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余談「実写のドラマ」

経験の少ない実写ドラマ

2021年7月7日にテレビ東京で『ガル学。~ガールズガーデン~』が放映開始されました。

シリーズ構成と半分の話数で脚本を担当しています。
企画の決まった経緯などは以前noteに書いた以下の記事を見ていただければ、なにが大変だったか感じていただけるかと思います。

仕事の多くがアニメーションの脚本や構成なので、絵作りなどはゼロから起こされるものが多く、画作りという意味でのストレスは脚本を書いている時点ではかなり少ないです。
(作画できないとかそういうのはあるけれど)

実写ドラマの場合、撮影に関する制限があるため、脚本の段階でその不安を取り除いていかなくてはなりません。
大きなところで役者のスケジュール。
そして撮影状況。
予算なんかはアニメでもついてまわりますが実写もそこそこ影響が大きいです。

役者のスケジュール

スケジュールに関してはアニメの声優さんなどにもついてまわることですが、実写のほうがシビアです。
アニメのようなシリーズだと声優さんなどを毎週おさえて収録する、スケジュールのない人はそこだけ抜いてまとめて収録してしまうなどの方法を取ることができます。
ですが実写の場合、カメラのアングルによって映り込むであろうキャストを揃えておく必要があります。セリフがあろうとなかろうとそこにいる意味があればスケジュールを押さえなくてはなりません。

更にこのスケジュールはキャストの数が多ければ多いほど、ピンポイントになっていきます。

撮影スケジュールに余裕があればなんとでもなるのでしょうけれど、ドラマの撮影などはだいたい撮影期間が短い。
これは技術系のスタッフなども押さえておかなくてはならないため、延びればその分、拘束期間が必要なスタッフの経費がかかります。
なのでここを短くするためにも、同じシーンをまとめて撮影してしまう、シーン単位での撮影がよく行われています。
最初に第三話の教室の場面を撮ったとします。
次の撮影は同じ教室でも夕方で第七話だったりすることもあります。
このように撮影のスケジュールを綿密に組んでいき、無駄のないように素材を揃えていくのです。

またキャストの年齢によっても制限がかかります。
13歳以上の義務教育期間の役者さんがいた場合、午前5時~20時ルールがあったと思います。

なのでそれ以降の撮影はできませんからそうした場面は脚本から外しておかなくてはならないのです。

ですので見た目は小学生の名探偵役が本当の小学生の場合、深夜の街を徘徊する実写ドラマは撮影できません。(それ以前に義務教育期間の子供なので許可も必要です)

更に多忙なキャストさんがいた場合なども、期間がかなり厳しく限定されてしまい、それ合わせの撮影期間となる場合もあります。

撮影場所と状況

撮影の問題、それは場所によっても発生します。
一番大きなところでは天候です。
屋外で撮影したいのに雨が続く――。
いわゆる天気待ちが発生した場合は本当につらいものでしょう。
アニメの現場の人間なのでこちらで困ったことはありませんが、実写の撮影班からすればいつものこととはいえ、雨天続きになると気分は憂鬱になるでしょう。

こうした事態を回避するために、屋外ではなく室内での撮影を多めに要求される場合があります。

例えば刑事モノで毎回でてくる刑事部屋のようなものです。

ああいったものの撮影はだいたい大きな倉庫のような場所に組まれたセットまたは、どこかの店などやスタジオを借りたロケセットなどで行われることが多く、天候や時間を気にせずに撮影することができます。
撮影班からすれば一番、計画的に進められる安息の場所だったりします。

過去に自分が関わった映画『ツナガレラジオ~僕らの雨降Days』を例にします。

この作品ではメインキャストが10名ほどいたために、雨が降ったら撮影ができなくなる可能性もあり、セット多めでの注文が脚本段階できました。
またキャストが舞台も控えていたため、撮影期間でメインキャスト10人が一堂に会することができないことがわかっていたため、パズルのようなカメラ位置と撮影の段取りが組まれたのでした。
脚本ももちろんパズルです。

