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脱却できない負けないが勝ちきれない現状 ロアッソ熊本戦レビュー(2022年J2第19節)

こんヴァンフォーレ!
今回は5月28日(水)に行われた
2022年J2第19節
ロアッソ熊本vsヴァンフォーレ甲府のレビューをお届け!


1.概要

天皇杯2回戦を含む5連戦のちょうど真ん中の3連戦目を迎える。
水曜日に徳島とのナイトゲームを終え、僅か中2日で熊本の地に乗りこんでの一戦。
さらに、夏場に向けて気温が上がり始める中での13時キックオフの試合を行うコンディションの厳しさを伴った試合となる。

今節を終えると、中3日で山梨に戻って天皇杯となるため、そこでメンバーをこれまで出場機会があまり多くなかった選手を中心にメンバーを構成をすると考えられる。
そのため、連戦の疲労によるコンディションと天皇杯の欠場までを踏まえある程度一部の選手は今節で出し切って、1週間のブレイクを挟むのか。
監督のマネジメントを含め、重要かつ難しい試合となる。

今節の対戦相手であるロアッソ熊本は、今季からJ2に昇格したクラブながら甲府より勝点2上回る6位につけている。

率いるのは大木武監督。
初めてJ1に昇格を果たした頃の甲府を知る人ならばこの人物は忘れられないはずだし、ヴァンフォーレ甲府というクラブの歴史を知る上で切っても切り離せない存在である。

当時の甲府を率いた時と変わらず、選手のタレント性に頼らないサッカーで、熊本にとって久しぶりのJ2の中でも現段階でしっかりプレーオフ圏内に踏みとどまっている。

熊本自身はホーム戦でなかなか勝星に恵まれていないが、J1からの降格組の徳島と引き分け、横浜や大分には勝利、上位を快走している新潟にも土壇場で失点したもののあと一歩で勝点を得るところまで追いつめた。

上位陣にも引けを取らない戦いを繰り広げる熊本を相手に、勝ちきれない試合が続いている甲府がどう戦っていくのかに注目の一戦となる。


2.選手紹介

ロアッソ熊本

ロアッソ熊本 スターティングメンバー

3-3-2-2のフォーメーション。
通常、3-3-1-3というフォーメーションで戦う熊本だが今節は中盤の枚数を増やし、2トップを採用している。
攻撃時にDFが攻撃参加することによって、甲府のWBとマンマークする形とし、甲府のリベロ+Wボランチに対して2トップ+2シャドーで数的優位を作ろうとする意図があったように感じた。

可変して攻撃参加をしてくるDFと6得点しているFW高橋選手に警戒が必要となる。

ヴァンフォーレ甲府

ヴァンフォーレ甲府 スターティングメンバー

3-6-1のフォーメーション。
連戦3戦目、半数以上の6名をメンバー変更して今節に挑む。
出場停止中の野澤陸選手に代わり林田選手をボランチ起用。
ボランチは山田選手に代わり石川選手、DFに下がった林田選手のところに松本選手の2人で構成。
左WBに荒木選手に代わって小林選手が入る。
1トップに前節負傷のパライバ選手に代わり、リラ選手が先発出場。
2シャドーに鳥海選手と宮崎選手が控える形となる。

熊本の運動量に対して、連戦中で疲労が気になる選手たちがどこまでついていけるか、そしてここ最近取れていない追加点を奪う力を発揮できるのかが今節の勝利に大きく関わる。


3.試合結果

ロアッソ熊本vsヴァンフォーレ甲府 スコア表

前半の序盤に先制ゴールを決め、試合を優位に進めるも、最近の試合で続くなかなか追加点が奪えない流れが続く。
そして後半、ハーフタイムに一気に3人を交代した熊本に押し込まれる立ち上がりを過ごしていると案の定同点ゴールを献上する。
その後も一進一退の攻防を続けるが、決めきれず、守備面では河田選手のファインセーブに支えられ追加点を許さず。5試合連続のドローとなった。

ハイライトシーンを中心に試合を振り返る。

前半13分 リラ選手2戦連発!

