カスタマーサクセスの異動初期にたくさん失敗した話

こんにちは、カスタマーサクセスでセルフサクセスという部署のマネージャーをしている藤井と申します。

サクセスadventカレンダー9日目、油断してたら自分の番が回って参りました。

freeeに入ってから気づけば6年が経ち、最近は顧客体験の負を解消するサクセスで魂を燃やしています。自分は手探りで失敗した経験も多かったので、過去の戒め・備忘録としてサクセスに異動したての頃の失敗を振り返ってみます。

episode1:データの海に勢いよく飛び込んで溺れる

サクセスに異動する前は、自分はマーケティング/グロースハック周りを推進していたのですが、会社としてカスタマーサクセスにより注力していこうというタイミングで当時の上司から異動に興味がないか?と打診をもらったのがきっかけでした。

サクセスに関して、入社した頃から「まだまだ使いにくい箇所があるからなんとかしたいな」と感じていたので、思い切って異動して挑戦してみることに決めました。当時は自分とメンバーもう一人、それに数人の分析や事業企画の方の力を借りて解約という事象の解明から始めました。(その時のメンバーは今も一緒の部署で働いていますが、一緒にここまで切り開いてくれたことに本当に感謝しています。一人では無理だった)

さて異動してまずは体当たりでchurnの調査から始めました。
まずは思いつく限りの予想を立ててみて、基本的なデモグラやお客様のアンケート情報をみながら定量分析を行ってみました。

1-2週間ほどデータ分析に費やしましたが、やればやるほど原因なのか誤差なのかよくわからない微妙な数値差分、細分化しすぎて解決ができない数値が出てきました。それならば、と利用している機能の有無など行動データを引っ張り出したりした結果、分析超初期はデータはあまり役に立たないという非常に有益な学びを導くことに成功しました。マーケティング時代にぼんやり想像していたサクセスの予想だけでは無機質なデータがか。



当時の心境雑イメージ
アンパンマン(分析)をいくら刺しても飛び出さないバイキンマン(課題)

その道のプロフェッショナルの方々にとっては基礎のお話ですが、当時の自分はこうした調査が初めてでやり方もよくわからず、手痛い失敗でした。テーマにもよると思いますが、churn分析をする際は、定性理解→定量分析→定性分析で深掘り..という順番がおすすめです。最低限の勘所がないと意味のないデータで無駄に彷徨うケースは多いです。

episode2:百聞は一見に如かず、分析の基本は比較。

データではどうにもよくわからなかったので、次に実際に使っていただいているお客様にインタビューを行いました。残念ながらお客様の期待を満たすことができず解約されたお客様にインタビューの時間をいただくことは非常に難易度が高く苦労しました。

定量分析と比べて、インタビューをしたことは課題を知る上で、非常に有益でした。データは常に何か行動した結果を示すことが多いですが、なぜその結果になったかを辿っていくと常に起点となっているのはユーザーの考えや感情、理解や行動といったデータでは予想しにくい領域に至ることが多いです。そのため、インタビューを行うとなぜそのような行動をとったのか?というう要因を詳しく知ることができます。(基本中の基本なので、大した話ではありません)

また解約者だけでなく「現在も継続して利用されている方」にも話を聞くことも非常に重要でした。解約者の話を聞いて、原因を考え打ち手を作れる場合もありますが、解約者だけの話を聞いて解決策を作るのは片手落ち感があります。それぞれの話を聞くことで、両者の本質的な差分は何か?というポイントを深掘りすることにメリットがあります。

自分がそう思う理由をいくつか挙げてみると、

  1. 両者に同じ問題は生じていたのか、それとも問題が生じたのか?がわかる

  2. 同じ問題に直面していた場合に、成功と失敗を分ける理由は何か?がわかる

  3. 成功している人の話に、「超成功する方法」のヒントが隠れている可能性がある

といった感じでしょうか。1と2は問題が発生する条件や解決できる確率をより正確に把握するとも言い換えられます。いずれも課題を突き詰めることがうまい人は、失敗の情報のみで解決方法を導き出せるケースもあります。

自分はそこまでの自信がないので、両方調べて材料を増やして考えたいという志向でやることが多いです。
3つ目については、あまり成功した例はないのですが、ホームランを狙う上では大事なのではないか?と思っています。この辺りは元freeeの坂本さんという方の記事で似た話があるので、興味のある方はぜひ読んでみると面白いです。(記事:分析初心者は「スパイダーマン値」を見逃すな!

