を取り入れる姿勢。全く違う領域を交錯させることっていいよなと思い出す。

山を登り出す。8:36。
行き交う人に「こんにちはー」と挨拶をする。山では挨拶をするのがルール。
知らない人からすれば、なんなのこのルールと思う。自分は最初思った。挨拶をすることでお互いの印象を残し、遭難した時の救助に役立つらしい。なるほど。
が、挨拶をフルシカトする人ももちろんいる。このぐらいの低山では必要ないか。
中学生ぐらいの多感な子どもは、挨拶をしたり、しなかったりする。恥ずかしさを感じるのだろう。全く知らない人にいきなり挨拶をするのはよくわからない。
そういえば、朝まだ早い。「こんにちは」の時間ではないが、「こんにちは」と挨拶をしている。「おはようございます」か?
すれ違った男性は「おはようございますー、こんにちはー」と普通に言っていた。そういうのもありか。
自分は「んちわーすっ」という曖昧な挨拶をした。9時半ぐらいまで、大体その挨拶にした。

この挨拶文化で、気まずいのは何度もすれ違う瞬間だ。
(また同じ人に挨拶してる。。。あ、3回目。)と心の中で思う。
山頂では誰も挨拶しない。登山口あたりでも。山頂は公共空間の感じがあり、登山道は、まさに登山中の空間である。少し雰囲気が違う。

登りの途中、登山初心者であろう人らがいた。女性2人。明らかにオシャレな格好をしている。山頂付近は雪だった。その2人のうち1人は、折り畳み傘をさしていた。確かに片手間で登れる山だろう。悪いことでもない。その目立つ行動をできるのを、やる〜と思った。郷に従ってしまう自分との違いを感じた。

山の天気は変わりやすいというが、それを食らった。事前に見ていた予報では雨はなかった。寒い。
子どもの頃に「濡れたままだと風邪ひくから服を着なさい。すぐ着替えなさい」と言われたことを思い出す。ここでは、汗で濡れた服のまま、休んでいると寒すぎる。防寒用のアウターが必須だと感じる。次の山を目指す。

登山客の多い、金時山から離れると、遠くの方からうっすら声が聞こえた。ヤッホーと言いたくなる。だが1人なので言わない。
誰かと山に登ったら、「ヤッホーと言って、ヤッホーと返ってきたら負けゲーム」をやろうと思った。1人の寂しさを少し味わう。

ひと山から下山せずに、もうひと山登ることを、縦走(じゅうそう)と言う。
この縦走という名前、出来る感を出せ、言いたくなるネーミングだ。しかし、軽々しく使うと、登山できます感を演出するから敬遠している。

次の山に向かう途中、徐々に疲れが濃くなってくる。考えがあまり浮かばない。あとどれぐらいかを気にする時間になる。
マラソン大会の折り返しを過ぎた頃の感覚に近い。山登りの方が楽だし、楽しい。
外国の方とすれ違う。「こんにちは」で挨拶する。「こんにちは」で返ってくる。その瞬間、顔があって一瞬ニコッとした。アメリカのスマイル挨拶文化。癒された。素晴らしい文化だと山の中で感じた。

明神ヶ岳に到着。12:15。
飯を食べる。パンとおにぎりが、服を入れたりしたせいで圧迫され、ペシャンコになる。ポテトサラダは何ともない。そんなことを気にせず買ったが、良いアイデアかもしれない。こちらの山頂は雨だ。早々に山頂をたつ。

下山の方が楽なので、横道に逸れる考えが浮かぶ。思ったことの断片をスマホにメモした。

・ウエストランド井口が、令和ロマンの分析がうざいとTVで言ってた。しかし、あの分析が好きと思い、お笑いはベタ・メタ・シュールに分けられると言った令和ロマンに「なるほど」と感心したことを思い出す。
・「エバース」というお笑い芸人を知ったが、M-1敗者復活戦の「ケンタウロス」と3回戦の「略奪」のネタを思い出す。「略奪」の方が好きだ。
・仕事で後輩が「仕事で土日が潰れ、ずっと行きたかったイベントに行けない」という発言に対し、返事に窮したことを思い出す。
・山登りに時間と体力を使ってるんだから、noteか何かに書いてみないと勿体無いと思ったりする。
・最近ちょっと聴いていた「創聖のアクエリオン」の「一万年と二千年前から愛してる」あたりが頭の中に流れる。「僕の地獄に音楽は絶えない」の部分も結構良くないか?と思う。
・ボーっとではないが、ふわふわと振り返ったり、思い出したりする今の時間、意味あるんか?と思う。

下山。登山終了。14:14。
雨が強い。天気をスマホ確認すると曇りだ。山の天気が変わりやすいのレベルではなかった。そもそも天気予報が外れている。

バス停でバスを待つ。確か14:30だったと、乗換案内をスクショしていた。3分ぐらいしたらバスが来た。ラッキーと思い、すぐ乗った。間違えた。

御殿場付近は、バスを多いことがわかった。山付近なんて、てんでバスは走ってないだろうとタカを括っていた。
目的の場所に辿り着くまでのバスがわけわからない。あまり考えたくない。

降りたバス停近くに、案内所があった。そこの人に聞いた。
「200mぐらい歩けば、御殿場アウトレット行きのバスがあるから、そこから御殿場駅にバスが出てます」とのこと。
別のバスルートもあるらしいが、話し方の癖が強すぎて、何を言ってるかわからない。アウトレットからのルートが安全だ。
バスを待つ。予定時刻から10分すぎても来ない。
何も悪くない案内所の人に八つ当たりの気持ちを持つ。いや自分が聞き間違えたかと思い、
停留所の時刻表を見る。合っている、おそらく。
あ、来た!と思ったら、バスの教習車だった。
待つ気持ちに絶望感を付与してくる。
雨の中、15分がすぎる。待つしかない。下山途中から右膝が痛い。そんなに歩きたくない。
20分すぎた。来た、助かった。

御殿場駅にたどり着く。
余ったチョコレートを食べる。口の中の上側が痛い。疲れているとこの痛みが起こる。

電車に乗った。無事帰れる。16:22。
途中、赤ちゃんを抱っこした女性が立っている。席を譲るかどうか迷う。
しかし、目の端に優先席が1席空いているのが見える。こちらの気持ちを揺さぶってくる。
次の駅で数人乗ってくる。女性はまだ降りない。膝の痛みを言い訳にそのままでいる。その女性は次の次ぐらいの駅で降りた。
後悔の記憶になった。思い立ったらすぐ行動すべきだ。

乗り換え。若干寝て、「気づいたこと、気づかないままのこと」を読む。集中が続かない。同じところを何度も読む。

自宅着。19:30。
汚れた服を洗濯する、干す。充実度と満足度が膨れるが、帰り際に買ったエンゼルパイを貪り食べてた。運動して汗を流した意味がない。泥だらけの靴もキレイに出来なかった。充実の1日に影を落とす。
しかも、人間観察日記の様相を呈してしまった。来月もまた登れば良いことにしよう。