何処までもやせたくて(9)オバサンのボディイメージ


「あなた、やせたわねー。ガリガリじゃない。
ダイエット、もう、やめたほうがいいわよ」

スポーツクラブでいつも顔を合わせるオバサンに、突然、そう言われた。

ウォーキングをして、プールで泳いで、サウナで温まっていたときのこと。

「そうでもないですよー。まだまだって感じです」
なんて、適当に答えたけど、内心、ちょっと嬉しかった。

一人暮らしを始めて、ダイエットを再開してから、一ヶ月。
それなりに、順調に進行している。

実家で母親を納得させるために、無理やりキープしていた体重からは、
約四キロ減ったし、空腹感もなくなってきた。
一応、一日千キロカロリー以内って決めているけど、五百でも平気だったりする。

その成果が目に見える形であらわれてきたと思うと、ワクワクしてしまうのだ。

でも・・・

オバサン世代の基準って、アテにならないからなぁ。

母親なんて、46キロの私のことを「ガリガリ」って言ってたし。
大抵のアイドルは「やせすぎ」に映るみたいだ。

そういえば、前に入院させられたとき、
「キミは、ボディイメージが狂っているんだよ」
って、担当医に言われたけど、
オバサンたちのほうこそ、感覚がおかしいんじゃないか、って思ったりもする。

そうじゃなかったら、たぷたぷの二の腕や象みたいな脚を露出して、
街を歩いたりなんて、できないはずだから。

その、スポーツクラブのオバサンは、そこまで行ってなくて、
ちょっとぽっちゃり、というレベル。
それがキャラクターにも合っていて、魅力的な人だけど、
だからって、ああいう体型になりたいとは思わない。

私がなりたいのは、オバサンから見て「細い」体型ではなく、
たとえば、モデルさんたちの中に混じったとしても「細い」という体型なのだから。

サウナでは、オバサンにそれ以上言われることはなかったけど、
ロビーで水分補給をしていたら、お茶に誘われた。

「私達、これから甘い物でも食べに行こうかって言ってるんだけど、
あなたもどうかしら? そこ、ケーキがおいしいって評判なのよー」
って。

もちろん、
「すみません、これからバイトなんで」
と、口実を作って断ったものの・・・

そう、彼女たちは、運動のあと、そういうものをすぐに食べたりするのだ。
そんな行動パターンも、信じられない。
せっかくカロリーを消費したのに、それが無になってしまうというか、
かえって太るんじゃないだろうか。

私は逆に、運動の前に食べることにしている。
ヨーグルトとか、バナナとか・・・
そうすれば、ウォーキングをしているときとかに、
それが胃の中で燃焼している感覚が味わえて、満足感や安心感が得られるもの。

とにかく「オバサン基準」を気にしていては、ダメだ。
それよりも、モデルさんたちが日頃どんな生活をしているかを知りたいし、
真似してみたい。
きっと、私なんかより、もっと自分に厳しくしてるはずだから。

身の程知らずと言われてもいいから、私は「モデル基準」で生きていきたい。

オバサンみたいにならないために、もっともっとやせなくちゃ。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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