さてインタビューに話を戻します。詳細は割愛しますが、定性インタビューで両者を比較した際に、もしかしてこうすればいいんじゃないか?とアイデアが浮かびました。そのアイデアが正しいことを証明するには完全な情報はなかったですが、それでも整理するために膨大に出してもらった定量分析のデータから必要そうな2,3つのデータ分析を取り出して、それっぽい理論を組み上げました。(記憶はやや曖昧です

そこから経営陣や開発チームに拙いプレゼンを行い、アイデアを修正しながらプロダクト開発やコンテンツなどいくつかの取り組みを行うことになりました。

episode3.自分のみている赤色と、他の人の赤色は本当に同じか?

関係者の方にも共感して頂けたので、ここまで手がかりが掴めれば、解決まで半年くらいでできるかなという見立てを立ててどんな結果が出てくるかワクワクしながら取り組みを始めました。。しかし、顛末を話してしまうと、解決策をリリースするのに思っていた以上に取り組みに時間がかかり、1年くらいを費やしました。

これにはいろんな理由はありますが、要因の1つに関係者の中でみんな同じ景色をみていると思い込んでしまいコミュニケーションに行き違いが起きてしまったことがあります。断っておきますが、これは誰かが悪い、間違っていたはずだと言いたいわけではなく、そう言うことはよく起こるので自分がこの点を意識してもっと取り組むべきだった、という反省です。

定量データではその場で示せばわかりやすく共通認識を作ることもできますが、その定量データがいかに重要なのか?は案外伝わりにくく、終盤になってイメージがずれていた、というパターンもあります。そのため、定量以外に、根拠となる定性情報を関係者が同じように想起できるか?と言うポイントを押さえておくと、取り組みの成功率が上がりやすかったのでは、と思います。

その後で学んだことも踏まえ、いくつか備忘録としてメモを書いてみます。

もしも関係者がそれぞれ時間をかけられるのであれば、同じ課題をみるために、そう思うに至った同じ経験をできるだけする、が望ましいと思います。課題や解決方法について、どんなことを想像しながら話しているか、エピソードやシーンを提示しながら目線を合わせやすくなります。

このドレスは白と金? 青と黒?
ハフィントンポストより引用

また短期間ですり合わせるためには、ワークショップなどみんなで一緒に同じ情報を眺めてまとめて議論したり、ユーザージャーニーをしっかり作っておいてそれらをベースに認識を合わせることも有効でした。

また、PJの途中でチームメンバーの誰かが異動することで、つまづいたり、前提の共有をやり直すことになるケースはいくつもありました。定性の知見/感覚は一度全員から失われると取り戻すのが非常に時間と労力がかかるので、定性理解/知見をいかに維持するかは注意が必要だなと思いました。

他にも役に立った取り組みとして、困っているお客様へのサポートを行う現場をみんなで知ることも非常に有益でした。導入支援をしている現場を何十社も見学させていただき、その中で1つずつわからない点を調べていく作業を繰り返していくうちに、つまづきのパターン/発生頻度/解決に必要な情報コストなどをおおよそ掴むことができます。

現場の様子を記録したものを定期的に眺めて議論をする、という取り組みも役に立ったといえます。定性理解が深まっている理想としては、「具体的なユーザーの顔を何人も浮かべることができ、具体的な反応が予想できる」という状態だと思います。毎回そこまでたどり着けているわけではないですが、この状態になれると失敗しそうな解決策を避けることができます。多分。

エピローグ.今は昔

そんなこんなで、異動初期は知識・経験が足りずに遠回りや失敗がたくさんありました。それらの学びは分析や企画の基本として押さえておくべきことでしたが、未熟な自分は見事にたくさん失敗を重ねてきました。とはいえ現在は、より深くユーザーの課題を理解し、洗練された解決策も多く出始めており、自分が直面した失敗も組織としても過去のものとなりました。

これからのサクセスとしては、まだまだユーザーがつまづきやすい課題・より高度なテーマなども出てきているので、freeeでは積極的にサクセスを推進してくれる仲間を募集しています!興味を持っていただけた方はぜひお会いして話してみましょう。

もう少し知りたいなと思った方は、他の方のadventカレンダーを読んでみると雰囲気が伝わると思います。
https://adventar.org/calendars/8004

最後までお読みいただきありがとうございます。


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