何処までもやせたくて(4)ダイエットが友達


バイトが、決まった。
近所のファミレスで、週三日。
うち二日は深夜から早朝にかけてだから、時給も悪くない。
それに、体重を減らすには睡眠時間を短くすればいい、ということも、経験としてわかってる。

ジムにも通い始めたし、やせるためのルールもいっぱい作った。

一日の摂取カロリーは、1000キロカロリー以内。
夜八時以降は、食べない。
お菓子も、禁止。

食卓の上には、食べていいものと食べてはいけないもののリストを置き、何があっても守る。

部屋の壁には、スレンダーなモデルさんのポスター。
イメージトレーニングというか、モチベーションを高めるために。

今朝の体重は、44.9キロ。
久しぶりの40キロ台前半突入で、飛び上がりたいほど幸せを感じた。

なのに・・・

昨日ぐらいから、よくわからない淋しさが心につきまとって、離れない。
家族、特に母親の声が聞きたくて、何度も電話しそうになった。
これが、いわゆるホームシックってやつなのかな。

ひとつ思い当たるのは……
おととい見たテレビが、きっかけかもしれない。

今は亡きダイアナ妃についての特集だ。
謎めいた死の真相についても触れられていたが、それよりも興味深かったのは、
彼女が十代前半から、摂食障害に悩まされていたこと。
原因は、男の子を望んでいた父親の無関心だったり、
両親の不和、ひいては新しい母親とのぎくしゃくした関係だったり。
そこから来る淋しさから、過食になり、嘔吐などもしていたらしい。

そんな境遇が、ふと自分に重なった。
彼女ほど複雑な家庭で育ったわけではないけど、疎外感というか、
自分はちゃんと愛されているのだろうか、という不安が常にあって。
テレビを見てそんな不安が甦り、家族の愛情を確かめたくなってしまったのだろう。

思えば、以前、太ってしまったのも、家の中のゴタゴタや、高校によく馴染めなかったことで、
疎外感にさいなまれ、過食っぽくなったからだし。
私には、淋しくなると太ってしまう傾向があるようだ。

それから逃れるには・・・やはり、ダイエットしかない気がする。
淋しさを忘れるくらい、カロリー計算や運動を頑張って、
どうしても淋しくて食べ過ぎても安心なレベルまでやせれば、
誰かの愛情を確かめたい、なんて気持ちもなくなるはずだから。
前回、やせたときだって、体重が減るのが嬉しくて、
自分をコントロールできていることが誇らしくて、
淋しさは、そんなに感じなかった。

そうだ。
ダイエットを、友達にしてしまえばいい。
頑張れば頑張った分、ダイエットは嬉しさや自信、幸せをくれるから。
たとえば、体重計ってやつも、ときには残酷な目に遭わせてくれるけど、
減らす努力さえ怠らなければ、素敵な数字で安心させてくれる。

やせるために一人暮らしを始めたようなものなのに、なぜ、このことに気づかなかったのだろう。
私の友達は、ダイエット。
他の女の子は仲良くできずに苦労してるけど、
私は一度、大親友みたいになれたから、今回もきっと大丈夫。
せっかく再会できたのだから、とことんつきあって、もっともっと仲良くなりたい。
彼女(いや、彼氏なのかな)さえいてくれれば、淋しくなんかないもの。

これから、生活のすべてを、キミに捧げてもいいって思うよ。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット #ダイアナ妃


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