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道ばたで寝むる犬見ると幸せ

このエッセイは2019年に刊行したジンに掲載した日記に加筆したものです。

 

犬と猫どちらが好きかと聞かれたら即答で猫だと答える。まとわりつかれるのは苦手だし、犬と同等の愛で向き合うことはできない。そんな僕でも幼少期にチビという名の柴犬の遺伝子をもつ雑種の雌犬を飼っていた。僕の実家には広い庭があり、父が建てた小屋がチビの寝床だった。

外にいたから野良犬とやりまくり、次から次へと仔犬を産んだ。生涯で何匹産んだのだろう。友人や知人が仔犬を引き取ってくれたおかげでチビ一族の領土は広がったが、僕の元を離れるのは少し寂しかった。しかし想像を超える出産率で大量の仔犬がとめどなく産まれるのでチビの仔犬という認識は薄れ、そのうちその辺にいる野良犬もチビが産んだ犬なんじゃないかと思うようになった。

小学校から帰るとチビと仔犬が尻尾を振って出迎えてくれて嬉しかった。友達と遊ぶ習慣はなく帰りが早かった僕の遊び相手は犬だった。小学校では嫌われるタイプではなく目立っていたが、親友と呼べる友達はいなかった。修学旅行で部屋割りをするときにAからDまであるとすれば、なんとなくCに属する感じだ。そんな僕にとって犬は大切な遊び相手だった。

今はネパールの首都カトマンズで仕事をしている。東京では見なくなったがこの街では野良犬がそこら中で寝ている。道の真ん中で寝ていても怒られず、人や車が犬を避けていく。幼少期にチビが産んだ沢山の犬と接したせいか、僕はカトマンズの犬もチビの一族に見えてしまう。愛情が同じというのは言い過ぎだが、甘えてきたら撫でてやるし逃げるなら追わない。道ばたで寝むる犬を見ると幸せな気持ちになるのは、チビがそこで寝ているような気がするからだ。



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