何処までもやせたくて(58)究極の拒食
豆乳鍋は、結局、ほとんど捨ててしまった。
自分好みの味に仕上がってたし、ヘルシーだから、食べるつもりでいたのに。
妹が上京することを知って以来、なんか、おかしい。
全然、お腹がすかないし、ヨーグルトひと口、スープひと口で満腹になる。
それ以上食べると、気持ちが悪くなり、吐きそうになるから、食べるのが怖い。
ラッキー、って思う気持ちもないわけじゃないけど、
今は、そんな時期じゃない。
Gさんの個展に、元気な状態で行くためにも、
妹に、やせすぎだと感じさせないためにも、
現状維持でいいのだから。
でも、食べなきゃって思えば思うほど、食べられなくなる感じ。
ちょっと前まで、過食に走りそうだったことが、嘘みたいだ。
一昨日は、野菜ジュースを50㏄飲んだだけ。
1日の摂取カロリー、17kcal。
昨日は、ひと口でやめたから、たぶん、5kcalぐらいかな。
そして、今日は・・・
夜の10時になるまで、何も口にしていない。
ウーロン茶とジャスミン茶と水を飲んだだけ。
それも、水分補給が心配になって、無理やり喉に流し込んだもの。
そのせいか、気分がよくない。
胃がからっぽじゃないと、イヤだ。
体重は、自己ベストを更新した。
26.8キロ。
嬉しいけど・・・怖い。
だって、体力、かなり落ちてるし。
行きつけのコンビニ、2階にあって、
階段を昇るのがひと苦労なのだけど、
さっきは、降りるときに転げ落ちそうになった。
足にまったく力が入らず、そのかわり、踵に激痛が走って・・・
降りるのに、2分ぐらいかかったかも。
こんな状態で、銀座まで行けるのかなぁ。
頭もぼーっとしていて、何も考えられない。
きっと、睡眠が足りてないせいだ。
体のあちこちが痛くて、その痛みで目が覚めてしまうから。
誰かに相談したいけど、なみちゃんには無理。
また、傷つけるようなこと言ってしまうかもしれないし、
ますますやせてたら、ショックだし。
結局、頼れるのは、あの人しかいない。
今の私が相談できるとしたら・・・
「過食に負けない、モデル体重からのダイエット」のスレ主さんくらいだ。
パソコンを開き、自分の近況を詳しく書いた。
そして、翌朝・・・
私宛てのレスが。
「あー、究極の拒食って感じだね。
拒食の底、って言ってもいいかな。
妹さんの上京とか、いろいろ絡んでのことだと思うけど。
でも、そこまで行っちゃうともう、自分の力じゃどうにもならないよ。
意思じゃなく、体が拒んでるんだから。
私も、似たような状況、経験したけど。
胃がからっぽじゃないと、安心できなくて、最後は水も飲めなくなって、
おかげで、23キロジャストっていう最低体重を記録できたけど、
そこで、入院。
あのさ、こんなこと言われたくないだろうけど、
病院、行ってみたら?
拒食のことは言わずに、点滴だけしてもらう、っていうのも可能なはずだから。
体重、少し増えちゃうけど、体調はちょっとマシになるし、
個展に行くためにも、妹さんに怪しまれないためにも、
そのほうがいいかもしれないよ」
彼女が心配してくれてることは伝わってきたし、
自分の状態が、危険なのかもしれないことは自覚できた。
でも・・・
それより、ふたつの言葉に、目が釘付けに。
ひとつめは「23キロ」。
今の私、それより、3.8キロも多い。
だったら、まだまだ大丈夫なんじゃないかな。
もうひとつは「点滴」。
そんなことしたら、太っちゃうじゃない。
せっかく、ここまでやせられたのに。
究極の拒食だろうと、拒食の底だろうと、太っちゃうよりはマシ。
私はまだ、入院するほどやせてはいないのだから。
うん、大丈夫。
まだまだ、頑張れる。
そうだ、3連休のスケジュール作りをしよう。
このところ、だらだらと過ごしすぎだから、生活パターン、切り替えなきゃ。
しっかり決めておけば、やりたいこと、ちゃんとできるはず。
初日は、美容院に行って、洋服を買う。
夜8時に妹が来るから、そのときに着る服のことも考えておかなきゃ。
2日目は、Gさんの個展。
途中で倒れるわけにはいかないから、この朝だけは何か食べよう。
夜にはまた、妹が来ちゃうし、ハードな日になりそう。
3日目は、彩華ちゃんのカテキョがある。
昼間、ゆっくり休んで、体力温存だな。
予定の時刻や、服のコーディネイトなどを、紙に書いていったら、なんだか、安心。
個展のことも、妹のことも、うまくいくような気がする。
相変らず、お腹はすかないけど。
ぼーっとしてた頭は、少し冴えてきた。
それから、丸2日・・・
口にできたのは、やっぱり、お茶と水だけ。
でも、体調は特に悪化したわけでもない。
下げ止まり、ってヤツかな。
なーんだ、食べなくても平気じゃん。
それより、気になるのは体重。
昨日の夜に測ったときは、26.3キロだった。
そのまま寝て、起きたところだから、もしかすると・・・
25.9キロ。
期待通り、初めての25キロ台。
ちょっと怖いけど・・・やっぱり嬉しい。
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