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誰かが綺麗にしてくれていた


朝、玄関の扉を開けるとおじさんがいた。

私はビビリなので、「わあ!」と小さい声で発した。
理性が働いた瞬間である。

そんな私のか細い声はおじさんには多分届いていないが、扉が開いたという事象におじさんは驚いていた。

この1秒の間で、登場人物は2人になり、お互いに驚いている空間が出来上がった。

見知らぬおじさんとの気まずい空間を和ませるべく「すみません〜〜失礼しま〜〜す」と笑顔で鍵を閉めながらサヨナラをした。

おじさんは私が鍵をかけている間、手を止めて私から一定の距離を置いて待っていてくれた。”しんし”だった。

帰宅後、おじさんはいなくなっていた。
そして、玄関の扉の隅っこにあった蜘蛛の巣も綺麗になくなっていた。

今まで綺麗にしてくれていることに感謝はしていたが、その対象は私の想像でしかなかった。
今日、”誰か”に会えたことが嬉しかった。

サヨナラをするとき、「ありがとうございます」と言えて良かった。おじさんに素直に私の気持ちが伝わっていると嬉しい。

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