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黒麹発酵ソバの実がヒアルロニダーゼの働きを阻害 抗アレルギ―作用を発揮

ソバの実には、ヒアルロン酸を分解する「ヒアルロニダーゼ」という酵素の活性を阻害する働きがあり、黒麹菌を用いた発酵によって効果が増すことが報告されています。ヒアルロニダーゼ阻害活性は、アレルギー症状の改善につながります。不二バイオファームで製造している発芽そば発酵エキスにも、ヒアルロニダーゼ阻害活性があることがわかっています。膀胱の炎症や線維化との関連についても、研究を進めていきたいところです。

肥満細胞からのヒスタミンの放出に関与するヒアルロニダーゼ

前回に続き、今回も望月が記事を担当します。間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の原因は解明されていませんが、病因の一つとして疑われているのがアレルギーです。膀胱の炎症や線維化の進展には、炎症物質であるヒスタミンが関与しています。治療で抗ヒスタミン剤や肥満細胞の脱顆粒を抑制する薬剤が使用されるのは、ヒスタミンの作用を抑えるためです。具体的には、ヒスタミン受容体の遮断、ヒスタミンの遊離阻害による症状改善を狙っています。

リンク:ヒスタミンが膀胱の炎症を誘発?間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の原因・改善策を探る

ヒスタミンの放出に関わっているのが、ヒアルロニダーゼという酵素です。ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を分解する酵素で、炎症が生じるさいに活性化。組織構造を破壊して、さらなる炎症を招くと考えられています。花粉症やアレルギー性鼻炎などⅠ型アレルギーでは、花粉などの抗原に対する抗体が肥満細胞の表面に結合すると、ヒアルロニダーゼによってヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます。これが「脱顆粒」と呼ばれる現象です。アレルギー症状は、脱顆粒によって引き起こされるといわれています。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の炎症や線維化の進展においても、肥満細胞の脱顆粒によって放出されたヒスタミンの関与が疑われています。また、ヘパリンやヒアルロン酸など、尿路上皮における化学的防御因子としての役割を持つグリコサミノグリカン層の異常が間質性膀胱炎の病因であるとも考えられています。そのため間質性膀胱炎の治療では、ヘパリンやヒアルロン酸などの膀胱腔内・壁内注入療法も行われます。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素ですので、ヒアルロニダーゼ阻害剤の併用によってヒアルロン酸の効果の持続時間が延びる可能性も考えられます。

発酵によってソバの実の活性が増強

ヒアルロニダーゼ阻害活性は、機能性成分を持つ食品からも得られます。ヒアルロニダーゼ阻害活性を持つ食品の一つが、黒麹菌で発酵させたソバの実(以下、「ソバの実麹」)です。2012年に報告された「ソバの実麹中の抗アレルギー成分に関する研究」では、発酵日数によってソバの実麹の効果が増すことも報告されています(※1)。不二バイオファームでは、そばの実と同様、ルチンを含むそばの新芽を用いて「発芽そば発酵エキス」を製造していますが、発酵によって機能性成分の質・量が変化することは過去の記事でご紹介したとおりです。また、発芽そば発酵エキスにもヒアルロニダーゼ阻害活性があることを確認しております。

リンク:発芽そば発酵エキスができるまで!不二バイオファームの独自製法

ソバの実麹は、水に浸けたソバの実に泡盛用黒麹菌を接種して作られています。黒麹菌接種前の発酵0日目、接種後の発酵1日目、2日目、3日目、4日目、6日目のソバの実を凍結乾燥粉末にした後、エタノール抽出したソバの実麹エキスのヒアルロニダーゼ阻害活性を調べた結果、発酵日数が長くなるにつれて阻害率は上がっていきました。ソバの実麹エキスをマウスに経口投与する実験では、ジフェンヒドラミンという薬には及ばなかったものの、アレルギーの抑制効果が確認されています。

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「ソバの実麹中の抗アレルギー成分に関する研究」から

私たちが静岡県立大学などと共同で行った臨床試験では、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんに対する発芽そば発酵エキスの有効性が確認されました。一方で、作用機序など明らかになっていない部分も少なくありません。今後、さらなる検証を進めていきたいと考えています。

リンク:発芽そば発酵エキスの機能性解明のキーマン、静岡県立大学・山田静雄特任教授との出会い

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※1 『椙山女学園大学研究論集』第43号 2012年「ソバの実麹中の抗アレルギー成分に関する研究」 森 久美子・神田さゆり・江崎秀男・中村好志

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