何処までもやせたくて(59)元気ですから!


「なんか、髪までやせちゃってるよ」

担当してくれた美容師さんの言葉に、ギクリ。

自分の髪が普通じゃないことは、わかってるけど。
3連休の初日に、まず、美容院に行くことにしたのも、
パサパサで、痛みまくってる髪をバッサリ切って、
かえって目立たなくしようと思ったからだけど。
プロの人に指摘されると、やっぱり、ショックだ。

ショッピングモールの中にある、このオシャレな美容院に来るのは、4月以来。
そのときも同じ美容師さんだったのに、私のことは覚えてなくて、
「ごめんね。
お客さんの顔は、一度見たらかなり覚えてるほうなんだけど」

「全然、平気ですよー。
そのときは、今より10キロ以上太ってたから、
もしかしたら、それで、雰囲気が変わってるのかも」

その流れで、ダイエットの話になった。

「すごいねー。
でも、ちょっと頑張りすぎじゃない?
たんぱく質とか、ちゃんと摂ってないでしょ」

そして、髪がやせてることを指摘され、
「そうですかー。
じつは、自分でも少し気になってて・・・
だから思い切って、すっごいショートにしようと思うんです」

「・・・うーん。
これはあくまで私の意見なんだけど、あなたの場合、
あまり短すぎないほうが、似合うんじゃないかなー。
顔がほっそりしてる分、髪で丸みを出してあげたほうが、いいバランスになる気がして」

結局、中途半端な短さで、妥協することに。

でも「顔がほっそり」という言葉に、ちょっと満足。
昔から、丸顔がコンプレックスで、ダイエットしてもなかなかやせてくれなくて、
頬っぺたの肉、落としたくて仕方なかったから。

なのに、会計のとき、段差のある場所に上がろうとしたら、
少しよろめいてしまって・・・

レジにいたスタッフが、
「大丈夫?
美容院より、病院行ったほうがいいんじゃない(笑)」

冗談っぽい言い方だったから、他のスタッフからも笑い声が。
でも、私はすごく傷ついた。
病人扱いされるのって、一番嫌いなことだもの。

「大丈夫です!
十分、元気ですから!!」

不愉快な気持ちが伝わるよう、強い口調で言い、美容院をあとに。

ただ、正直、少し不安だ。
久しぶりの本格的な外出で、体力の衰えを実感してるから。
ここ数日、絶食状態が続いてるせいか、足に力が入らない。
よろめいてしまったのも、そのせいだし。
早く帰って、横になりたい。

でも、まだ、用事が残ってる。
服、買わなきゃ。
これくらいのことで予定変更してるようでは、3連休、乗り切れないぞ。

ファッションフロアに移動して、ブランドショップの中で、
前にも何度か来たことのある店に入る。
といっても、最後に来たのは7月頃。
すっごく可愛いスカートがあったのに、ウエストがゆるくて、あきらめたんだっけ。

それでも、当時はまだ30キロ台。
だから、今回はあのとき以上に、サイズが合わないかもしれない。
いや、試着してみなきゃ、わかんないよね。

店員に声をかけられるのが苦手なので、てきとうに受け流し、店内を物色。
その店員が、別の客の相手をし始めた隙に、
気に入った服を3着持って、試着室に入る。

結果は・・・前回以上に、ぶかぶか。
たぶん、あのとき以上にやせてるんだ。
サイズが合わないのは残念だけど、ちょっと嬉しい。

でも、どうしよう。
あ、これなんか、自分でもお直しできそうだし、形も崩れないんじゃないかな・・・

そんなことを考えてると、
試着室の外で、誰かの足音がして、それに反応するように、声がした。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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