何処までもやせたくて(11)昼食の憂鬱


いよいよ授業が始まって、
怖れていたことが、現実のものになりつつある。

それは、お昼のこと。
二日続けて、しっかり食べてしまった。
食欲に負けたわけではなくて、クラスの友達数人と一緒だったから。
すぐに友達ができたことは、喜ぶべきことなのだけど、
ダイエットには、正直、邪魔かもしれない。

最初、コーヒーだけにしようと思ったら、
「もしかして、ダイエット? そんな必要、全然ないじゃない」
「そうだよー。自分だけやせようなんて、ずるーい」
とかなんとか、いろいろ言われて。
付き合いが悪い子に見られたくないから、
一番カロリーの低そうなざるそばにしたんだけど・・・

他の子が、ラーメンやらカレーやらなんとか定食やら、平気で食べてるのを見て、
信じられないような、後ろめたいような、虚しいような、変な気持ちになった。

そして、
あー、こんなことしてちゃダメだ~って。

でも、次の日もコーヒーだけにはできず、また、ざるそばを食べた。
今度はそれとなく、
「学食のメニューって、ボリュームありすぎじゃない? 
定食とか、絶対、食べきれないよー」
と、言ってみたんだけど。
つまり、これは、
「ダイエットじゃなく、無理して食べてるの。だから、もっと少なくていいんだ」
っていうアピール。

でも、友達の一人はあっけらかんと、
「だったら、残せばいいじゃない」って言った。

それができれば、苦労はしないんだよねー。
って、心の中でぽつり。

じつは、親がきびしく教育してくれちゃったおかげで、
私は「残す」ことができない。
特に、誰かが作ってくれたものは。

少し前に、伯母の家で食事をしたときも、メインがお鍋だったのをいいことに、
なるべくおかわりしないようにしていたのに・・・
悲しそうな顔をされたから、無理に食べて、太ってしまった。

だから、外食は危険なのだ。
実際、上京してから、外食は数えるほどしかしてないし。
よく食べる友達と一緒に、なんて、もっと恐怖。

せめて、バイト友達のなみちゃんみたいに、少食でヘルシー志向の人となら、
それほど苦痛ではないし、ペースを乱されることもないのに。

そういえば、高校時代にダイエットしたときは、自分でお弁当作ってたから、
食べていいものを食べていい量だけ、詰めておけばよかった。

思い切って、朝と夜を減らす手もあるけど、それもちょっとなぁ。
朝を抜くと、かえって太りやすくなるみたいだし、
夜は、好きなものをちょっぴり食べることを自分へのご褒美にしてるから、
これをやめると、ストレス溜まっちゃいそうだし。

結局、この二日で、体重が1キロ近く増えた。

こんなんじゃ、当面の目標にしてる35キロどころか、40キロを切ることもできない。

なんとか、対策を立てなくては。

そうだ、お昼をクラスの友達と一緒に過ごすからいけないんだ。
そういうのは週一回ぐらいにして、あとはサークルのほうにでも顔を出すとしよう。
「サークルが忙しくってさぁ」とでも言って。

もし、そっちでもお昼に誘われたら、
「さっき、食べちゃった」とでも言えばいい。
ますます嘘つきになってしまうことが、ちょっと憂鬱だけど・・・

ダイエットのためだから、仕方ない。
やせたい自分に、嘘はつきたくないから。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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