日本が目指すべき地球温室効果ガス削減量とは?

2015年のパリ協定では、世界共通の目標として、
「遅くとも21世紀後半には、温室効果ガス排出量を森林などの吸収量とバランスさせること」が掲げられ、これが持続可能な社会を次の世代に引き継ぐための課題となっている。

◎現在の温室効果ガス排出量は?
日本における温室効果ガス排出量は以下である(2018年度データ。2020年4月発表値)。
(出典元:環境省HP 温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告~温室効果ガスインベントリ等関連情報~)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/
 ・二酸化炭素: 11億3800万トン(91.7%)
 ・メタン: 2990万トン(2.4%)
 ・一酸化二窒素: 20万トン(1.6%)
 ・代替フロン等4ガス計: 5280万トン(4.3%) 

重量比で考えると、二酸化炭素は圧倒的な割合であり、その内、発電や燃料から生じたエネルギー起源は全体の85.4%、非エネルギー起源(セメント製造などが起源)は全体の6.3%である。つまり、発電や燃料から生じたエネルギー起源の二酸化炭素が温室効果ガスの大多数を占めるものとなる。

また、温室効果ガスを考える上で排出量だけでなく影響度も考慮する必要がある。その影響度は「温室効果係数」と呼ばれ、二酸化炭素の温室効果を1とした場合に、二酸化炭素以外の温室効果ガスが何倍の温室効果をもたらすか数値化されている。
(出典元:全国地球温暖化防止活動推進センターHPより)
https://www.jccca.org/chart/chart01_02.html
 ・二酸化炭素: 1倍
 ・メタン: 25倍
 ・一酸化窒素: 298倍
 ・代替フロン等4ガス計: 1430~22800倍 

このデータから見ると、二酸化炭素以外の温室効果ガスの地球温暖化への影響が抜群に大きいことがわかるのだが、例えば、エアコンなどに使われる代替フロンは大気放出させないようにすることは技術的に可能で、実際に「家電リサイクル法」「自動車リサイクル法」「フロン排出抑制法」が既に世の中に浸透しており、大気に放出させない取り組みが現在進行中である。

メタンも二酸化炭素に比べて地球温暖化への影響が強く、全く無視できる存在ではない。永久表土が溶けて大量排出が懸念されていたり、家畜のゲップなどからの排出量が問題視され、近年クリーンミートなるものも注目されており、メタン対策も現在進行中である。

一酸化二窒素も排出量としては多くないが、温暖化係数は二酸化炭素より格段に高いので、対策は既に進行している。アジピン酸製造過程(用途はナイロン製造)、廃棄物焼却、家畜の糞尿などから発生しており、工業プロセスでは技術による削減が既に大きく進展しているが、廃棄物焼却や家畜の糞尿については対策が現在進行中である。

二酸化炭素以外のガスの対策が必要であることは言うまでもないが、これらの温室効果ガスの中で最も厄介であるのは、やはり二酸化炭素となる。
理由は、大きく以下2つと考える(もっとあるだろうが)。
 ①量が莫大であること
 ②主な排出源が電力と燃料であり、近代社会の源であること
(もっと理由はあると思うが、大きくはこの2つだと考える)


◎森林などの二酸化炭素吸収量は?
一方で、人間がめざすべき到達点である森林などの自然による二酸化炭素吸収量は以下のとおりである。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/results/material/kakuhou_all_2018.pdf
(出典元:環境省HP”2018 年度(平成 30 年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について”より)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/
 ・合計5590万トン
  内、森林4700万トン
   農地・牧草地・都市緑化など880万トン

海洋の吸収量は含めていないが、森林などによる二酸化炭素吸収量5590万トンは、二酸化炭素排出量(11億3800万トン)に対して約5%しかない。
つまり単純計算すると、日本で削減すべき二酸化炭素排出量は、今より約95%減らす必要があることとなる。
日本の森林面積が国土の約70%であることを考えると、森林活動などを頑張っても排出量を削減する観点では大きな助けにならない。

パリ協定で目指す世界で共有している目標「遅くとも21世紀後半までに温室効果ガス排出量を森林などの吸収量とバランスさせること」は、日本の二酸化炭素排出量においては、現状の5%となるまで削減することで達成できることとなる。

この劇的な削減目標は、「排出量を減らす」という次元ではなく、「排出しない」ことを念頭におくことが求められる次元である。


◎日本の二酸化炭素排出量は着実に減っているが、まだまだ不十分

上述の環境省のデータによると、二酸化炭素排出量は2017年から約4%減っている。
(11億9000万トン=>11億3800万トン)
仮にこのペースを2050年までの30年間キープできるとなると、削減量は4%×30年=120%削減とはならず、約71%の削減となる。
((100%-4%)の30乗=29.4%)

もし30年後に現排出量の5%にするには、毎年9.5%の削減が必要となる。
((100%-9.5%)の30乗=5.0%)

これは単純計算なのだが、目安としての二酸化炭素削減量は
「前年比10%減」
が基準ラインという考えは念頭に置いていいのではないだろうか。

もし1年スパンでは短いというのであれば、5年として単純計算すると、「5年前比40%減」
が目安となる。((100%-40%)の(30年/5年)乗=0.6の6乗=0.047≒5%)

ちなみに、日本における二酸化炭素排出量のピークは2013年であり、2018年まで連続で減少し続けている。
2018年は1990年以降で二酸化炭素排出量は最少となる記録的な年であり、逆に2013年は1990年以降で最多となった。この最多の2013年(13億1700千万トン)と最少の2018年(11億3800万トン)の5年間で1億7900万トン削減されており、その削減率は13.6%である。

この削減は、1990年から2013年まで増加傾向であったことを考えると、ものすごい成果であるが、ドライに考えると上述の単純計算目安「5年前比40%減」の1/3でしかないこととなる。
つまり、未達の2/3は2018年以降に繰越となり、将来のハードルを高くした結果とも言える。


つまり、求める成果を考えると、この5年でやってきたことの3倍以上(3割増ではない!)の結果を出すことが2019年~2023年の5年のやるべきことであり、現状の進捗では全然足りていない。
では、どうするべきか、どう行動するべきか。
それが社会の課題であり、私のライフワークとしての課題なのです。


まとめます。
・最新2018年度の日本の二酸化炭素排出量は11億3800万トン(前年比-4%)
・2018年度は1990年以降で最も排出量が少ない
・二酸化炭素排出量の85%が電気や燃料によるもの
・1990年以降で最多排出量は2013年。それから5年で13.6%減った
・2050年にパリ協定の基準を達成するには現状の減り方では全然足りない
 (前年比で約10%、5年前比で約40%の削減が目安)

今回は以上です。

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