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【書評】『レジリエンス京都!』(藤田裕之、2021)を読んで。

▮ 読後感

 藤田裕之さん(京都市CRO)の著書。京都市はロックフェラー財団のよる世界のレジリエントシティ100に選定されて、その窓口を当時副市長だった藤田さんが担ってこられました。藤田さんは京都市教育委員会に長年在籍され、市右京区長を経て副市長に。その後、レジリエントシティ京都市統括監を2017年から務めておられます。

 本書では、最初の方は「レジリエンス」という言葉についての説明がなされ、その後、京都市におけるレジリエンスのまちづくりについてご紹介。そして今後のまちづくりにおけるレジリエンスの重要性、SDGSとの接続点などについて取り上げておられます。

 私もいま京都市に住んでいますので、京都市のまちづくりの方向性についてはよく知っておかねばと思っていますし、今後、京都市の取り組みに参画させて頂くにあたり、勉強しておかねばと思い読ませて頂きました。今後、京都市の中でまちづくりや、京都市と一緒に事業をやりたいと思っておられる事業者や関係者はぜひ一読をお勧めします。

 ちなみに最後にあったレジリエンスなライフスタイルを測る指標で、私は10点満点中5点でした。ライフスタイルを改善せねば…

▮ 注目した個所(抜粋)

●「レジリエント」なまちとなるための大事な3つの観点として、
▶未来の視点で現在を見つめ、今できることをしっかりと行うこと
▶普段から地域コミュニティ等の手入れ、手直しをする。常日頃から危機意識を持ち、経験者が次世代に語り継いでいくこと。
▶危機に陥っても、対応方法が多くある「オルタナティブ(選択し)」が多いまちであるため、普段から危機に対して、様々な対処方法を考えておくこと
を(鷲田清一・京都市芸術大学学長(当時)に)挙げていただいた。
(p73-74)

●これからのまちづくりを考える上で。行政が常に忘れてはならないことは、縦割りの弊害を作らないことである。
(p82)

●世界各都市を含め我が国の他の大都市との比較で見た時、京都の特徴を最も強く表しているのは、地域コミュニティであろう。
その伝統は、明治の番組小学校の創設時に遡る。学校という教育機関が地域コミュニティの核になることによって、京都のコミュニティには、世代間の交流が行いやすい環境が整ったと言える。
(p110)

●SDGsを推進するうえで留意すべきことを以下、4点にわたって提起したい。
一点目は、繰り返しになるが、SDGsの17の目標によって新たな縦割りを作らないことである。・・・
二点目は企業、行政、大学、地域団体、NPOをはじめ、あらゆる分野の構成員が、それぞれ当事者意識を持って取り組むことの必要性である。持続可能な社会は、決してひとりでに出現したり、他者から与えられて実現するものでもない。・・・
三点目は、社会のそれぞれの単位が、食料やエネルギーを含め経済的にも可能な限り自立していることであり、今日の都市文明に対する見直しである。それは究極的には東京一極集中の打破であると言えよう。・・・
最後に四点目は、既に始まっている、いわゆる右肩下がりの「縮小社会」への対応である。これまで私たちが経験してきた右肩上がりを大前提とする経済成長至上主義ともいうべき将来展望は、我が国では、もはや現実的には極めて困難と言わざるを得ない。
(p206-208)

●人間の幸福感の根底には、自分が他者や社会のために役にたっているという自己有用感や、自然の中で生かされている一体観のようなものがあるのではないだろうか。
(p257)

●レジリエンスのある社会は、誰かが作ってくれて、その恩恵だけ預かるという代物ではなく、個々のステークホルダー、つまり関係者が、当事者意識を持って、レジリエンスのある社会に向けて努力し、その結果、実現が可能になる社会なのである。
(p259)

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◇プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 取締役共同創業者
1978年10月生まれ、滋賀県大津市出身の43歳。2003年に雇用労政問題に取り組むべく会社設立。2011年に政治行政領域に活動の幅を広げ、地方議員として地域課題・社会課題に取り組む。東京での政策ロビイング活動や地方自治体の政策立案コンサルティングを経て、2020年に京都で第二創業。京都大学公共政策大学院修了(MPP)。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。

◇問い合わせ先 tetsuyafujii@public-x.jp



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