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午前10時の映画祭「モスラ 4Kデジタルリマスター版」

うっかりしてました!以前からYouTubeで、今回の「午前10時の映画祭」の為にデジタルリマスター作業がされていたのを見ていたのに、既に上映が始まっていたとは!

一応、全国の実施映画館はAグループとBグループに分けられていて、上映期間が分かれていますが、普段行くTOHOシネマズなんばはBグループ。先週末から23(木)まで。平日の午前はなかなか行けないから、この週末が貴重なチャンスでした。とは言え、前回の記事(隠し砦の三悪人)で述べた通り、なんばの上映スクリーンが小さい!

で、Bグループ上映館のスクリーンを調べてみたら、TOHOシネマズ泉北が5×11mの大きい画面(なんばは別館で3×7m)、それもリクライニング座席のプレミアシアターでした!って事で、交通費は掛かりますが、今回はわざわざ泉北まで足を伸ばして観てきました。

まぁ、泉北自体の事や、朝からドタバタしたんですが、それはまた別記事で書くとして、この記事では作品の感想のみにしましょう。

▪️映画「モスラ」について


モスラといえば、ゴジラシリーズの人気怪獣ですが、元々は単独主演(?)で作られた本作が初登場。昭和36年(1961)夏公開の大作です。

昭和29年(1954)の「ゴジラ」、昭和31年(1956)の「ラドン」に続く第三の東宝スター怪獣として生まれました。それまでの2作がどちらかといえばシリアス路線だったので、今回は当時デビュー2年の(今でいうアイドル)ザ・ピーナッツを迎え、愛らしい姿の蛾の怪獣とする事で女性受けも考慮、主演にユーモラスな演技で定評あるフランキー堺を配する事で、子供や若者受けも考えた娯楽色の濃い「お盆興行」らしい大作でした。その辺は、TOHOスコープ(いわゆるシネスコサイズのワイドスクリーン)を怪獣映画で初めて導入した辺りにも東宝の気合いが見てとれます。(ちなみに「ゴジラ」はモノクロ、スタンダードサイズ。「ラドン」は怪獣映画初のカラー作品でしたがスタンダードサイズのままでした)。
構想3年、製作費2億円(当時)、製作延日数200日で当時としては巨大プロジェクトだったんですね。

この当時の予告編を見るとラストに「世界同時公開」と出ます!実はアメリカメジャーのコロンビア映画との提携で世界公開作として企画されたそう。まだ戦後15年の当時ですから、凄い事だったでしょうね。

監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二
音楽 古関裕而
出演 フランキー堺、小泉博、香川京子、ザ・ピーナッツ、ジェリー伊藤、上原謙、志村喬ほか。

▪️デジタルリマスターについて

詳しくは最初にリンクを貼ったYouTubeのドキュメンタリー映像をご覧ください。
まぁ、どの作品でもそうですが、大元のマスターフィルムから1コマずつスキャンして、傷や汚れをデジタル処理で取り除き、褪せた色合いを公開当時の状態に復活させます。音響もクリアにします。
今作の場合、保存状態が悪かったそうで、コマの欠損や、後からのプリント作業の段階での編集間違いからカットが入れ替わっていた場面も有ったとか。それらを全て元通りにする作業も有ったそうです。さらに公開当初しか流れなかった、本編前の「序曲」も今回復活されています。

テレビでのぶつ切り放送ばかり見てきた昭和40年代生まれの自分たちにとっては、この上ない貴重な機会と言えます。
コレも上の方に貼りましたが、前回観た「隠し砦〜」は同様のTOHOスコープですがモノクロでした。当時のカラー映画の風合いをデジタルリマスターでどう映ってるのか?も確認する楽しみが有ります。

▪️見た感想

まずは序曲。
50年代〜60年代の超大作ブーム当時、本編前の序曲、インターミッション(途中休憩)の間奏曲は、大作映画のお決まりでした。今作では1分とはいえ、あの古関裕而による音楽を聞く事が出来るのは楽しみでした。暗い中響く音楽はワクワクしますし、単なるお子様向け怪獣映画では無く、立派な大人向け大作映画で有るハンコの様な「しつらえ」だった事を実感できるものでした。

そして始まる本編。
画面いっぱいに出るTOHOスコープの表示。
画面いっぱいに出る「モスラ」の題字。
そしてクレジット。担当は緑、名前は黄色、背景もインファント島の宮殿をイメージしたようなキラキラ。正に総天然色映画ならではのゴージャス感いっぱい!期待が高まります。

