PCと夢と身体感覚とMac

以下は僕が先日書いた記事です。

いかがでしたか?
大変エモーショナルな文章でMacとの決別を語っていますよね。でも僕はこの記事に書いた30万のBTOパソコンをほぼ新品のまま売り払いました。そしてその金でMacを買おうとしています。

いったい何故そのような事が起きたのでしょうか?
あれほどAppleへの失望とWindowsとの希望を語っていたのに……。実に不思議ですね。

30万のBTOパソコンを売り払った理由

考えに考えて買ったはずのWindowsパソコンを秒で売り払ったのには、それなりの理由がいくつかあります。

うるさい

まず、わかりやすく僕が買ったBTOパソコンの残念ポイントを挙げるなら、めちゃくちゃうるさかったということです。PCの動作音、主に冷却ファンの音ですが。

いや、それなりにパワフルなCPU・GPUを積んだので、ファンがブン回るのは当然といえば当然なんです。パフォーマンス重視の非静音ケースだったことも一因でしょうし。
「そんなの買う前に予想できただろ?」
というご意見もあろうかと思います。その通りです。僕もある程度覚悟はしていました。でも駄目だったんです。
いや、重いゲームやってるときとかエンコーディング中にファンがブン回るのはいいんですよ。でもネットサーフィンしてるだけでヴンヴン唸りだすパソコンとは付き合っていけない、そう思いました。

仮にですよ? 飼ってる犬が起きてる間中ずーっと涎たらしながら狂ったように吠えてたら教育的指導を施すか最悪保健所じゃないですか? 番犬なら来客があった時に吠えるのはまだ許せますけど、四六時中だったら保健所ですね。モヘンジョダロならぬ保健所ダロですね。でもね寝てるときは静かでかわいいんですよ。子犬時代の無邪気な姿を思い出したりして。決して憎んでいるわけではない。だから眠る犬を抱きしめながら泣くんです。ごめんね、ごめんね、あなたは悪くないのに。ごめんねモヘンジョダロ、って……。まあ僕は犬飼ったことないからよくわかんないですけど。

とにかくうるさいパソコンは嫌だったので売った。そういうことです。

そもそもやりたいことは何もできなかった

問題は騒音だけではありませんでした。というかそっちはまだ対処の余地があった。パーツやケースを変えるとか、設置を工夫するとか。でもそうせずに手放したのは他にも理由があったからです。

これ、気づいたときびっくりしたんですけど、ハイスペックPC買った意味が「無」だったんです。虚無。え? 何? どういうこと? って思いますよね。でも「無」だったんです。怖い……。

「最近のMacって微妙だしWindows PCに買い換えようかな」って思いついた瞬間、僕の中にたくさんの夢が生まれました。今までスペック不足でできなかったアレコレ、OSの関係で使えなかったアプリケーション、Macを除け者にするPCゲームの数々……そういうのが「できるんだ」って思えたんです。

もっと具体的に言うと以前断念したVtuber製作とかVRとかゲーム配信とか、やってみたかったことができるという、その夢を原動力に30万のPCを購入したんです。

しかしいざハイスペックなBTOパソコンが家に届いてみると、そういうことは何もかも全部できなかった。別にWindowsは悪くないしBTOも悪くないんです。僕が貧乏で妻子持ちなのが悪い。築60年のぼろ借家なので個室もなく、宵っ張りの6歳の娘が夜中までまとわりついてくるなかでバ美肉Vtuberなんてできるわけがないんです。僕に足りなかったのはPCのスペックではなくて一日数時間の自由時間だった。社会の底辺にいるくせに身の程をわきまえず所帯を持ったりした思考力のない男がそもそも夢を持つのが間違いだったわけです。悲しい。

そういうことです。「PC買えばできる」と思ってたことができなかったんだから、PC売りますよね普通? だってお金ないんだから。

ただ「無」って言ったのは嘘でした。すいません。ゲームは色々やりました。前から興味があった狩猟シミュレーター「The Hunter:Call of the Wild」、無料で配られてた「GTA5」、モバイル版で馴染みのあった「PUBG」、あとネトゲがやってみたかったんで「黒い砂漠」、娘がどうしてもやりたいと言ってた「TABS」、それとVtuber関係だと「Vカツ」のPC版も試したり。数日間しかやってないので全然やり込めてないけど、はっきり言って毎日ワクワク遊園地フリーパス状態だった。ゲームは楽しい。WindowsPCを手放した今もふとこれらのゲームをやりたくなってイマジナリーPCを起動してしまいそうになる。しかし机の下にはもう何もない。唸るようなファンの音もグリスのにおいもしない。「無」。かつて意識していなかったこの空白が意外と大きいので、メインPCをMacにしたとして、ゲーム用に10万ちょいくらいのPCを買ってもいいのかな、と思っている。給付金もらったし……。

