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地声と裏声

 今年の2月早々、私は79歳になった。80歳までの後1年間、私は最後の頑張りで、月2回30分のボーカルに挑戦することにした。

高校の音楽クラブで、歌ってうたって青春を満喫したのが忘れられず、結婚してからも途切れとぎれだったが、コーラスに入って歌うことの楽しみを再現していた。

 主婦というのは 家族の事情に合わせて行動しなければならず、家族の看病毎にコーラスは中断された。

しかし、シングルになった今、歌うことに再度挑戦することにした。

 しかし、年齢を重ねるということが、80歳を迎える1年前にして どれだけエネルギーを使わなければ現状維持ができないか?を 思い知らされている。

 4月から始まったボーカルの練習も、明るく話しやすい先生となれば あっという間に時間が来てしまう。4月2回の練習日はそんなことで「おしゃべり時間」として流れてしまったので、5月初日私は先生に「真面目に歌いたいですので、よろしくお願いいたします」と頭を下げた。

それからは 真面目な訓練が始まった。
まず、体をリラックスさせる軽いストレッチから、腹式呼吸の練習。
マイクを蝋燭に見立てて、1m程離れたところから 蝋燭の火を消すように息を吐く。
それが出来れば、m---- n-----の音階練習

その時先生がおっしゃった。
「今の声は 裏声です」 
「え? 裏声?」
「そうです。裏声は高い声が出ますよね。普通話している時の声は低いでしょう?」「そうですね」「それが地声なんです」
私は地声と裏声の出し方の違いがわからなかった。だから、わからないまま
「あら~、そうなんですかあ」と、答えていた。
「本当は地声で歌えるようになったらいいんですけど… それはまだ先のことで…」と、おっしゃったところで、「お時間がきました」

 私は次の練習まで腹式呼吸で蝋燭の火を消す練習をしよう!と思いながら坂道を降りて行きながら、
『お経の時はきっと、地声なんだろうなあ。お経を読み上げる時 雲水様のお声はとても太くていいお声だ。きっと、腹式呼吸の一息で長いお経を読み上げてられる。と、いうことは、私も知らず知らずにやっていたことなのかもしれない。
体感的には違いがまだ掴めていないけれど…。
そして… 蝋燭の火!』私は フッと気づいた。

私の家の仏壇は 座れば見上げることになるので、いつも立ってお経を読んでいる。丁度、その正面には蝋燭がある。
そうだ!その蝋燭の火をうちわでなく 息を吹きかけて消せば一石二鳥!

翌日から 私は実行した。
短い蝋燭に火をつけて「般若心経」を 終えれば仏様に事情を言ってお許しを乞い、息を吹きかけて蝋燭の火を消してみた。

ま~、それが なかなか消せない!
何度か挑戦してやっと消えた。
お腹の息を一度に吐いて蝋燭の火を消すことは大変な威力が必要なんだなあ
それは息を吐く時のコツをつかむことでもある。
だから、コツをつかむのに仏様にお力をいただかなければ…!

 私は新しい短い蝋燭を仕変えて火をつけ「観音経」と最後に「延命十句観音経」を読み上げる。
短い蝋燭を2本を使うと、ゆっくりとした調子で読めるのだが、どういう訳かお経がスラスラと読めない。急いでいる時の方がスラスラよめるのに…。お経にはお経それ特有のゆっくりだがある程度の速さとリズムがあるのだと実感した。
そして、又 仏様にお許しを乞い、息を何回も吹きかけ蝋燭を消した。

仏様には申し訳ないが、この方法で一回で蝋燭の火を消すことが出来れば、私の腹式呼吸は私の呼吸法になる。

けれど、今まで歌っていた声が裏声だったなんてついぞ思いもしなかった。

地声で歌うにはどのようにするのか?
次のレッスンが楽しみである。

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