今回の作品ではまだ先のこともあるので多くは語りませんが、生徒会室などがその場所に当たります。

ツナガレラジオの経験があったため、揃わなくても編集の魔法でなんとかなるんだよなぁという考えがあったのは確かですが。
(合成とか陳腐なことはしません)

また今回、コロナ下の撮影ということもあり、撮影スタッフ全員に感染者が出ないようにすることと、PCR検査が行われていたと聞いています。
自分も撮影見学に行きたかったのですが、このご時勢ですから自粛致しました……。

とはいえ、セットばかりだと絵変わりがせず、画面が退屈になるので、やはり抜けた絵を撮れるロケは必然だと思ってます。

原宿ってのはかなりハードル高いなぁと思いましたが、こちらは現場の撮影班の努力あっての賜物なので、ロケが出るだけで僕は感謝の気持ちで一杯になりました。

経験こそが宝

アニメの現場の脚本家なので実写のドラマは本当に数えるほどしか関わっていません。
一番最初に関わったのが『ケータイ捜査官7』です。


レギュラー脚本家として何本か脚本を書かせていただきましたが、このときはまだ実写のことがよくわからずアニメの感覚で脚本を書いていたため、枚数オーバー、撮れない絵をつくるなどかなりヤンチャでした。
さすがに現場から(特にCG班から)制限が出されました。
またモック(模型)が使えるならモックでお願いしますとも……。
そこ見せ場だろと思いつつも、いろんな工夫をしたのがこれが最初です。

次に関わったのが『牙狼<GARO>-GOLD STORM-翔』第15話「砦」、第16話「戦」のゲスト脚本でした。


勝手がわからず「これでいいのだろうか……」と思いながら書いていました。

そして先述の『ツナガレラジオ~僕らの雨降Days』となり、今回の『ガル学。~ガールズアリーナ』で四作目になります。

アニメの場合、脚本の次の段階で絵コンテがあり、どちらかといえばこちらが画作りと演出の設計図になるため、脚本の責任感は心理的には軽いものと言えるでしょう。(無責任に書いていいわけじゃない。中には脚本不要を唱えるプロデューサーもいたりするので、個人的にそんな現場とは仕事したくないし、もうしてない)

実写の場合は、脚本がすべて。演出も撮影班もキャストたちもこれを軸にものが回り始めます。ですから実写の場合、脚本の比重がかなり重いように感じられます。(頼られかたもアニメの現場以上に大きいのでプレッシャーもでかい)

海外の作品の撮影に参加したときも、一日に3シーンくらいしか撮らないのだけれど、撮り逃しのないように同じシーンをアングル変えて何度も撮影するといった光景が忘れられません。
しかも朝の8時30分~18時できっちり撮影が終わらなくてはならないので、みんな明るい。
(撮影が押した場合、残業代が発生する)

これ以外にも舞台などの脚本を書き、稽古などにも参加していたので、アニメ以外の脚本の使われ方というものを経験できていることが、今の自分の礎になっていると思います。

脚本家を志す方や学んでいる方がこれを読んでいるとするならば、あらゆる状況を経験しておくことで自分の脚本が強くなると思ってよいと思います。
成功であろうと失敗であろうと、それを次に活かすのはあなた次第なので。

最後に大切なこと

脚本は書く以上に情報のインプットが大切です。
オフの期間を作って、そこで充電をしないと自分の殻を破りたいときになにもないことに気づいてしまいます。
ですので新しい視点に来づけるように、意図的にブランクを作ることを心がけたほうがいいように思います。
今の自分がまさにそれですが。
半年は仕事したくない……けれど食べられなくなりますので、そろそろ仕事探します。

脚本の仕事ないかなぁ。

――以上、今回の余談でした。次回をお楽しみに。




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