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認知症・高齢期の人が「よりよく生きる」ための支援

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作業療法の視点を多くの人に知っていただき、活用していただくことを目的としたマガジンです。作業療法は「作業遂行」が様々な要因で障害されてしまった人へ、「作業遂行」を取り戻すべく支援… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

認知症の人のケア環境アセスメントPEAPについて

参考・引用文献:児玉桂子他2009「認知症高齢者が安心できるケア環境づくり」彰国社  認知症の人のケア環境のポイントは何か、PEAP(環境評価尺度、Professional Environmental Assessment Protocol )の視点から知ることができます。   PEAPは、アメリカにおける認知症高齢者のスペシャルケアユニットに関する研究のなかで1996年に作成されたもので、日本版が作成されています。それを紹介します。  8つの視点があります。  ①見当識へ

井口高志著『認知症社会の希望はいかにひらかれるのか ケア実践と本人の声をめぐる社会学的探究』(晃洋書房)の概要と抜き書き(勉強ノート)

○実践を批判的に理解する  何とか社会学者という立ち位置を捨てずに、現在のムーブメントの中で何かできないか、[略]この流れを反省的に、これまでなされてきたことの中に位置づけていくことだ。実践のなされてきた文脈を明らかにし、その実践の中で生まれてきた葛藤や困難を抽出していくこと。そうした作業を通じて、新しく生まれてきているムーブメントの中にも、同じような形式の葛藤や困難を見出し、将来の構想や意図せずして引き起こすことに対する敏感さを生み出すかもしれない。また、現在のムーブメント

認知症の人の転倒予防のリハビリテーション

 参考・引用文献は、武藤芳照・鈴木みずえ編著2014「認知症者の転倒予防とリスクマネジメント 第2版」日本医事新報社 pp161-163 〇リハビリテーションの効果について  認知症者に対する認知機能向上効果の有用性については明確な報告がないが、廃用症候群などの二次的な症状の進行を防ぎ、残存機能を高めることがリハビリて―ションの価値となり、結果として転倒予防につながる可能性がある。 〇認知症のタイプと転倒の頻度  認知症のなかでもレビー小体型認知症は、多彩な精神症状、身体

認知症の人の転倒予防とチーム連携

引用・参考文献:武藤芳照・鈴木みずえ編著「認知症者の転倒予防とリスクマネジメント 第2版」日本医事新報社   認知症の人の転倒予防について、転倒者の特徴をチーム員で5日間検討したところ、その後の転倒率が低下し、高い予防効果を示しており、チームで転倒予防に取り組むことがリスクマネジメントにつながることが明らかになっている。 〇転倒予防のための組織的対策 転倒予防体制の整備、環境調整、スタッフへの転倒予防教育が重要である。 転倒予防体制の整備:リスクアセスメント、介入の立案、

せん妄について

 参考・引用文献:上野秀樹2015「認知症の診断と治療⑧ 精神疾患等、その他の疾患・症状との鑑別」OTジャーナル49-7:616 ○せん妄状態とは 意識レベルの低下を背景に、不安、いらいら、不眠を伴い、幻覚や妄想を認めたり、興奮状態となったりすることのある状態 ○せん妄状態の理解のための2因子モデル  2因子モデルとは、せん妄状態を、「準備状態」(せん妄状態を起こしやすい状態)にある「誘因」が加わることで生じると考えるモデル  「準備状態」+「誘因」=せん妄 ○準備

認知症の人へ「人間作業モデル」という理論を用いる

引用・参考文献: ・竹原敦2017「読んでいただきたい文献」MEDICAL REHABILITATION (206)88 ・竹原敦2017「【認知症予防とリハビリテーション 最前線】 作業療法モデルに基づく認知症の人がうまく生活するためのアプローチ 」MEDICAL REHABILITATION (206)1-8 ○人間作業モデル(MOHO)とは  作業療法の臨床モデルの1つであるが、model of human occupationを略してMOHOと呼ばれる。「人が生活す

認知症予防ー作業療法の観点からー

四條畷学園大学 令和元年6月の認知症施策推進大綱によると、国は、認知症の人に対して「共生」と「予防」を両輪として対策を進めるとしています。具体的には下記のとおり。  認知症はだれもがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている 。 認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、 認知症の人や家族の視点を重視しながら、「 共生 」と「 予防 」 を車の両輪として施策を推進していく。

認知症の人へのリハビリテーション・作業療法(概要)

 認知症の人へのリハビリテーション・作業療法は、認知症の人の多角的な理解と方法から介入を行っていくので、その概略を以下に示します。  参考・引用文献:松下太2017「認知症の人へのリハビリテーションアプローチによる生活行為とQOLの改善ー作業療法を中心にー」森ノ宮医療大学紀要11:25-32 ○認知症の症状とリハビリ  認知症の症状を、中核症状と周辺症状に分けて捉える。中核症状はいわゆる脳の機能低下により生じるもので、見当識障害、思考・判断・遂行機能などがあげられる。周辺症

認知症の人が調理などで小集団を作るときの工夫点について

 認知症の方に集って頂いて、料理をしたり、という時に、どなたかは関心を示さなかったり、何が不快だったのか怒り出してしまったり…いろいろなことが想定されますよね  作業療法士は、作業活動を支援することが仕事で、集団を活かした作業療法を展開したりもします。今回は、作業遂行を支援する小集団づくりの際に熟練した作業療法士がどのような工夫をしているかご紹介します  参考にした文献は、西田征治他 2011 「認知症者に対する生産的作業の遂行を促進する支援技術に関する研究ー熟練作業療法