「しあわせ未満」太田裕美

「はなまるマーケット」に森口博子が出てて、小3時の「ちびっこものまね」での秘蔵音源が紹介されてた。
おおっ「しあわせ未満」(太田裕美・77年)ではないか。
「しあわせ!」とは言い切れない、同棲の現実を切なく哀しく描いた作品で、個人的には「木綿のハンカチーフ」を抑えて、一番好きな太田裕美ナンバー。(詞・松本隆 曲・筒美京平)

♪ハタチまえ ぼくに会わなきゃ 
君だって 違った人生
白い夏 裸足の君に
声かけて 名前きかなきゃ 良かったよ

という歌い出しから、もうグッときてしまうわけだけど、子供心に、なんだか大変そうだと思ったのが、2番の歌い出しだ。

♪あどけない 君の背中が
部屋代の ノックに怯える
水仕事 指にしもやけ
アパートも 見つからなけりゃ 良かったよ

それでも、このカップルは「不幸」ではないわけで、不幸を共有するしあわせ、のようなものも、そこはかと漂ってるあたりが、最大の魅力だろうか。あと、何十年も僕をとらえて離さないのが、1番のサビに出てくる、こんなフレーズ。

♪ぼくの心の あばら屋に住む 君が哀しい

その時々で、僕はいろんな女の子をイメージしながら、このフレーズを聴いてきた気がする。
今は……
忽然と現れ、忽然と消えた彼女だろうか。「この世」にまだいてくれてる、という確信が少しずつ揺らいできたなかで、せめて、僕の心のあばら屋からはいなくならないで、と願う。いや、僕が忘れない限り、その心配はないのだから、やっぱり「この世」にまだいてくれてることを願おう。
(あとで、森口博子についても、少し書きます)

(初出「痩せ姫の光と影」2010年9月)


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