「痩せるのは、人のためではなく」

「痩せるのは、人のためではなく、私の誇りのためよ」
(『拒食症の家』吉川宣行)

167センチで28キロまで痩せた主人公が、母親に、
「ファッションモデルが痩せれば喜ぶ人もいると思うけど、優希が痩せて誰が喜ぶと思う?」
と、問いかけられ、反論する言葉。
また、父親に「ほんとうに、そういう姿に、誇りをもてるのか」と、きかれれば、
「ここまで来るのは、大変だったんだから」
と、笑顔で言い返す。
実話をもとにしたと思われるこの小説(?)のなかでも、印象的な場面だ。

世の中には、自分の誇りのために、命懸けで痩せようとし、その痩せた体を守ろうとする人がいる。そうせずにはいられない心の事情というものに、想いを馳せ、痛々しい美しさに感動しながら、僕にできることは、こうしてオマージュを綴ることだけだ。
ただ、彼女たちにとって、その闘いには大きな意味があり、やがて、必ずプラスになることは信じていいはず。だからこそ、途中で命を落とすことなく、無事帰還してほしい。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年7月)


この記事に反応してくれた人のなかに、同じ身長で、やはり20キロ台の、母親でもある痩せ姫がいた。ブログを2ちゃんねるにさらされたりして、いろいろ苦しんでいた人なのだけど。痩せ姫の強さと脆さ、両方を感じさせる人だった。彼女は無事に帰還できてるだろうか。


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