左からのCKのチャンス。
松本選手の右足のキックをキーパーの前でリラ選手がきっちりと合わせて先制に成功。
リラ選手は前節のPKのゴールもあり、2戦連発となり、チーム内トップの5ゴールを上げている長谷川選手まで1ゴール差まで迫っている。

前半30分 DFが攻撃に関与し積極的に攻め込む熊本

右サイドでボールをキープすると中央を経由してショートパスを繋ぐ熊本。
大木監督のチームらしいパス回しでボールを左サイドへ展開すると、3バックの一角のイヨハ選手がアーリークロスを放り込むが、中央で合わせる選手はおらず、ボールは流れていった。

前半36分 再びコーナーキックからチャンスを創出

右からのCK。
ボールのそばには左利きと小林選手と右利きの松本選手が立ち、熊本DFにキッカーを絞らせない。
ボールを蹴ったのは松本選手。アウトスイングのボールをPA外からニアサイドへ走りこんだ宮崎選手が合わせるがGK佐藤選手の好セーブに阻まれた。

前半45分 甲府の左サイド裏を狙う熊本の攻撃

本職ではない左ストッパーの位置でプレーする林田選手の裏のスペースを狙う攻撃の熊本。
中盤からロングボールを蹴りこむと土信田選手が河田選手と1対1の状況となるが、河田選手の抜群の反応で難を逃れた。

前半終了

良い時間に先制し、不慣れなフォーメーションで戦う熊本ということもあって試合展開的にはやや甲府のペースで時間が進んだように感じたが、今の甲府にマストな追加点を奪えずに前半を終えた。

後半開始

甲府は選手交代はなし。
熊本は前線の選手を中心に3枚交代、フレッシュな選手を前線に揃えてきた。

後半9分 一瞬の隙を突かれ、同点ゴールを許す

熊本DFラインから右サイドへ展開。
黒木選手が味方の選手を使ってワンツーで抜け出すと早いタイミングでクロスを供給する。
そのボールに甲府DF陣は対応できず、DFとGKの間に入ったボールに途中出場の竹本選手がフリー合わせ同点ゴールを決めた。
甲府守備陣としては、相手の早いタイミングのクロスに対しての警戒が足りていなかったのが悔やまれる。

後半12分 宮崎選手が決定機を迎えるもゴールならず

右サイドのスローインに石川選手が反応し、中央に切り込む。
ゴール前に走りこむ宮崎選手にラストパスを送ると倒れこみながらシュートを放つがキーパーの正面。
シュート直前のプレーが相手選手のファールのように見えるが判定はノーファール。疑惑の判定に泣かされる形となった。

後半14分 畳みかける甲府

中央で鳥海選手がボールキープすると右サイドの関口選手へボールがこぼれる。
関口選手はリラ選手へパスを送るとリラ選手は立て続けに2本のシュートを放つもここもゴールならず。
このシーンもハンドをアピールしたが、判定はノーファールとなった。

後半34分 三平選手のシュートはクロスバー・・・

右サイドの関口選手からのアバウトなボールを三平選手が処理し、鳥海選手へ。
ボールをキープすると左サイドの荒木選手へ展開。
荒木選手は左足でクロスを送るとゴール前で三平選手がやや下がりながらヘディングを合わせるがクロスバーに跳ね返されてしまう。

後半45分 絶体絶命のピンチを河田選手が死守

後半ロスタイム、熊本も逆転ゴールを目指して攻撃に出る。
裏に坂本選手が抜け出すと河田選手と対峙、決められたかと思ったが河田選手の神セーブによって逆転を許さなかった。