Macに戻る理由

購入したBTOパソコンが気に入らなかったからと言って、「ちょうどいいモデルが全然ない」と失望していたMacに舞い戻るというのは筋が通らないという見方もある。

まあ現状としては「急いで買い替えなくていいや」ってなってるので元の古いiMacを使ってるだけなのだが、こいつはやっぱり古いので新しいMacに買い換えようとも思っている。

この心変わりにはきっかけがある。MacBook Proの16インチを一週間ほど借りて使うことができたのだ。

もともとなぜ僕が現行のMacを忌避していたかというと、Retinaディスプレイやスケーリングでの運用への抵抗感があったというのが大きい。スマホやタブレットはまだいいとして、PCのモニターにRetinaはまだ時期尚早と感じていた。僕がWEB製作の現場にいることもそのスタンスに影響している(対応がクソ面倒くさい)と思うが、それ以上に「Retinaはグラフィック性能を無駄食いする」という認識があった。

で、これを避けて外部ディスプレイをメインで使おうとするとMacBook系のクラムシェル運用かMac miniになるのだが、持ち運ぶ頻度が低い僕にとってMacBookはコスパが特に悪いしminiは外部GPUが載らない。どっちにしてもしっくりこなかったのだ。

そういう思いからMacを離れBTOパソコンを買ったものの不満を感じてすぐに売って、購入計画をイチから見直している時にMacBook Pro 16インチを試用することができた。

……その結果、悔しいけどRetinaディスプレイの使い勝手は非常に快適だったのだ。あれですかね。保健所なんて地獄みたいなことろだろうと思ってたら意外と餌も旨いし周りの連中も気さくでいい犬ばかりだし職員は優しいし、みたいな感じですかね。まあ仲良くなった奴らは日に日に消えていくんですけど。

実際、Retinaのジャギー感の無いフォント表示は非常に目に優しく、小さい文字が読みやすいという利点があった。僕の古いiMacと比較してもそうだし、ドットバイドットのWindowsを経験した後だとより顕著に感じる。16インチ、標準疑似解像度1,792*1,120のディスプレイはノートパソコンとしてはかなり広く高精細な部類だが、これがRetinaでなくドットバイドット表示だったら多くの人が「文字が小さすぎる」「表示領域を重視して可読性を犠牲にしている」と感じ、結果として解像度を下げて使用するのではないか。つまりRetinaのおかげで省スペースと広大な作業領域を両立出来ているんだな、という気づきがあった。

またRetinaは余計なグラフィック性能を要求してくるという認識についても、まあそれは事実ではあるが、ドットバイドットで3Dゲームでもやらない限り、例えばGUIがベクター描写のDAWをフル回転しても別に重くも熱くもならない、ということが分かって敵対心がほぐれ「まあRetinaディスプレイのMacもいいんじゃないの?」という優しい気持ちになることができた。ありがとうMacBook Pro。

またRetinaの話を抜きにしても、仮にゲーム用のPCを新調するなら、作業分担できるから最悪Mac側のGPUが内臓のみでも、つまり安いMacBook ProやMac miniでもいけちゃうんじゃないの説まで出てくる。

「ハイスペWindowsPCに変えたらできると思っていたあれこれ」が実はWindowsを買っても結局できないと判明し、さらにRetinaディスプレイへの敵意が削がれた今、メイン機のOSを敢えて変更する意義は薄れてしまった。

