ルワンダで初めて見た”幻の動物”
世の中では、かねてより”UMA”と呼ばれる未確認動物…いわば”幻の動物”の存在が囁かれてきた。
その種類は古今東西多岐にわたり、日本でも有名な物で言えば、ネッシーやツチノコ、ビッグフットなどがそれにあたる。
UMAやUFO…未知の動物や物体というのは、それ自体にロマンがあるし、こういう話はワクワクする。
そんなUMAだが、僕はついに、ここルワンダで、そのうちの一種を目の当たりにした。
僕が見たUMA…
それは「迫りくる黒い恐怖」の異名を持つ動物…
そう
”ゴキブリ” だ。
(噂では、この言葉に対して想像を絶するほど嫌悪感を覚える人もいるようなので、以下”G”と呼称する)
…
「は?何が?」と思われるかもしれないので、一応弁解しておくと、物心ついた頃からずっと北海道で暮らしてきた僕は、これまでの人生の中で一度もGを見たことがなかったのだ。
そのため、Gという生物は「超絶気持ち悪い」だの「とんでもない生命力」だの「飛ぶ」だの、色々と黒い噂は聞いたことはあったものの、心のどこかで「いやいや、ウソやん。そんなん言い過ぎちゃいますのん?」と思っていた。
噂にはよく聞くGだが、
本当は空想上の生き物で、実在しないのでは?
ペガサスやユニコーンと同じ並びの伝説なのでは?
そんな疑いの心が拭えなかった。
…
「は?アホなの?」と思われるかもしれないので、一応弁解しておくと、北海道民的には(てゆーか僕の周りでは)、Gを見たことがないというのは割と普通のことだったのだ。
しかし、僕が現在所属するJICAという組織には、当然北海道のみならず日本全国から曲者達が集まってくる。
そんなJICA海外協力隊の仲間たちに初めてこの話をした時は、随分と驚かれた(それと同時に、自分の世界の狭さも地味に思い知った)。
その時から、ルワンダの同期隊員の中では「いつかコイツに本物のGを見せてやろう」というのが、一つの野望となっていたようだ。
そして、ルワンダに来て1ヶ月もしないうちに、その機会は訪れた。
僕たち新隊員は、ルワンダに来てから約1ヶ月間、首都のホテルに滞在して語学訓練やブリーフィングを受けることになっており、その間同期隊員とは横一列の部屋に泊まっていた。
ちなみに、このホテルは室内の廊下がなく、「自分の部屋のドアを開けると、すぐ外」という構造になっている。
そんな状況の中で、ある日の夜中、僕が寝ようとした所
「大変です!起きてください!!」
と、部屋の外から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
「至急見せたい物があるので、ちょっとで良いんで出てきてください!!」
何事かと思い、僕はベッドから飛び起き、寝間着のまま外に出た。
すると、部屋の前に設置されていたはずのクズカゴが、上下逆さまで通路に置かれているのが目に入った。
「ついに…」
「ついに捕まえました!!」
え?
何やら興奮している同期隊員たちからよくよく話を聞いてみると、以前僕が本物のGを見たことがないと言ったのを覚えていてくれて、特大のGを見つけたからわざわざクズカゴで捕獲したというのだ。
そう、僕はこの時ついに人生で初めてGと対面することに成功したのだ。
それは、今まで「Gは実在しない」派だった僕の目の前に、紛れもない「真実」を突きつけられた瞬間だった。
「こ…これがG…!?」
「初めて見た…(ゴクリ)」
「伝説は、本当だった!!」
「Gは…実在するっ!!!!」
絶滅したと思っていたのに現代に生き残っていたシーラカンスを発見した人も、きっとこんな感情だったのではないだろうか。
まぁ実際はそんなドラマティックなリアクションではなく「おぉ〜コレがGか…なるほどねぇ…」と、地味ながらまじまじと観察するという感じだった。
正直、夜中で周りが暗かったこともあってか、初見では聞いていたほど不快感はなかった。
まぁカブトムシくらいのもんかな、という印象だった。
カブトムシ2.0くらいのもんかな、と感じていた。
しかし、一定時間観察した後に「処理」を施す際、その印象は一気に崩れ去った。
「ずっとこのままにしておくわけにもいかないし、最後に殺虫スプレーで「処理」しましょう」
というGの扱いに慣れた同期隊員たちの提案を鵜呑みにし、クズカゴ越しに殺虫スプレーが噴射されるのを見ていた。
スプレーを噴射されたGは、悶え苦しみ始め、コテンとひっくり返った。
ひっくり返ったGの裏側を見た時、僕は思った。
うわキモっ
え、ちょ待っ、気持ち悪っ!!
きんもちわrrrrrrrるうっっ!!!!
Gはひっくり返り、無数の足をバタバタさせていた。
何がカブトムシ2.0だ。
何がUMAだ。
一気に萎えた。
普段はおしとやかな子が飲食店の店員さんに横柄な態度をとってるのを見た時くらい、一気に好感度が下がった(別にもともと好感度が高かったわけではないが、ゼロからマイナスになった)。
ということで、僕はルワンダで一つ貴重な「初体験」を済ませた。
ぶっちゃけ一生体験しなくても良かったのだが、経験してしまった。
この一件以降、割と普通にGを見かけるようになった。
もう慣れたので、今ではGに対してぶっちゃけ何も感じない。
ただ、今冷静になってこの一件のことを考えると、なかなか鬼畜の所業だったと思う。
だって…
この日は就寝直前に部屋の外に呼びつけられて特大のGを見せられ、殺虫スプレーによる処刑とそれに苦しむGの裏側の足の動きを目に焼き付けたまま眠りにつくことになったのだから。
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