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発酵による健康効果の変化 そばの新芽の青汁と発芽そば発酵エキスの抗酸化活性

そばの新芽を搾汁・発酵してできる発芽そば発酵エキスには、ケルセチンをはじめとするフラボノイドやインドール-3-メタノールという抗酸化物質が含まれています。インドール-3-メタノールについては、抗酸化剤として知られるアスコルビン酸以上の抗酸化活性があることを確認しています。

発酵による抗酸化活性の変化を検証

常務の前島です。前回の記事では、そばの新芽の搾汁・発酵による機能性成分の変化について解説しました。成分が変わると、期待される健康効果にも違いが出てくるはずです。ドクター論文では、発酵前後のエキスの抗酸化作用を比較しました。今回は、そばの新芽と発芽そば発酵エキスの抗酸化活性をご紹介します。

そばの新芽や発芽そば発酵エキスには、抗酸化作用のあるフラボノイドが含まれています。そばの新芽の青汁と発芽そば発酵エキスの抗酸化活性には、どのような違いが見られるのでしょうか。ドクター論文では、「ペルオキシナイトライト消去活性」「スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)活性」を測定しています。

ペルオキシナイトライトは、生体内の一酸化窒素が活性酸素の一種であるスーパーオキシドアニオンと反応して生成される物質です。ペルオキシナイトライトは、LDLの過酸化を引き起こす原因であることがわかっています。

実験では、ペルオキシナイトライトの増減と関係しているニトロチロシンの消去率を指標として抗酸化活性を評価。ペルオキシナイトライト消去活性を調べた結果、そばの新芽の青汁は10.7±2.5(%)、発芽そば発酵エキスは10.9±1.0(%)という結果が得られました。ほぼ同等ですが、発芽そば発酵エキスの活性のほうが強いことがわかります。

SODは、スーパーオキシドアニオンを酸素と過酸化水素に分解する酵素です。詳細は省略しますが、発生したスーパーオキシドアニオンが、どの程度消去されたかを調べることでSOD活性は評価されます。

そばの新芽と発芽そば発酵エキスのSOD活性を比較したところ、そばの新芽の青汁のIC50は1.13mg/mL、発芽そば発酵エキスのIC50 は0.36mg/mLという結果でした。IC50とは、簡単にいうとスーパーオキシドアニオンを50%減らすのに必要なエキスの濃度です。発芽そば発酵エキスのほうがより少ない量で効果が得られていることがわかります。

抗酸化活性には、発芽そば発酵エキス中のフラボノイドが関与していると考えられます。実際に、ケルセチンをはじめ、イソオリエンチン、ビテキシン、イソビテキシンといったフラボノイドの量が発酵によって増えていることが確認されています。一方、ルチンは発酵によって減少していました。ケルセチン配糖体であるルチンの構造中の糖が発酵によって切断されてケルセチンが生成された結果ですが、抗酸化活性にはほかの物質が関与している可能性が残ります。

エキス中の抗酸化物質の相乗効果も期待

実験では、フラボノイド以外の抗酸化物質の単離および同定も進めました。発芽そば発酵エキスをヘキサン層、クロロホルム層、酢酸エチル層、ブタノール層、水層に分液して抗酸化活性を比較したところ、クロロホルム層に強い活性が認められました。分析を進めた結果、関与成分はインドール-3-メタノールであることがわかりました。

抗酸化剤であるアスコルビン酸と抗酸化活性を比較したところ、下の図のとおり、ニトロチロシンの消去率とSOD活性のいずれもインドール-3-メタノールに軍配が上がりました。なお、インドール-3-メタノールも発酵によって生成した可能性が示唆されています。

抗酸化図

ニトロチロシンの消去率(左)とSOD活性(右)

減少したルチンの抗酸化活性を補っているのがインドール-3-メタノールなのか、ケルセチンをはじめとするフラボノイドなのかは特定できていませんが、各成分の相乗効果があるものと考えています。

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