今年の総没文字数が20万文字を超えていた笑えない話とそれを克服するまでの道のりの話。

記事を書かないまま1ヶ月と少しが過ぎてしまった。当初は毎日何か綴ろうと思っていたのに、いざ始めてみるとなかなか長続きしないのがネックである。反省。

そんなこんなで、今年も残すところ2ヶ月ない。もう年の瀬が近いのだ。年中行事とは縁遠い生活をしているので、あまり月日の巡りは気にならないのだがそれでも一年の区切りとなるとさすがに感慨深くなってしまう。

丁度文章を仕事にできるように頑張ろうとし始めたころからExcelで作業進捗をつけている。ただ単に、時間と文字数を記録しているだけの単純なものだ。私は本職がデザイン業というか絵描き気質な人間なので、これまでExcelといえばドット絵を描くくらいにしか使ったことがなかった。なんとか数式を入れて、それっぽいものを作り、日々書いた時間と文字数をひたすら記入していく。

ガチの物書き志望である友人には「タイムカードのようだ」「作業時間だけ見れば作家並み」と言われたが、1ヶ月の作業時間と作業文字数が記入された表を見るとまだまだ書けると思ってしまう。

9月は絶好調で書いていたのだが、どうも10月は調子が出なかった。執筆するときの自室が寒くなってくるとペースが落ちるらしい。少し季節は早いが暖房を入れると少しペースが上がった気がする。

なんだか、こういうことをしていると、有栖川有栖氏の短編小説を思い出す。「書く機械」に無理やり拘束された小説家が夢中で小説を書く話だったと思う。学生時代にそれを読んで「作家になるにはこんなに大変なことをしなくてはならないのか」と思い背筋が凍ったものだ。さすがに、作中の「書く機械」ほどの恐怖はないものの作業進捗をつけていると謎の強迫観念に襲われてしまう。記録をつけるのがこんなに執筆において有効なことだとは、半年前は思わなかったことだ。

ここまでは前置きで、ここからが本題。

今年書き終えた作品数は長編が1作。短編が数本だ。長編は18万文字くらいの作品で、元々趣味で書こうと思っていた作品の延長線上のものだった。特に賞に送ろうと思って書いたものではない。ページ数が多いのも別に気にせず書いた。小説を完成させるという経験が少なかったのでとりあえず完成させていこうという感じだった。

まぁ、そんな感じで「小説を完成させる」ことを覚えた。プロットの作業は元々漫画を作る工程で知っていたので同じ感じで書けばいいのだと思っていた(そもそも漫画と小説ではプロットの作り方が違うのだろうなと後で気づいた。見せ方が違うのだから当然だ)

しかしここで、問題が発生した。没文字数が異様に多いのである。

プロットの没文字数ではなく、「本文にしようと思って書いたが、結局使わなかった文字数」だ。習作ともまた違う。「本気で本文だと思って書いたのに、本文にならなかった没の文字数」がなんと一年間で20万文字を超えた。

なんということだろうか。それだけで、新人賞用の小説二本分くらいになる。

私は比較的筆が早いと自負していたので、最初はとにかく強引にプロットを立ててどんどん書いていくスタイルをとっていた。多少プロットが甘くても、書く速度が早ければカバーできるだろうという理屈だ。その結果がこれである。

なので、途中からプロットを作り、箇条書きのシーン詳細プロットを作り、本執筆に臨むようになった。

それでもセルフ没文字数は減らなかった。14万文字ほど書いた長編を、全部セルフ没にした。3万文字書いて没みたいなことを繰り返した。

……恐ろしい話でしかない。怖い話でしかない。私は、文章を書こうとして大量に時間を無駄にしているのだ。

さすがにそれはまずいですよ、ということになり、ガチの物書き志望である友人に相談した。すると、友人は良い方法を教えてくれた。プロットや詳細プロットを作った後に、下書きをするのである。とにかくプロットをなぞって出鱈目でもいいから下書きを書く。そして、それを後追いでよく考えながら清書する。そうすると作業効率も上がるうえ、プロットが多少大雑把でも大体の道標になる下書きがあるので没にする文字も減るのではないかというアドバイスだった。

11月からそれをひたすら実践しているのだが、驚くほど効果が出ている。

没文字数が多いのは話の構造的に問題があるのかと思っていたが、プロットに記されている事柄の「間」を埋めるものが足りなかったようだ。焦って出鱈目に本文を書いて結果それがどうにもいかなくなって没になるより、下書きを下書きとして書いて清書する方が効率が良い。

現在執筆している作品は、来年のとある公募に出そうと思っているので今年中に仕上げねばならない。それから少し寝かせて推敲作業だ。推敲作業の大変さ、重要さはまた別の機会に書きたい。11月中に折り返し地点まで書き、12月でラストスパート。8月くらいにプロットを考えた作品なので、4ヶ月くらいで書き切ってしまうことになる。今のところ、この作品で没になった文章はない。

……最初から下書きを取り入れ、プロットに気を配っていれば20万文字も没にしなくてもよかったのだが、これも経験だ。無駄になる経験はないというのが私の持論だ。何かの役には立つだろう。現にこうして話のネタにはなっていることだ。

今年は20万文字没にしたが、2022年はセルフボツを極力出さずに作品を作りたい。たかが20万文字、されど20万文字。没にした物語も、いつかどこかで役に立つ日が来ると良いと思いつつ2度とそんな犠牲(没文字)を出さぬよう、執筆という過酷な戦いは続いていくのであった。

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