それでいてガジェットとしての魅力はMacが圧倒的なのだから、まあ次もMacかなって感じの今なのである。

身体感覚とMac

ところでこの一連の流れの中でMacについて考えたことがある。

それは、Appleっつーのは人間の感覚器官に近い箇所の性能に優先的にコストを割り振る企業なんだ、ということだ。

Retinaディスプレイもそうだし、例えばMacBook ProのノートPCにしては異常に高品位なスピーカー、一見すると異様なほど巨大なトラックパッド、失敗しちゃったけどバタフライ式という新しいタイプのキーボードへの挑戦も、筐体自体の薄さや可搬性、そしてもちろんスタイリッシュなデザインも、あとは基盤直付けのメモリやストレージによる体感時間短縮への執着も……これらは全部、人間が感覚で受け取ることができる「性能」だったのだ。

ベンチマークの数値やスペック表で理解する「性能」ではなく、人間が感じることができる「性能」。Macは意図して優先的にそういう部分にコストをかけたPCだったのだ。これはWindowsユーザーからするといびつな製品づくりにも見える。だからこそ、スペック的に「こういうパソコンが欲しい」と考えてMacのラインナップを見ると「ちょうどいいモデルがない」と感じるんだろう。

個人的にはMacのこのやり方に賛成でも反対でもないけど、小狡いな、と思わないでもない。同じコストをかけた二つの製品があり、一方が純粋にパフォーマンス性能を重視したPC、他方が人間の感覚に訴えかける箇所の性能を重視したPCだった場合、恐らく実際に使用したユーザーは後者を「使いやすい」と感じるだろう。「Macは高いから敬遠してたけど、実際使ってみたら結構いいな、使い慣れたらもうWindowsには戻れないよ」みたいなことを言う奴らは別にApple教に入信したんじゃなくて、この罠に嵌っているわけだ。

もちろんこれは悪いことではなくて、不満を身体感覚により実感することが少ない、というのがいわゆるMac体験の上質さの正体でありMacの優位性でもある。パソコンだって道具なのだから、お値段や純粋なパフォーマンスにこだわる人は適切なハードウェアを買えば良く、お気に入りの万年筆、高級ロードバイク、真空管ギターアンプ……みたいな「低コスパでもしっくりくる道具」としてパソコンを選ぶ層にはもしかしたらMacが刺さるのかもしれない。後者のほうがモチベーション含めてトータルでパフォーマンスが上がるなら当然それは人から責められるような買い物ではない。

上に書いた「ガジェットとしての魅力」ってのがつまりそういうとこなのかもしれない。

パソコンどうするかなぁ……

それはさておき、結構な損失を出して白紙に戻った僕のパソコン新調計画だが、高い授業料を払ったおかげで迷いの焦点はかなり絞られたように思う。

・メインはMacのままでいいや。スペックもそれなりでいい。
・それとは別にゲーム用にWindows機を買おうかな。→そうするとディスプレイも必要か。

今はこんな感じ。
売り払ったBTOパソコンと買うはずだったディスプレイの資金を予算とするなら、35万で上記の要求を満たす構成を考えればいい。……のだが、これは結構難しいパズルになるかもしれない。先日のWWDCで発表されたMacの脱Intel、自社CPU Apple silicon版のMacの登場も判断を難しくしている。

すっぱりゲームは諦めて現行iMacを買い替え、これまで通りの生活を続けるというのが最小構成だし賢いんだろうな。ただ次期iMacを待ちたい気持ちもあるし、一台Windows機があればいろいろ広がる気がするし、外部ディスプレイを買い足すならiMacじゃなくてmacBook Proでもいいのか?とか、それだと金が足りないからMac miniはどうだとか……うん、やっぱり全然絞れてなかったわ。もうだめだ。

【余談】ここから先は完全にただの妄想というか僕がパソコン購入について悩むだけの文章です。

今回のPC購入に好きに金を使えるなら、

・静音にとことんこだわってゲーミングPCを組む。
・最低でも27インチWQHDの大型ディスプレイを買う。
・MacBook Pro 16インチの特盛を買う。

is 最強かなと思ってる。
ただこれをやると最低でも60万コースなので、今の経済状況からするともちろん無理。もう少し現実的なラインで考えていくと、

・それなりに静音に気を使って安めのゲーミングPCを組む。
・ゲーム用にFHDのディスプレイを買う。
・Macの入れ替えは延期、次期iMacが出たら買う。

こうかな。ゲーミングPCとディスプレイを15-16万で調達、残りは20万なのでそれでiMacを買うとなるとスペック面で妥協が必要になるが、発売まで時間があるのでそれまで積み立て貯金をしておいて購入時の足しにする。この計画ならまあ、無理のない範囲だと思う。

