居心地が悪い音楽
藤箱はミュージシャンというより、音楽オタクが同人誌感覚で曲を作ってみている側面が強いので、ギターを練習する数倍の時間を様々な音楽を聴くことに費やしてきた。
しかし、中にはどうしてもハマりきれないジャンルがある。無論「ものによる」という側面もあるが、どうしても良さがわからないジャンルたちのことを書いていこうと思う。
まず、1つ目がハードロックだ。
AC/DCや、エアロスミスなど、ギタリストとしては憧れておきたいバンドたちだが、どうしても主体的に聴くことが少ない。
次に、メロコアだ。
グリーンデイの来日だったり、エルレの復活だったり、もしメロコアが好きだったらきっと楽しかったであろうイベントを、いつも横目で見送ってきた。
最後にガレージロック、特にミッシェルやブランキーなどの音楽だ。
軽音系のサークルに所属していた時、「俺、ミッシェルが好きなんです」という新入生がいると、先輩が「おっ。わかってるじゃないか。」と、その新入生が一目を置かれるのを、少し羨ましいなと思っていたものだ。
俺は、これらの音楽のカッコ良さがわからないわけではない。Deep Purpleのburnのクラシック的で、勢いのある演奏などはかっこいいと思うし、ハイスタのステイゴールドのイントロもとても魅力的だと思う。ミッシェルのトカゲや、ブランキーのロメオのような、裏路地を思わせる暗さは年代を超えて愛されるのも当然と思える。
ただ、これらの音楽は俺にはとても居心地が悪いのだ。
ハードロックの真っ直ぐさは眩しすぎるし、メロコアの人懐っこさは学生時代の文化祭を連想させ胸が苦しくなる。ミッシェルやブランキーに出てくる街並みは、田舎者から見たヒルナンデスで紹介されている東京の喫茶店くらい異国の風景なのだ。
とてもかっこいいが、どれも自分の音楽ではない感じがして、息苦しい。
俺にとって、これらの音楽は知らない人と行くディズニーランドのようなものなのだ。もちろんネズミの耳をつけて、アトラクションに乗り、パレードを観るのは楽しいだろう。ただ、何か事情がない限りは1人で城崎の温泉街で散歩している方が"性に合ってる"のだ。
ハードロックが好きな人はハードロックな生き方をしているし、メロコアが好きな人はメロコアな生き方をしているし、ミッシェルやブランキーが好きな人は黒の革ジャンを着てマーチンのブーツを履いている。それと同じように、俺はスウェットにサンダルでブックオフに向かうような生き方をしているし、そういう音楽が落ち着くのだ。
ハードロックやメロコア、ガレージには、例えるなら少年漫画の主人公のような類のかっこよさを感じる。
それが悪いというわけではないが、俺は旅に出るならルフィやナルトよりもモテ期の藤本幸世といっしょに行きたい。