向田邦子の作品を 読んで

私は まだ、「隣の女」「幸福」「胡桃の部屋」「下駄」しか読んでない。

短編ながら、こんなに中身の濃い作品は 今まで出会ったことがない。  さすが、「向田邦子」だ。

 「隣の女」は、ずっと前「向田邦子作品集」の白黒のテレビで見たような記憶がある。その時は映像だったし私も若かったので、驚いてチャンネルを変えたかどうか? その後のストーリーは記憶から消えている。     読み進むうちにのめり込み一気に読んで、深いため息が出た。アパートの薄い壁を一枚隔てた隣合わせの二人の女。一人は内職をしながらミシンを踏む、隣では毎日のように繰り広げられる情事。お互い聞こえてくるわずかな音で違う世界を想像し、あるきっかけから、のめり込むことになるのだが、最後の終わり方が、昭和の女性作家らしく倫理観で納められている。そのところが、私は好きだ。

「幸福」も「胡桃の部屋」も「下駄」も、どれを読んでも、平凡な何処にでもある日常生活の一片を切り取り、その情景にかけられた薄い布を一枚めくると見えてくる 人の心のサスペンス。それを いともさらりとした文章で進めていく。最後の文章は いつも私の心を鋭利なナイフでぐさりと刺して話がおわる。

若くして、飛行機事故で亡くなったという。本当に惜しい人を亡くしたものだ。もし、生きていればどんな作品が生まれただろう。ちょっと、怖くなるくらい頼もしい。これからも、残された数少ない作品に なにが隠されているのか、向田邦子作品を読み続けていきたいと思う。

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