ただこれだと最終的に、デスク上にディスプレイ2枚という配置になる。これは人によっては利点だと思うが、僕はどうでもいいことにこだわる病気なのでiMacを使ってる時に隣に無駄なディスプレイがあるとなーんか気になってしまうし、無理に活用しようとiMacをデュアルディスプレイにしてもスペースの使い方が下手なので持て余してしまうと思う。実害はないとはいえ、どうしてもそこが気がかりなんだよな。これを解決しようと思うと、

・それなりに静音に気を使って安めのゲーミングPCを組む。
・27インチWQHDのディスプレイを買う。
・MacBook Pro 13インチを買う。

スペックは落ちるだろうけどこれも視野に入ってくる。Win機13万、ディスプレイ5万、MacBook Pro 13in (4port/512GB)が21万、だから39万で4万円足が出るが、破産するかしないかでいえばしないのでセーフ。セーフ! MacBook ProじゃなくてMac miniのっけこういいやつでもいいかもしれない。そうすると多分2万くらい節約でき、さらにセーフになる。

ただ、僕はここで気づいてしまったのである。
ここまで出した案は「あくまでメインはMac」という認識のもとに成り立っていて、だからそれなりのMacを買うことが前提になっているのだが、Vtuberとか複雑な動画編集とかしないなら、そもそもゲーミングPC一台で全て済んでしまうのではないか、ゲームを諦めずに、今までやってた軽作業(DTM含む)を全部こなせるのではないか? という事実に……!

いや参った。
ここへきてOS乗り換え案が再度急浮上してきてしまった。せっかく身体感覚がどうのとか理屈をこねてMacのいいところを見つけたのに……。

いや、待て。何も今すぐに決断する必要はないんだ。最後にあげた案を思い出してみろ。

・それなりに静音に気を使って安めのゲーミングPCを組む。
・27インチWQHDのディスプレイを買う。

ここまでは、Windowsに乗り換えるパターンと全く同じ流れじゃないか。その後「やっぱりメインはMacで」となればMacを買い足せばいいし、「要らないな」ってなればそのままWin機一台でいけばいい。そういうことなんだ。じゃあもうGOサイン出たも同然じゃないか。

……ただしGOしてしまうと「35万フルに使ってエクセレントなMac環境を構築しちゃう」という選択肢は闇に消える。そうだ。まだその線も残ってたんだ。現行iMacなら上位モデルのストレージをSSD 2TBにしたり、中間モデルをSSD 1TBにして余った金で周辺機器をアップデートしたりもできる。それもかなり魅力的だ。

あーそうか。ここで選択を迫られるんだ。

PCゲームをやるかやらないか。これで大きく変わってくる。

ゲームをやるつもりなら、

【A案】ゲーミングPCとMacで予算を分け合う
【B案】ゲーミングPCをメインに据え、大幅に余った予算をPC以外のことに使う

このいずれかを選べる。
逆にすっぱり諦めるなら、

【C案】Macに予算全振り
【D案】それなりのMacを買ってPC以外のことに残りの予算を使う

こういうことができる。一度選んだらなかなか後戻りはできない選択だ。

難しい。
僕が今無性に鹿が狩りたいことに加え、次期Macがいつ出るのか、出るとしてIntelで出るのか自社CPUで出るのか。それが全くわからないし、現行iMacを買うにしても品薄で1.5ヶ月待たされる件など、今はとにかく決断が難しい。……ってことは、それが答えなのかもしれないな。Mac買い替え時期は今じゃない。次期ラインナップが見えたところで再検討、ってのが順当なんだろう。

そこまで全ての判断を保留してもいいんだけど、ゲーム用に安めのWindows PCを買っておいて、Macをどうするかは追い追い考える、っていうのが今のところ無難かつ現在の僕の物欲を満足させる方法かもしれない。

やっぱり、色々な意味でMacとWindows両方揃えておくってのはメリットが大きい気がするんだよな。ゲームやりたいってだけならその煩悩を断つのがベストだろうけど、子供には両方のOSに触れさせたいという気持ち(親のエゴ)もあるし、近い将来お下がり的に2台のPCをシェアすることもできそうだし。うん。その線で行こう。

ってことは、あれか。いよいよ人生初の自作パソコン挑戦になるのか。パーツ選択でまたさんざん悩みそう……。

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