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カエサルとクレオパトラ ローマ人の物語より

毎日がこう暑いと、冷たく青い海にひたりたくなる。とはいえ、感染症が蔓延する現在の状況からして、旅に出ることはとうていできない。

せめて想像力の力で、紺碧の海を思い出してみたいと思った。

大学生のとき、ギリシャに行ったが、あのときのエーゲ海の色はきらめくように青く、美しかった。その海を背景としたギリシャの古代遺跡は、遥かなるロマンへといざなう。

このギリシャを先祖とするのが、エジプトのプトレマイオス王朝だ。

私は歴史好きで、塩野七生氏のフアンだ。塩野七生氏といえば、ローマ人の物語が大ベストセラーになった。

その中で、私が一番好きなのが、ユリウス・カエサルについて書かれた第Ⅳ巻と第Ⅴ巻。

今回は、ローマ人の物語 ユリウス・カエサル編に書かれているカエサルとクレオパトラについて取り上げてみたいと思う。

本を読むと実にカエサルは魅力的な人物だとわかるが、カエサルを語るうえで、もっとも有名なのは、クレオパトラとのことだ。

神秘の国エジプトの、魅惑の女王クレオパトラ。映画やTVでよく取り上げられているので、ご存知の人は多いだろう。

クレオパトラは、ギリシャ人のアレキサンダー大王が紀元前4世紀初頭に樹立した、プトレマイオス王朝の女王である。

カエサルは政敵ポンペイウスを追って、エジプトのアレキサンドリアに来ていた。

ポンペイウスはエジプト王家の宮廷人に殺されてしまうのだが、カエサルはしばらくエジプトにとどまり、クレオパトラを助けることになる。

このとき、クレオパトラは弟との権力闘争の真っ最中だった。クレオパトラはカエサルに会うため、巻き物につつまれ、命をかえりみず強硬突破したという伝説が残されている。

あくまで伝説なので、信憑性(しんぴょうせい)はないのだが、知略にとんだクレオパトラのキャラクターからして、私はありえそうな話だと思っている。(塩野七生氏もそう言っている)

カエサルの目の前で、巻き物はほどかれ、勇敢で美しい女王が登場する。これにより、カエサルはクレオパトラに魅了される。

カエサルを味方としたクレオパトラは、みごと権力闘争に勝ち、名実ともにエジプトの最高権力者になる。

カエサルはエジプト滞在により、クレオパトラとの間に子供までなす。

しかし、クレオパトラの幸せは長くは続かない。カエサルが暗殺されてしまったからだ。

カエサルが暗殺されたとき、クレオパトラは息子のカエサリオンとともにローマにいた。カエサルには妻がいたが、クレオパトラは愛人として公認されていたわけだ。(エジプトの女王が愛人とはゴージャスな話)

カエサルの遺言状は開封されるが、後継者はオクタヴィアヌスであり、クレオパトラとカエサリオンについては、いっさい遺言状には記載されていなかった。

クレオパトラはおおいに失望する。

このあたりは、カエサルは実にクールな権力者だと思う。塩野七生氏によると、これがクレオパトラ親子にとって、良策だとカエサルは考えていたのだろうと推察している。

だが、クレオパトラが静かな生活など望むはずもなく、疾風怒濤(しっぷうどとう)の運命へと向かう。

カエサルの右腕だったアントニウスを彼女の魅力により陥落させ、味方につける。

だが結局のところ、クレオパトラとアントニウスはオクタヴィアヌスのローマ軍に滅ぼされてしまう。

このドラマチックなお話は、紀元前のものだ。その頃の日本を思うと、だいぶ落差があるという気がする。

文明のあったところとないところでは、天と地ほども違っていたわけだ。

ローマ人の物語は、そんなことも考えさせられる本だ。

夏の読書におすすめ。


ユリウス・カエサル 共和制末期のローマの軍人・政治家
          (紀元前100~44)

クレオパトラ7世 プトレマイオス王朝最後の女王
          (紀元前69~30)


 




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