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昨日までの風景(8)

☆兄への手紙

拝啓
 先日は懐かしい皆さんと久しぶりにお会い出来、うれしかったです。
ほんとうにお兄ちゃんが言っていたように、あっという間に時が流れて  「浦島太郎」みたいにお互い年をとってしまいましたね。  でも、お元気 そうでホッとしました。が、それなりのご苦労がおありなのだということを実感しました。
 今までお兄ちゃんが がんばって実家を引っ張って行ってくれていたこと遅ればせながら感謝いたします。
 今回お会いした時に じかに義姉さんにもお礼が言えたこと、私にとってもよかったと思っています。
 それにしても、%ちゃん(姪っ子)が60歳とのこと、驚きました。
若く見える上、私の中では幼い時のままのイメージしかなかったので…

 今回お会いしてお兄ちゃんの気持ちや%ちゃんの気持ちをお聞きして、 私の率直な意見を言ったものの、複雑な家庭の事情をじっくり考えた時、 「どうしようもない現実をどのようにやり過ごしていくか?」
につきるような気がしました。

 %ちゃんのイライラは%ちゃん自身どうしようもないことだとわかっていて、一番理解してほしい父親のお兄ちゃんに向かっているのだと思いました今まで、この家で先頭に立ってがんばってきた父親のお兄ちゃんに代わって今度先頭に立ってやらなければならない%ちゃんが、どうにもならない現実の生活の中で助けを求めているのだと思います。

 お兄ちゃんの子供たちは皆やさしい。だから、弟の%君も力を合わせてがんばってくれているのだと思います。スケールの大きい家族だからこそ色々な言うに言われない煩雑な仕事があり、専門的な人を入れるだけでは解決出来ないところに%ちゃんは悩んでいるのだとわかりました。そしてお兄ちゃん自身もわかっているのですが…

それではどうすればいいのか?
今のところしばらくは状況を見守るとして、今 何が出来るか?
それはお兄ちゃんが%ちゃんや%君を 褒めてあげることだと思います。
二人とも精一杯頑張っていることを認めてあげ、その感謝の気持ちを伝えることだと思います。
「ありがとう」その一言で気持ちは軽くなります。
私もこんな偉そうなことが言える親でなかったのですが、だからこそ、敢えて進言いたします。
 親子というのは近ければ近いほど、感謝の気持ちを伝えられない「性」が あるようですが、一度乗り越えればこちらのもの、簡単に習慣になってくれます。
後はできる限り「素直」になることが出来るか?にかかってくるのではないでしょうか。

 「老いる」ことはむつかしい。

 立派に社会をわたって来た人ほどむつかしい。なぜなら、苦労をして身につけてきたものすなわち、体得してきたものを手ばさなければならない。
両親を介護して見送った者の醍醐味として、一種悟りを開いているお兄ちゃんですから、私も進言しやすいところです。

 差し出がましいことをいいました。こらえてくださいね。

 以前、私が娘を亡くした時のこと、娘のアパートを売る際、お兄ちゃんは心臓が悪いにもかかわらず、電話してアドバイスをしてくれましたね。
その時ほど兄妹の心根のあたたかさを感じ、電話口で泣いてしまいました。うれしかったです。「親身になってくれている兄がいる」と…。

 長くなりました。また心臓にくるといけないので、この辺でおしまいにしますね。
 お兄ちゃん、どうぞ義姉さんと長生きしてください。
それが一番の「子孝行」ですから…。

 時節柄くれぐれもお体ご自愛くださいね。また会いに行きます。
それまで、皆さんのご健康を祈っております。
                             かしこ

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