体型の事情

・・・唯一ケサを悩ませたのは、同世代の男の子や女の子たちが彼女を指さし、肘で突き合い、「見てよ、ホラ、拒食症の子よ!」と耳ざわりなほどささやき合うことだった。
なんでからかわれなくちゃいけないの?人の外見をなんだってそんなにいじわるく言うの?・・・

(S・レベンクロン「鏡の中の孤独」より)

今日あたり、衣更えを迎える学校や会社も多いと思うけど、肌の露出が増えれば、体型も目立ちやすくなる。世間的に見て、痩せすぎている場合、あるいはその逆でも、いろいろ言われて、つらい思いを味わう人が少なくないはずだ。
この小説のヒロインは、162.5センチ30数キロの体に「ピタピタのタンクトップ」を着て、その細さを誇示したりする一方で、聞こえよがしな悪口に傷つけられる。
健康な人からは理解されにくい心理かもしれないが、そもそも、心理って理解しにくいものだ。その心理による影響が色濃く出るのが、摂食障害なんだろう。
それぞれの「体型の事情」とでもいうべきものに、世の中がもう少し、想像力を働かせてもよいのでは、と、思ったりもする。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年5月)


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