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石田尊昭『政治家の条件』(2022年)を読んで。

本書は尾崎行雄の生涯をふりかえり主な言行をまとめたものとなっている。言わずと知れる尾崎行雄は、日本の議会政治の黎明期から第二次世界大戦後に至るまで衆議院議員を務め、当選回数・議員勤続年数・最高齢議員記録と複数の日本記録を有し、「憲政の神様」「議会政治の父」と呼ばれている。

二つの「フセン」として本書で取り上げられる尾崎の主軸は、普通選挙と不戦である。日清戦争には賛成、日露戦争には反対。以後、軍部台頭期にも反戦を訴え続けた人。単なる反戦論者ではなく合理主義者の側面が強かったことが本書でもわかる。藩閥政治に抗い、民主主義を重んじた。

タイトルにもなっている通り、政治家の条件ということで、本書では議員に求められえる10箇条が掲載されている。どれも刮目に値する。また議員と同様に、民主主義の基盤である国民の精神についてもその心得が述べられている。真に民主政治を実現しようとするならば、国民自身が変わらねばならないと。

以下、付箋を貼った個所です。

民主主義は、最終的には多数決で物事を決める。しかし、重要なのは、そこに至るまでに自由な議論、真剣な討議がなされているかどうかだ。
各議員が、党派を超えて自由に議論し、自らの良心に基づいて判断する。結果として、少数党の意見が通ることも当然あり得る。
最初から「数の力」ですべてが決まっているような議会は、尾崎いわく「無用・無意味な暇つぶし」である。
うわべだけの形式的な議論ではなく、実質的な議論を積み重ねることで、政策をより良いものにしていくことが、議会には求められる。

p50

民政維新に最も必要なものは批判的精神である。上からの命令や指令を鵜呑みにして盲動するような国民では、とても民政維新を成就することはできない。王政維新は形式的維新であった。頭の上のチョンマゲは切ったが、心の中のチョンマゲは切れなかった。立憲制度は輸入したが、これを運用する精神は輸入しなかった。民政維新は、王政維新のような単なる外形の上のサルの人まねにとどまらず、進んで精神革命にまで徹底しなければならない。民政憲法はできたが、民主思想は消化しきれなかったのでは、すぐに行き詰まってしまう。

p52

いかなる場合にも、絶対に国民を裏切らない法律制定者(立法府)をつくるか否かを決める力は、一票の選挙権である。この一票こそ、人間の生命・財産その他の権利・自由を確保する最後唯一の自衛権であることを知らなければならない。わが国の有権者の中には、今でも選挙は候補者のためにするものと心得ている人がかなりたくさんあるようだ。候補者のための選挙だと思えばこそ、頼まれたから、金をくれたから、義理があるから入れてやるという気にもなる。もし選挙は自分の生命・財産その他の権利・自由を守るための番人を選ぶことだと悟れば、どんな馬鹿でも、頼まれたから入れるのではない、こちらから頼んで出てもらうのだ。

p53

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◇プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 共同創業者
1978年10月生まれ、滋賀県出身の43歳。2003年に若年者就業支援に取り組む会社を設立。2011年に政治行政領域に活動の幅を広げ、地方議員として地域課題・社会課題に取り組む。3期目は立候補せず2020年に京都で第二創業。2021年からSOCIALXの事業に共同創業者として参画。現在、社会課題解決のために官民共創の橋渡しをしています。
京都大学公共政策大学院修了(MPP)。京都芸術大学大学院学際デザイン領域に在籍中。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。
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