何処までもやせたくて(8)見えないライバル


また、デパ地下に行ってしまった。
これで、三日連続。

理由は、なんとなく落ち着くから、かな・・・

二月まで実家でしっかり食べさせられていた私は、
一日千キロカロリー以内という食生活にまだ慣れていなくて、
時々、空腹を感じてしまう。

そんなとき、デパ地下をぶらぶらすると、空腹がまぎらわせる。
カラフルなデザートや、季節感もあるお惣菜を眺めているだけで、
いろいろなものを食べた気になって、お腹がいっぱいになるから。

地元には大きなデパートなんてなかったから、
前回のダイエットでは、料理本とかを見て、まぎらわせていた。
そこへ行くと、東京はありがたい。
同じ駅で、デパ地下をいくつもハシゴしたりできるし。

でも、ちょっと困ったこともある。
それは、必ずといっていいほど、すごくやせた人を見かけてしまうこと。
そのたびに、なんだか、不安になってしまう。

というのも、彼女たちは、バイト先のなみちゃんとは違って、
病気っぽいやせ方をしているから。
それに、決まって、試食に夢中だったりする。

その姿が、以前、入院中に見た、摂食障害の人たちと重なるのだ。

もちろん、細いことにはうらやましさもあるけど、
何か、痛々しくて、気の毒で、体力もなさそうで、
ああいうやせ方はしたくない、って思う。

でも、入院中、見舞いに来た友達に、
「ここでは、私なんて、普通の体型でしょ」と言ったら、
「似たようなもんだよ」って言われたっけ。

だとしたら、私もああいうやせ方をしていたの?
ううん、絶対、そんなはずはない。
体力だってそんなに落ちてなかったし、まだまだ余分な肉がついてた。

だけど・・・
病的なやせ方と、そうじゃないやせ方って、どこが境目なんだろう?
その一線を超えたら、デパ地下で見かける人みたいになっちゃうのかな。

同じことを、ネットを見てるときも、考えてしまう。
最近、家にいると、パソコンでダイエットサイトを覗いたりするのだけど、
信じられないほど、細い人がいる。
私と同じ160センチぐらいの身長で、体重が30キロ台前半、
いや、中には20キロ台の人とか。
摂食障害なのかな、とも思うけど、
ちゃんと学校や会社に通ってたり、意外と元気そうな人もいて。

ネットの場合、その人の姿が見えないだけに、困ってしまう。
さすがに、20キロ台の人をライバル視しちゃいけない気もするけど、
本当にやせた人になるには、
それぐらいを目標にして、頑張るぐらいじゃなきゃ駄目なのかな。

とりあえず、これ以上、考えないようにしよう。
私は今、やっと42キロ台になれたところ。
デパ地下やネットにいる、すごくやせた人と比べたら、ただのデブだ。

今はとにかく、やせることだけ考えていればいい。
まずは、二年前の最低体重をクリアすること。

見えないライバルと勝負するには、それが前提だから。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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