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信友直子さん

映画「ぼけますから、よろしくお願いします」の監督だ。中国新聞に「認知症からの贈り物」という週1回の連載があり愛読していた。今週66回で終わった。シリアスな介護問題を軽妙に明るく描き、蘊蓄もたっぷりなので、何度も「そうなんだ」と膝を打った。

最終回の見出しは「幸せ実感 助け合う社会」。
百歳になる父親が「年寄りにとって社会参加というのは社会に甘えることなんじゃのう。わしは気がついたわ」と言ったことを
「おお、なんて名言!つい数年前まで『わしがおっ母の面倒をみる。人の世話にはならん』と頑固だった人が、ここまで進化するとは。恐るべき100歳です」と驚き評価するところがクライマックスだ。

認知症だった妻との生活を娘の信友さんが映画にした。妻と死別後は映画のおかげで有名人になり、呉の街を歩いていても、いろんな人が声をかけ、気にかけてくれる。それを嫌がるどころか好意として受け止め、「社会参加というのは社会に甘えること」と百歳にして至言をのたまう。このお父さん、やはりただ者ではない。

誰にも迷惑かけずに死にたいと老人はよく言う。そんなことできるわけはない。「迷惑」ではなく「社会に甘える」と頭を切り替えればいいのだ。自立の反対語は何だろう。依存と答える人が多いかもしれないが、依存先が多い人ほど自立できる。年を取って家のごみ出しが難しくなったとき、近所の人が少し手伝ってくれれば、自立生活はできるのだ。逆に援助してくれる人がいなければ、家はごみ屋敷となり、病気にもかかりやすくなって、自立生活できなくなる。それを防ぐためには、社会に甘える、依存先を多く持つことを、身体が思うように動かなくなったら考えるべきなのだ。そのためには、身体が丈夫なうちから将来の「依存先」を大切にする、近所づきあいや地域の行事にはしっかり参加し、「孤立」しないことだ。そう、自立の反対語は孤立である。

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