冒頭、貨物船が嵐に遭い座礁、乗組員たちがインファント島に避難しますが、この島は核実験により放射能に汚染された島でした。しかし乗組員たちに放射能汚染は無く、日本の科学者たちは首を傾げます。島を持つロリシカ国(アメリカ)の科学者たちと共に調査団を組み現地調査へ向かいます。調査団にまんまと紛れ込んだ新聞記者の福田を始め調査団一団がそこで遭遇したのが双子の小美人。ロリシカ側の事務局長ネルソンは二人を捕獲しようと言いますが、科学者たちは拒否。二人を解放し、緘口令を敷き、南の孤島の文化を守ろうとします。調査団に参加した言語学者の中條は現地の遺跡碑文を解読、そこに「モスラ」という言葉を見つけます。
日本帰国後、極秘裏にインファント島に舞い戻ったネルソンたちは、抵抗する原住民たちを撃ち殺し小美人を捕獲、日本国内で小美人ショーを興行します。憤慨した福田たちは、ネルソンたちへ抗議する為、小美人ショーの会場に向かいます。そのショーで小美人ふたりが歌うのは「モスラ」の歌でした。小美人たちは歌を通して、インファント島のモスラへ助けを求めていたのでした。
現地でも彼女たちの想いを感じた原住民たちが儀式で唄い踊り祈ると、硬い殻を破り、モスラの幼虫が生まれてきました。
小美人たちは、ただ島へ戻りたいだけですが、巨大なモスラが日本へ来れば、多くの人々に迷惑をかける。その事に困惑する小美人たち。その想いは福田や中條たちも同じでしたが、欲に駆られたネルソン一味は抵抗します。果たしてどうなる?

という事で、前半は、怪獣映画というより社会派人間ドラマな展開が続きます。とは言え、スジ自体は硬いですが、ユーモラスなフランキー堺、現代っぽい香川京子のイキイキした姿、そしてザ・ピーナッツの可愛らしさと、ずば抜けたハモりの歌声。正にエンタメ作品として楽しめます。

いよいよ後半はモスラの幼虫が日本へ向かい、防衛隊(自衛隊)の攻撃、ダムや街の破壊、逃げ惑う人々という怪獣映画の醍醐味が展開。そして、その後のゴジラ映画とは全く違うロリシカ(アメリカ)の大都市ニューカーク(ニューヨーク?)を舞台にしたクライマックスが有り、対決により解決するゴジラシリーズと違う、人間の閃きによる平和的解決で大団円を迎えるのです。

振り返れば、当時は戦後の冷戦時代。
核の恐怖の生々しさが有る時代です。
また、大国アメリカ(ロリシカ)とのチカラ関係などはリアルな「今」を取り入れた描写がそこここに散りばめられていた事に関心させられます。
また、現代にも通じる地域文化へのリスペクトも描かれます。
一方、マスコミのトップがまだ新聞だった時代、外電は細長いテレタイプで読んでいたり、巨大なカメラのストロボは一回一回タマを取り替えてたり。小美人ショーや防衛隊攻撃の実況はラジオだったり。モスラが繭を作る東京タワー(当時は完成してまだ数年)の周囲に高い建物は無く、被害に遭う渋谷の街も建物が低い!そんな昭和30年代のリアルな姿も感じられます。

で、観ていてふと思い出したのが「シンゴジラ」。時代を反映させたり、リアルに描いたりする事がひとつひとつ被って見えました。というよりは、「現代日本のリアルさを丁寧に採り入れる」東宝特撮映画の伝統を、庵野秀明総監督が忠実に受け継いで作ったのが、あの「シンゴジラ」だった事に気づかされました。
そういえば、シンゴジも何度も形態を変えていましたっけね。カメラアングルも、リアルに上空から捉えていました。元々、昭和30年代、円谷英二さんが当時からやっていた事だったんですね。
一度姿を消したモスラの幼虫が横田基地(アメリカ資本が加わっていたからの忖度?)から再び出現した後、渋谷へ向けて移動する場面、上空からのアングルのリアルさ!戦車隊を追い越してゆくジープの一段には、スピード感の違いと戦車の重量感が再現されていましたし、燃える瓦屋根から昇る煙のリアルさにも脱帽でした。

何よりも驚いたのは音響。
当時最新だったステレオ音響の効果を発揮していたこと!役者たちの台詞はセンターに固定しながら、エマージェンシーアラームの電子音は左後ろから聞こえるよう配置したり、戦闘シーンのBGMの音量を抑えながらステレオ立体音響で響かせ、センターで台詞、メインの爆発などの効果音は左右に振るなど、そのバランスの按配に脱帽しました!

▪️是非!

「古臭いなぁ」と気楽に見るもよし、
自分の様に、穴が空くほど細部を観察しながら見るもよし、娯楽大作で有りながら、道徳的な部分、現代社会を突く部分を採り入れた脚本に感心するもよし、大変意義深い上映だと思いますよ。

Bグループは、12月23日(木)まで。
Aグループは、翌12月24日(金)から、年明け1月6日(木)まで毎日1回、毎朝10時前後(公開館によって変わる)から割安料金でご覧頂けます。
関西地区では、
Bグループ)大津アレックスシネマ、TOHOシネマズ(なんば、泉北、くずはモール、西宮OS)、ジストシネマ和歌山
Aグループ)京都シネマ、高槻アレックスシネマ、大阪ステーションシティシネマ
以上で上映です。
新潟地区では、
Aグループ)Tジョイ新潟万代で上映です。

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