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ちいさな力の使い方

Greatful leverage power

「テコ」が好き。「テコ」というものが好き。「テコ」という言葉が好き。押しても引いても、ビクともしないような大岩をも動かし、大きな大きな「なにか」を作り出す、小さな力を大きく使う工夫。そこには、人間という弱い存在の必死さと、純粋さとを感じる。太古の昔から、人は大きな力を求め続けてきた。その努力の結晶が、今の科学技術の粋なんだろうと思う。人力。マンパワーというものを使わなくなって久しい。いつしかパワーの担い手は人力から家畜となり、家畜から蒸気となり、石炭となり、石油となり、ウランとなり…。でもかつての人類の叡智の結晶、モアイもピラミッドも五重の塔も万里の長城も、国や、民族を越え人の歴史はもともときっと「テコ」で作られたのだ。例えば日本にはとても頑固なことの形容に「テコでも動かぬ」ということわざがあるけれど、逆を言えばいかにテコが強い力かということ。大きなものを動かすには…大きなことを成し遂げるには、確かにどうしても必要となる大きな力。でも、「テコ」のような、小さな力を大きく使う工夫を使いこなせれば、小さな力でも大きなものを動かしていけるから。

 だから、そんな力の使い方をもっともっとうまくなって行きたいんだ。押しても引いてもビクともしないような大願を転がすための、必死で純粋な思い。それは人が人であるという証であり、生きているという足跡だと思うから。

【地域情報誌フジマニvol.30(2006年6月)掲載の編集長コラムからの転載です】

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