後半47分 ロスタイム、熊本の猛攻

守備時の足が止まっている甲府に熊本が再三猛攻を仕掛ける。
中盤からのロングボールに粟飯原選手がヘディングで合わせるも河田選手の正面。


同点に追いつかれてからも、度々チャンスは迎えたがゴールを奪えず。
それでも最終盤の熊本の攻撃を耐え凌ぎ、勝点1をものにした。
これで5試合連続のドローとなった。


4.今節のポイント

①追加点と攻撃の受け方

引き分け続きの試合が続く間、毎回追加点については記述しているような気がするが・・・。

そうはいっても2点目を取ろうと思ってプレーはしている中で奪えない現状というところ、今節に関しては先制点を奪えたという展開。

1点をリードすることで時間帯にもよるが少なからず、相手にとっては「まずは追いつかなくてはいけない」というマインドは生まれる。
その部分で攻撃にウエイトがかかる相手の攻撃をどう受けていくのか。
もっと言えばどう攻撃をさせて、そのズレをついていくのか。

先制点を奪えたからこそ、ただただ攻撃を受ける形ではなく、追加点を奪うために相手の攻撃を利用するという強かさを身に付けることも、追加点をなかなか奪えない現状を打破する要因の1つになるかもしれない。

もちろん、攻めて攻めて攻めまくってどんどん追加点を奪う姿も見てみたい。

②ハーフタイムの交代

この試合、ハーフタイムでの交代は熊本の3枚替えに対し、甲府はなし。
結果だけ見れば、後半の立ち上がりは交代出場の選手を中心に攻撃に出た熊本が交代出場の竹本選手がゴールを決めるというわかりやすい形で成果を上げた。

失点直後の甲府はすぐ交代カードを切ったが、同点に追いついて勢いづく相手チームがいるところで交代出場し、試合の流れに入っていくのは難しい。
時間が経つに連れ、試合には順応していくことはできていたが、タイミングとしては難しかったとは思う。失点したからこそ、交代出場で勝ち越しを目指しもう一度パワーを出すという狙いがあったことは言うまでもなく。

結果だけみれば、甲府もハーフタイムに交代カードを切っても良かったのではないかと思う。
ハーフタイム時点では甲府がリードしており、内容も問題はなかったところでなかなかカードを切るという判断は難しいとは思うが、連戦の中の気温の高いデイゲーム、失点してから後半15分になる前に交代カードを切れるのであれば、後半からフレッシュな選手を登場させるのも悪くなかったのかもしれない、と思うところもあった。

③消耗戦

後半終了間際、立て続けに熊本が決定機を作り続けたシーンは見るからに足が止まってしまっていた。

中2日で九州の熊本までの移動を終えた3連戦目、気温が30度に近いコンディションの中での90分間は過酷である。
勝ちきれなかったことは残念だが、この厳しいコンディションの中でも最後まで粘ってギリギリのところだったとしても守り抜いて手にした勝点1はやはり無駄にしたくない。

少し前の甲府なら逆転を許していたかもしれない。
それでもここで勝点を持ってこれたことは無駄ではないはず。

この成長を糧にこの結果にもさらに積み上げる形で今度こそ勝点をさらに2上乗せできる結果をものにしたい。


5.まとめ

負けない強さと勝てない弱さが共存することがはっきりと結果で表れている5連続ドロー。

川崎フロンターレや鹿島アントラーズのようなチームではないのは当然で、代表クラスの選手や強力な外国人選手はいない。
ましてや甲府は若手が中心のクラブ。

J1強豪クラブのように弱さをお金やらなんやらで排除することはできないかもしれないが、積み上げ続ける経験と若手の勢いとベテランの力で弱さを上回る強さを発揮したい。

この記事を書いている時は天皇杯は終わっており、大学生ではあるが5-1で久しぶりの勝利を手にした。

先制ゴールを決めながらも前半のうちに同点に追いつかれた中、大きかったのは後半立ち上がりに手にした飯島選手の追加点。
必要だと言われた追加点を奪った試合はその後も3ゴールを重ねて勝ち切った。

その勢いを持って、5連戦最終戦。
初めての戦いとなるいわてグルージャ盛岡の待つ、アウェーの地へ乗り込む。

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